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漢文

疑問ぎもん形けい・反はん語形ごけい — 何なに・誰だれ・安やす・乎・哉

最終確認日:

はじめに

漢文かんぶんの疑問ぎもんと反語はんごは 同おなじ形 で表あらわされることが多おおく、 文脈ぶんみゃくで判断はんだんする必要ひつようがあります。 反語はんごは 「〜 だろうか、 いや 〜 ない」 と 強つよい肯定こうてい/否定ひてい を表あらわす修辞しゅうじです。

この章しょうでできるようになること:

  • 疑問詞ぎもんし 「何なに・誰だれ・安やす・孰・幾何きか」 の訳わけを言いえる
  • 文末ぶんまつ助詞じょし 「乎・哉・耶・与あずか」 のはたらきを理解りかいする
  • 疑問ぎもんと反語はんごを文脈ぶんみゃくで区別くべつできる
  • 「豈あに 〜 哉」「何なに 〜 之これ有ゆう」 などの反語はんごの定型ていけいを訳やくせる

1. 主おもな疑問詞ぎもんし

疑問詞ぎもんし読よみ訳わけ用例ようれい
何なになに/なんぞ何なに・どうして何なに為ため(なんすれぞ)
誰だれたれ誰だれ誰だれ知ち(たれか知しる)
安やすいづくんぞどうして/どこで安在あんざい(いづくにかある)
孰いづれどちら・誰だれ孰賢けん(いづれか賢けんならん)
幾何きかいくばくどれほど幾何きか(いくばくぞや)
奚なんぞなぜ/何なに奚為ため(なんすれぞ)
何なに如いかんどうか何なに如(いかん)
如何いかいかんせんどうしようか如何いか(いかんせん)

注意ちゅうい: 「何なに如」 と 「如何いか」 は 語順ごじゅんが違ちがうだけで意味いみが異ことなる。 何なに如 = 状態じょうたい・評価ひょうかを問とう (どうか)。 如何いか = 方法ほうほう・処置しょちを問とう (どうしようか)。 入試にゅうし頻出ひんしゅつの区別くべつです。

2. 文末ぶんまつの疑問ぎもん・反語はんご助詞じょし

字じ読よみ用法ようほう
乎や・か疑問ぎもん・反語はんご・詠嘆えいたん
哉や・かな詠嘆えいたん・反語はんご
耶や・か疑問ぎもん・反語はんご
与あずか(歟)か・や疑問ぎもん・反語はんご
也や(疑問ぎもん)疑問ぎもん(「也」 + 疑問詞ぎもんしの場合ばあい)

3. 疑問ぎもんの例れい

段だん内容ないよう
白文はくぶん子こ曰、有朋ありとも自じ遠方えんぽう来らい、不ふ亦また楽らく乎。
訓読文くんどくぶん子こ曰ハク、 朋とも有ゆうリ遠方えんぽうヨリ来らいル、 亦また楽らくシカラ[レ] ズヤ。
書き下し文かきくだしぶん子こ曰はく、朋とも有あり遠方えんぽうより来きたる、亦またた楽らくしからずや。
現代げんだい語ご訳やく先生せんせいがおっしゃった。 「友ともが遠とおい所ところから訪たずねて来きてくれる、 何なんと楽たのしいことではないか」。

出典しゅってん: 論語ろんご学而篇へん。 「不ふ亦また 〜 乎」 は 詠嘆えいたん反語はんご。 「何なんと 〜 ではないか」 と強つよく肯定こうていする形かたち。

4. 反語はんご — 強つよい否定ひていを表あらわす修辞しゅうじ

反語はんごとは、 形かたちは疑問ぎもんだが 答えこたえは自明じめい で、 「〜 だろうか、 いや 〜 ない」 と訳やくすもの。 修辞しゅうじ上じょうは 強つよい否定ひてい / 強つよい肯定こうてい を表あらわす。

代表だいひょう的てきな反語はんごの形かたち

形かたち訓読くんどく意味いみ
豈あに 〜 乎/哉あに 〜 やどうして 〜 だろうか、 いや 〜 ない
何なに 〜 之これ有ゆうなんの 〜 かこれあらんどんな 〜 があろうか、 ない
安やす 〜 哉いづくんぞ 〜 やどうして 〜 だろうか、 いや 〜 ない
孰 〜 哉いづれか 〜 やどちらが 〜 だろうか

例れい — 安やす 〜 哉

段だん内容ないよう
白文はくぶん燕雀えんじゃく安やす知ち鴻鵠こうこく之の志こころざし哉。
訓読くんどく文ぶん燕雀えんじゃく安やすンゾ鴻鵠こうこくノ志こころざしヲ知ちランヤ。
書き下し文かきくだしぶん燕雀えんじゃくいづくんぞ鴻鵠こうこくの志こころざしを知しらんや。
現代げんだい語ご訳やくツバメやスズメに、 どうしてオオハクチョウやオオトリの大おおきい志こころざしが分わかろうか、 いや分わかるはずがない。

出典しゅってん: 史記しき陳ちん渉わたる世よ家か。 陳ちん勝まさるがまだ雇やとい農民のうみんだった頃ころに言いったとされる名言めいげん。 「小人こども物ぶつには大人おとな物ぶつの志こころざしは理解りかいできない」 という意味いみ。

例れい — 何なに 〜 之これ有ゆう

段だん内容ないよう
白文はくぶん君子くんし居きょ之の、何なに陋之の有ゆう。
訓読くんどく文ぶん君子くんし之のニ居きょラバ、 何なにノ陋カ之の有ゆうラン。
書き下し文かきくだしぶん君子くんし之これに居おらば、何なにの陋か之の有あらん。
現代げんだい語ご訳やく君子くんしがそこに住すめば、 どんないやしさがあるだろうか、 いや何なにもない。

出典しゅってん: 論語ろんご子罕篇へん。

5. 疑問ぎもんか反語はんごかの見分みわけ方かた

同おなじ 「豈あに 〜 哉」 でも文脈ぶんみゃくで疑問ぎもんになることもある。 見分みわけのヒント:

見分みわけの観点かんてん疑問ぎもん反語はんご
答えこたえ文中ぶんちゅう・文ぶん後ごに答えこたえあり答えこたえ自明じめい、 書かかれない
訳わけ「〜 か」「どうか」「〜 だろうか、 いや 〜 ない」
文末ぶんまつ助詞じょし乎・耶・与あずかが中心ちゅうしん哉・乎が多おおい
副詞ふくしの強つよさなし豈あに・寧やすし・安やすなど強つよい副詞ふくし

覚おぼえ方かた: 「豈あに」「寧やすし」「敢」 が文頭ぶんとうにあるとほぼ 反語はんご。 「安やす」 は場所ばしょ疑問ぎもんと反語はんごの両方りょうほうあるので文脈ぶんみゃく判断はんだん。

6. 詠嘆えいたん — 「なんと 〜 だろう」

形かたちは疑問ぎもんと同おなじだが、 感動かんどう・嘆息たんそく を表あらわす用法ようほう。

段だん内容ないよう
白文はくぶん賢哉けんや回かい也。
訓読くんどく文ぶん賢けんナル哉回かいヤ。
書き下し文かきくだしぶん賢けんなるかな回かいや。
現代げんだい語ご訳やく何なんと賢かしこいことよ、 顔かお回かいは。

出典しゅってん: 論語ろんご雍也篇へん。 孔子こうしが弟子でし顔回がんかい を称となえた言葉ことば。

1770 年頃描かれた孔子の紙本着色 (グワッシュ) 肖像
孔子こうし の肖像しょうぞう (1770 年頃としごろ、 紙かみ本ほんグワッシュ)。 論語ろんごには 「不ふ亦また 〜 乎」 「何なに 〜 哉」 等反語はんご・詠嘆えいたん の表現ひょうげんが多おおく、 孔子こうしの教おしえを強調きょうちょうする修辞しゅうじとして使つかわれる。

7. 章しょう末まつまとめ

  • 疑問詞ぎもんし = 何なに・誰だれ・安やす・孰・幾何きか / 文末ぶんまつ = 乎・哉・耶・与あずか
  • 「何なに如」 = 状態じょうたいを問とう / 「如何いか」 = 方法ほうほうを問とう
  • 反語はんご = 「〜 だろうか、 いや 〜 ない」 と訳やくす
  • 「豈あに・寧やすし・安やす・何なに 〜 之これ有ゆう」 は反語はんごの定型ていけい
  • 詠嘆えいたん = 「賢けんなるかな」 のように形容詞けいようし + 哉

次じ章しょうでは受身うけみ・使役しえき・比較ひかくの構文こうぶんを学まなびます。

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学がく習しゅうロードマップ(10件けん)
  1. 1漢文かんぶん入門にゅうもん — 訓読くんどく・返かえり点てん・送おくり仮名かなのしくみ
  2. 2送おくり仮名かなと書き下し文かきくだしぶん — 表記ひょうきの作法さほう
  3. 3再読さいどく文字もじ — 二に度ど読よむ字じの体系たいけい
  4. 4否いな定形ていけい — 不ふ・無む・莫・非ひ・勿の使つかい分わけ
  5. 5疑問ぎもん形けい・反はん語形ごけい — 何なに・誰だれ・安やす・乎・哉
  6. 6受身うけみ・使役しえき・比較ひかく — 構文こうぶんの三本みもと柱はしら
  7. 7故事こじ成語せいご — 漢文かんぶんから生うまれたことわざ
  8. 8思想しそう — 諸子百家しょしひゃっか(論語ろんご・孟子もうし・荘子そうし・老子ろうし・韓非子かんぴし)
  9. 9史伝しでん — 史記しき・十八史略じゅうはっしりゃくの名めい場面ばめん
  10. 10漢詩かんし — 絶句ぜっく・律詩りっしと唐詩とうしの名作めいさく