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漢文

否いな定形ていけい — 不ふ・無む・莫・非ひ・勿の使つかい分わけ

最終確認日:

はじめに

漢文かんぶんの否定ひていは、 否定ひていする対象たいしょう (動作どうさか存在そんざいか判断はんだんか) によって使つかう字じが異ことなります。 さらに副詞ふくしと組み合わせくみあわせた 部分ぶぶん否定ひてい / 全部ぜんぶ否定ひてい、 否定ひていを重かさねる 二に重じゅう否定ひてい が入試にゅうしで頻出ひんしゅつです。

この章しょうでできるようになること:

  • 不ふ・弗ふつ・無む・莫ばく・非ひ・勿ぶつ の使つかい分わけを説明せつめいできる
  • 部分ぶぶん否定ひていと全部ぜんぶ否定ひていを副詞ふくしの位置いちで見分みわけられる
  • 二に重じゅう否定ひていが 強つよい肯定こうてい を表あらわすことを理解りかいする
  • 「不可ふか不ふ」「無む不ふ」 などの頻出ひんしゅつ形がたを訳やくせる

1. 否定ひていの基本きほん 5 字じ

字じ読よみ否定ひていする対象たいしょう例れい
不ふず動作どうさ・状態じょうたい不学ふがく(学まなばず)
弗ふつず動作どうさ (不ふとほぼ同義どうぎ)弗ふつ為ため(為なさず)
無むなし存在そんざい無人むじん(人ひと無なし)
莫なし/なかれ存在そんざい・禁止きんし莫如(しくはなし)
非ひあらず判断はんだん・名詞めいし述語じゅつご非人ひにん(人ひとに非ひず)
勿なかれ禁止きんし勿食しょく(食しょくふことなかれ)

ポイント: 「不ふ・弗ふつ」 は 動詞どうしを否定ひてい、 「無む・莫」 は 名詞めいしの存在そんざいを否定ひてい、 「非ひ」 は 「A は B である」 という判断はんだんを否定ひてい、 「勿・莫」 は 禁止きんし。 訳やくし分わけが重要じゅうよう。

2. 単純たんじゅん否定ひてい 「不ふ・弗ふつ」

最もっとも基本きほん的てきな否定ひてい。 動詞どうし・形容詞けいようしの前まえに置おく。

段だん内容ないよう
白文はくぶん人ひと不知ふち而不ふ慍、不ふ亦また君子くんし乎。
訓読文くんどくぶん人知じんちラ[レ] ズシテ慍ミ[レ] ズ、 亦また君子くんしナラ[レ] ズヤ。
書き下し文かきくだしぶん人ひと知しらずして慍みず、亦またた君子くんしならずや。
現代げんだい語ご訳やく他人たにんが自分じぶんを知しらなくても怒おこらない、 これこそ君子くんしではないか。

出典しゅってん: 論語ろんご学而篇へん。

3. 存在そんざい否定ひてい 「無む・莫」

「無む」 は 「〜 がない」。 「莫」 も同義どうぎだが、 「莫 〜 焉」「莫如 〜」 の形かたちで 比較ひかくの最上級さいじょうきゅう を作つくることが多おおい。

段だん内容ないよう
白文はくぶん国くに無常むじょう強きょう無常むじょう弱じゃく。
訓読文くんどくぶん国くにニ常つねノ強つよ無むク常つねノ弱じゃく無むシ。
書き下し文かきくだしぶん国くにに常つねの強つよ無なく常つねの弱じゃく無なし。
現代げんだい語ご訳やく国くにには永遠えいえんの強つよさもなく、 永遠えいえんの弱よわさもない。

出典しゅってん: 韓非子かんぴし有ゆう度ど篇へん。

「莫 〜 於 …」 = 「… より 〜 なるはなし」

訓読くんどく文ぶん書かき下くだし
莫[レ]大だいナルハ於[レ]孝こうニ孝こうより大だいなるは莫し

意味いみ: 「孝行こうこうより大おおきいものはない」 = 「孝行こうこうが一番いちばん大切たいせつだ」。

4. 判断はんだん否定ひてい 「非ひ」

「A は B である」 という 名詞めいし述語じゅつご文ぶん を否定ひてい。 「A は B ではない」。

段だん内容ないよう
白文はくぶん我わが非ひ生なま而知之ともゆき者しゃ。
訓読くんどく文ぶん我わがハ生せいマレナガラニシテ之のヲ知ちル者しゃニ非ひザルナリ。
書き下し文かきくだしぶん我わがは生うまれながらにして之これを知しる者ものに非ひざるなり。
現代げんだい語ご訳やく私わたしは生うまれながらにしてこれを知しっている者ものではない。

出典しゅってん: 論語ろんご述而篇へん。 孔子こうし自身じしんが 「自分じぶんは努力どりょくして学まなんだのだ」 と語かたる言葉ことば。

5. 禁止きんし 「勿・莫・無む」

「〜 するな」 という禁止きんしを表あらわす。 「勿」 が最もっとも一般いっぱん的てき。

段だん内容ないよう
白文はくぶん己おのれ所しょ不ふ欲よく、勿施於人じん。
訓読くんどく文ぶん己おのれノ欲よくセ[レ] ザル所しょ、 人ひとニ施スコト勿カレ。
書き下し文かきくだしぶん己おのれの欲ほっせざる所ところ、人ひとに施ほどこすこと勿かれ。
現代げんだい語ご訳やく自分じぶんがされたくないことを、 人ひとにもしてはならない。

出典しゅってん: 論語ろんご衛まもる霊れい公おおやけ篇へん。 「黄金律おうごんりつ」 として世界中せかいじゅうで引用いんようされる名句めいくです。

6. 部分ぶぶん否定ひていと全部ぜんぶ否定ひてい

副詞ふくし 「常つね」「必」「皆みな」「倶」 と 「不ふ」 の 語順ごじゅん で意味いみが変かわる。

形かたち意味いみ例れい
不ふ + 副詞ふくし + 動詞どうし部分ぶぶん否定ひてい(必かならずしも 〜 ではない)不ふ必勝ひっしょう = 必かならずしも勝かたず
副詞ふくし + 不ふ + 動詞どうし全部ぜんぶ否定ひてい(決けっして 〜 ない)必不ふ勝かち = 必かならず勝かたず
部分ぶぶん否定ひてい全部ぜんぶ否定ひてい
不ふ必然ひつぜん(必かならずしもしからず)必不ふ然しか(必かならずしからず)
不ふ常つね在ざい(常つねには在あらず)常つね不在ふざい(常つねに在あらず)
不ふ倶生せい(倶には生いきず)倶不ふ生なま(倶に生いきず)

ポイント: 否定ひていが先さきなら部分ぶぶん否定ひてい (一部いちぶは 〜 の場合ばあいもある)、 副詞ふくしが先さきなら全部ぜんぶ否定ひてい (いつも 〜 ない)。 「不ふ」 の 位置いち に注目ちゅうもく。

7. 二に重じゅう否定ひてい = 強つよい肯定こうてい

否定ひていを 2 つ重かさねると 強つよい肯定こうてい になる。

形かたち訓読くんどく意味いみ
不可ふか不ふ 〜〜ざるべからず〜 しなければならない
無む不ふ 〜〜ざるはなし〜 しないものはない
非ひ不ふ 〜〜ざるに非ひず〜 しないのではない
莫不ふ 〜〜ざるはなし〜 しないものはない
段だん内容ないよう
白文はくぶん不可ふか不学ふがく。
訓読くんどく文ぶん学がくバ[レ] ザル可かカラズ。
書き下し文かきくだしぶん学まなばざるべからず。
現代げんだい語ご訳やく学まなばなければならない。
清代光緒年間に弘文書局が刊行した韓非子の版本
韓非子かんぴし の清しん代だい (光こう緒いとぐち年間ねんかん) 弘ひろ文書ぶんしょ局きょく刊本かんぽん (湖南こなみ省しょう博物館はくぶつかん所蔵しょぞう)。 法ほうと統治とうちを説といた韓非子かんぴしには 「不ふ 〜」 「非ひ 〜」 「無む 〜」 等否定ひてい の表現ひょうげんが数多かずおおく登場とうじょうする。

8. 章しょう末まつまとめ

  • 否定ひていの基本きほん = 不ふ・弗ふつ(動作どうさ)/無む・莫(存在そんざい)/非ひ(判断はんだん)/勿・莫(禁止きんし)
  • 「莫 〜 於 …」 は最上級さいじょうきゅうを作つくる構文こうぶん
  • 部分ぶぶん否定ひてい = 不ふが先さき / 全部ぜんぶ否定ひてい = 副詞ふくしが先さき
  • 二に重じゅう否定ひてい = 強つよい肯定こうてい (「不可ふか不ふ」「無む不ふ」 が頻出ひんしゅつ)

次じ章しょうでは 疑問形ぎもんけい・反語形はんごけい を学まなびます。

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学がく習しゅうロードマップ(10件けん)
  1. 1漢文かんぶん入門にゅうもん — 訓読くんどく・返かえり点てん・送おくり仮名かなのしくみ
  2. 2送おくり仮名かなと書き下し文かきくだしぶん — 表記ひょうきの作法さほう
  3. 3再読さいどく文字もじ — 二に度ど読よむ字じの体系たいけい
  4. 4否いな定形ていけい — 不ふ・無む・莫・非ひ・勿の使つかい分わけ
  5. 5疑問ぎもん形けい・反はん語形ごけい — 何なに・誰だれ・安やす・乎・哉
  6. 6受身うけみ・使役しえき・比較ひかく — 構文こうぶんの三本みもと柱はしら
  7. 7故事こじ成語せいご — 漢文かんぶんから生うまれたことわざ
  8. 8思想しそう — 諸子百家しょしひゃっか(論語ろんご・孟子もうし・荘子そうし・老子ろうし・韓非子かんぴし)
  9. 9史伝しでん — 史記しき・十八史略じゅうはっしりゃくの名めい場面ばめん
  10. 10漢詩かんし — 絶句ぜっく・律詩りっしと唐詩とうしの名作めいさく