はじめに
最終章は、 ここまで学んだ文法・読解力を 入試で得点する力に変換します。 共通テスト・国公立 2 次・私大いずれにも通用する戦略を整理しましょう。
この章で身につくこと:
- 入試古文の 本文を読む順序を最適化する
- 主語特定の 3 つの手がかりを使いこなす
- 設問パターン別の 対応手順を身につける
- ジャンル別の頻出パターンを押さえる
1. 入試古文の構成と時間配分
共通テスト古文(45 分のうち約 22-23 分目安)
| 設問区分 | 配点目安 | 時間目安 |
|---|
| 語句の意味(多義語・敬語) | 約 15 点 | 5 分 |
| 文法(活用・助動詞・敬語の種類) | 約 5 点 | 3 分 |
| 口語訳・解釈 | 約 15 点 | 7 分 |
| 心情・主旨 | 約 10 点 | 5 分 |
| 内容合致・文学史 | 約 5 点 | 3 分 |
戦略:設問を 先読みしてから本文に入る。 何を問われるかを把握した状態で読むと効率が 2 倍違います。
2. 本文を読む順序
Step 1: リード文を必ず読む
リード文(本文前の説明)には 登場人物・場面・前提が書かれています。 ここを読まずに本文に入るのは 致命的。
Step 2: 注を確認
人名・地名・古今異義語など、 重要語の 注が下や横に付いていることが多い。 本文を読む前に一度全部目を通します。
Step 3: 段落ごとに「誰が、 何を、 した」 を確定
古文は主語が省略されまくります。 段落ごとに「主語+動作」 のメモを取りながら読みます。
Step 4: 設問に戻って解く
本文の全体像をつかんだら設問へ。 細かい設問は本文を再読しながら解きます。
3. 主語特定の 3 つの手がかり
手がかり 1: 敬語
| パターン | 主語の身分 |
|---|
| 二重敬語(せ給ふ、 させ給ふ) | 最高位(天皇・中宮など) |
| 尊敬語 1 つ | 高貴な人物 |
| 敬語なし | 中・下位の人物、 または地の文の作者 |
手がかり 2: 助詞「を・に・が・の」
- 「姫を…」 → 姫は 動作の対象
- 「姫の…」 → 姫は 動作の主体(「の」 が主格)
- 「男、姫に…」 → 男が主語、 姫に対して〜
手がかり 3: 文脈の連続性
「同じ主語が続く」 のが古文の基本。 主語が変わるサインは:
- 接続助詞「ば・を・に・が・ど」
- 場面転換(「さて」「かくて」「その後」 など)
- 別の登場人物への呼びかけ
4. 設問パターン別対応手順
語句の意味
- まず 古今異義語を疑う(あはれ・をかし・ゆかし など)
- 多義語は 文脈で訳語を選ぶ
- 漢字を当ててみると意味が見える(例: 「あく」 → 「飽く」/「開く」/「明く」)
口語訳
- 主語・目的語の補足を忘れない
- 助動詞は 意味別に訳し分け(「べし」 6 意味、 「る・らる」 4 意味)
- 敬語は「お〜になる/〜申し上げる/〜ます」 で適切に訳す
- 係り結びの強意・疑問・反語を訳に反映
心情・主旨
- 心情語(あはれ・うれし・くやし・つらし)に印を付ける
- 和歌が出てきたら 場面の核心。 必ず精読
- 「なぜそう感じたか」 を 本文の直前から探す
内容合致
- 選択肢を 本文と照合。 言い換えに惑わされない
- 「言い過ぎ・過剰一般化」 の選択肢は誤り
- 「本文に書かれていないこと」 の選択肢は誤り
文学史
- 三大随筆・三大歌集・物語の系譜(竹取→伊勢→源氏)は暗記
- 作者名と作品名のセット、 成立時代を押さえる
- 共通テストでは 1-2 問程度。 取りこぼし禁止
5. ジャンル別頻出パターン
物語・説話
- 「むかし男ありけり」 で始まる歌物語
- 求婚・恋・別離・失敗譚が定番
- 必ず和歌が挿入される → 和歌が主題のキー
随筆
- 段ごとに独立した話題
- 冒頭の「題目」 を見れば全体像が分かる
- 兼好・長明は 仏教用語が頻出
日記
- 「私(女房・隠遁者)」 の視点
- 時間軸(過去・現在)の混在に注意
- 心情語が多い
和歌
- 修辞(枕詞・序詞・掛詞・縁語・本歌取り)の識別
- 詠歌の 動機(誰に、 なぜ、 何のため)を本文から探す
- 返歌があれば 対比を読み取る
6. 過去問演習の進め方
1 週目: 全訳しながら解く
時間無制限。 本文を一語一語訳しながら、 設問を全問解く。 解答後、 模範解答と照合し、 自分の訳の誤りを確認。
2 週目: 時間を計って解く
本番と同じ時間(22-23 分)で解く。 終わったら全訳→解答→照合。
3 週目: 弱点復習
間違えた設問のジャンル・パターンを集中的に演習。
7. 直前期にやること
- 敬語動詞 30 語(尊敬・謙譲・丁寧計)の暗記
- 助動詞 18 種の意味と接続の確認
- 古今異義語 30 語の意味確認
- 三大随筆・三大歌集の冒頭暗誦
- 文学史年表(平安→鎌倉→室町→江戸)の整理
8. 古典文学史 ざっくり年表
| 時代 | 主な作品 |
|---|
| 奈良 | 古事記・日本書紀・万葉集・風土記 |
| 平安初期 | 古今集・竹取物語・伊勢物語・土佐日記 |
| 平安中期 | 源氏物語・枕草子・蜻蛉日記・和泉式部日記 |
| 平安末期 | 今昔物語集・大鏡 |
| 鎌倉 | 方丈記・新古今集・徒然草(南北朝)・平家物語 |
| 室町 | 御伽草子 |
| 江戸 | 奥の細道(芭蕉)・西鶴・近松 |
注意: 『徒然草』 は鎌倉末〜南北朝(14 世紀前半)の成立。 鎌倉時代と覚えても入試では誤りになりにくい が、 厳密には鎌倉末〜南北朝期です。
まとめ
- 入試古文は「本文を読む順序+設問パターン対応」 で得点が伸びる
- 主語特定は 敬語+助詞+文脈の 3 つで決める
- 文法・敬語・古今異義語は 直前期に総復習
- ジャンル別の読み所を意識する
ここまで 10 章を学んだあなたは、 古文の 文法・読解・修辞・文学史を一通り押さえた状態です。 あとは過去問演習で実戦力を積み上げましょう。 古典 の奥深さは大学生・社会人になっても楽しめます。 一生もののスキルを身につけたことを誇りに思ってください。