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漢文の否定は、 否定する対象 (動作か存在か判断か) によって使う字が異なります。 さらに副詞と組み合わせた 部分否定 / 全部否定、 否定を重ねる 二重否定 が入試で頻出です。
この章でできるようになること:
| 字 | 読み | 否定する対象 | 例 |
|---|---|---|---|
| 不 | ず | 動作・状態 | 不学(学ばず) |
| 弗 | ず | 動作 (不とほぼ同義) | 弗為(為さず) |
| 無 | なし | 存在 | 無人(人無し) |
| 莫 | なし/なかれ | 存在・禁止 | 莫如(しくはなし) |
| 非 | あらず | 判断・名詞述語 | 非人(人に非ず) |
| 勿 | なかれ | 禁止 | 勿食(食ふことなかれ) |
ポイント: 「不・弗」 は 動詞を否定、 「無・莫」 は 名詞の存在を否定、 「非」 は 「A は B である」 という判断を否定、 「勿・莫」 は 禁止。 訳し分けが重要。
最も基本的な否定。 動詞・形容詞の前に置く。
| 段 | 内容 |
|---|---|
| 白文 | 人不知而不慍、不亦君子乎。 |
| 訓読文 | 人知ラ[レ] ズシテ慍ミ[レ] ズ、 亦君子ナラ[レ] ズヤ。 |
| 書き下し文 | 人知らずして慍みず、亦た君子ならずや。 |
| 現代語訳 | 他人が自分を知らなくても怒らない、 これこそ君子ではないか。 |
出典: 論語学而篇。
「無」 は 「〜 がない」。 「莫」 も同義だが、 「莫 〜 焉」「莫如 〜」 の形で 比較の最上級 を作ることが多い。
| 段 | 内容 |
|---|---|
| 白文 | 国無常強無常弱。 |
| 訓読文 | 国ニ常ノ強無ク常ノ弱無シ。 |
| 書き下し文 | 国に常の強無く常の弱無し。 |
| 現代語訳 | 国には永遠の強さもなく、 永遠の弱さもない。 |
出典: 韓非子有度篇。
| 訓読文 | 書き下し |
|---|---|
| 莫[レ]大ナルハ於[レ]孝ニ | 孝より大なるは莫し |
意味: 「孝行より大きいものはない」 = 「孝行が一番大切だ」。
「A は B である」 という 名詞述語文 を否定。 「A は B ではない」。
| 段 | 内容 |
|---|---|
| 白文 | 我非生而知之者。 |
| 訓読文 | 我ハ生マレナガラニシテ之ヲ知ル者ニ非ザルナリ。 |
| 書き下し文 | 我は生まれながらにして之を知る者に非ざるなり。 |
| 現代語訳 | 私は生まれながらにしてこれを知っている者ではない。 |
出典: 論語述而篇。 孔子自身が 「自分は努力して学んだのだ」 と語る言葉。
「〜 するな」 という禁止を表す。 「勿」 が最も一般的。
| 段 | 内容 |
|---|---|
| 白文 | 己所不欲、勿施於人。 |
| 訓読文 | 己ノ欲セ[レ] ザル所、 人ニ施スコト勿カレ。 |
| 書き下し文 | 己の欲せざる所、人に施すこと勿かれ。 |
| 現代語訳 | 自分がされたくないことを、 人にもしてはならない。 |
出典: 論語衛霊公篇。 「黄金律」 として世界中で引用される名句です。
副詞 「常」「必」「皆」「倶」 と 「不」 の 語順 で意味が変わる。
| 形 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 不 + 副詞 + 動詞 | 部分否定(必ずしも 〜 ではない) | 不必勝 = 必ずしも勝たず |
| 副詞 + 不 + 動詞 | 全部否定(決して 〜 ない) | 必不勝 = 必ず勝たず |
| 部分否定 | 全部否定 |
|---|---|
| 不必然(必ずしもしからず) | 必不然(必ずしからず) |
| 不常在(常には在らず) | 常不在(常に在らず) |
| 不倶生(倶には生きず) | 倶不生(倶に生きず) |
ポイント: 否定が先なら部分否定 (一部は 〜 の場合もある)、 副詞が先なら全部否定 (いつも 〜 ない)。 「不」 の 位置 に注目。
否定を 2 つ重ねると 強い肯定 になる。
| 形 | 訓読 | 意味 |
|---|---|---|
| 不可不 〜 | 〜ざるべからず | 〜 しなければならない |
| 無不 〜 | 〜ざるはなし | 〜 しないものはない |
| 非不 〜 | 〜ざるに非ず | 〜 しないのではない |
| 莫不 〜 | 〜ざるはなし | 〜 しないものはない |
| 段 | 内容 |
|---|---|
| 白文 | 不可不学。 |
| 訓読文 | 学バ[レ] ザル可カラズ。 |
| 書き下し文 | 学ばざるべからず。 |
| 現代語訳 | 学ばなければならない。 |

次章では 疑問形・反語形 を学びます。