はじめに
論述・小論文は 「自分の主張を、 根拠を示しながら、 読み手を説得するために書く」文章です。 感想文とも作文とも異なる、 論理の作法 を持つジャンルです。
この章で身につける視点:
- 問いを 正確に分析 する
- 主張・根拠・反論への応答の 三層構成 を組む
- 段落を 一段落一論点 で統制する
- 接続表現で論理を明示する
- 推敲で文章を整える
関連:学術論文の構成として知られる IMRaD (Introduction / Methods / Results and Discussion) は、 大学入学後に必要になる形式です。 高校小論文では IMRaD を厳密に適用する必要はありませんが、 「問いを立てる → 方法を述べる → 結果を示す → 考察する」 という骨格は共通しています。 (発展)
1. 問いを分析する — 出題意図の把握
小論文の出題は次の三型に大別できます。
| 型 | 例 |
|---|
| 課題文型 | 「次の文章を読み、 筆者の主張に対するあなたの意見を述べよ」 |
| データ型 | 「次のグラフから読み取れることと、 そこから考えられる対策を述べよ」 |
| テーマ型 | 「これからの共同体のあり方について論じよ」 |
問いを読んだら、 次のチェックを必ず行います。
(1) 何を答えるか:「賛否を述べる」 のか、 「原因を分析する」 のか、 「解決策を提案する」 のか。
(2) 字数:400 字 / 800 字 / 1200 字。 字数によって段落構成は変わります。
(3) 制約条件:「体験を踏まえて」「課題文に言及しながら」 など。
2. 三層構成 — 序論・本論・結論
400 〜 800 字程度の小論文は、 次の骨格で組むのが基本です。
| 段落 | 役割 | 目安字数 (800 字の場合) |
|---|
| 序論 | 問題の提示・主張の提示 | 150 字 |
| 本論 1 | 主張の根拠 1 | 200 字 |
| 本論 2 | 主張の根拠 2 (または反論への応答) | 200 字 |
| 結論 | 主張の再確認と展望 | 150 〜 250 字 |
序論で書くこと
- 課題文の要約・問題の提示 (1 〜 2 文)
- 自分の主張の明示 (1 文)
架空の例 (※架空):「共同体の衰退を嘆く論調は多い。 しかし私は、 現代に必要なのは旧来の共同体の復活ではなく、 新しい結びつきの創出であると考える。」
本論で書くこと
各段落は 「一段落一論点」 を厳守。 一つの段落で根拠を一つ示します。
段落内の標準構造:
- 段落主題文 (topic sentence) — 「第一に、 〜」
- 具体例・データ — 「例えば〜」
- 小結論 — 「したがって〜」
結論で書くこと
- 主張の再確認 (1 文)
- 展望・残された課題 (1 〜 2 文)
注意:結論段で 新しい論点を出さない。 本論で展開していない内容を結論で唐突に持ち出すと、 文章の統一感が損なわれる。
3. 反論への応答を組み込む
論証力を高めるには、 想定される反論を取り上げ、 それに応答する段落を組み込みます。 譲歩・限定・再主張の構文を活用します。
架空の例 (※架空):「もちろん、 伝統的共同体の復活を求める意見にも一理ある。 顔の見える関係が失われた現代の孤立感は深刻だからだ。 しかし、 失われた共同体を強制的に再建することは、 個人の自由を抑圧する危険を伴う。 必要なのは復活ではなく、 自発的に選び直せる結びつきの創出である。」
「もちろん〜」 で反対意見を紹介し、 「しかし〜」 で自説に戻るパターン。
4. 接続表現を使いこなす
論理の流れを明示するため、 接続表現を適切に配置します。
| 用途 | 表現例 |
|---|
| 主張の提示 | 「私は〜と考える」「結論を先取りすれば〜」 |
| 根拠の提示 | 「理由は二つある」「第一に〜、 第二に〜」 |
| 具体例 | 「例えば〜」「具体的には〜」 |
| 譲歩 | 「もちろん〜」「確かに〜」 |
| 反論 | 「しかし〜」「他方〜」 |
| 換言 | 「要するに〜」「換言すれば〜」 |
| 結論 | 「以上の考察から〜」「したがって〜」 |
5. 文体・表現の基本ルール
(1) 「だ・である」 体で統一。「です・ます」 体と混在させない。
(2) 主語と述語を対応させる。 長い一文で主語が迷子になりやすい。
(3) 一文を 60 字程度に抑える。 冗長な修飾を削る。
(4) 感情語・誇張表現を控える。「最高に素晴らしい」「絶対に正しい」 は避ける。
(5) 一人称は「私」 で統一。「僕」「俺」 は小論文では不可。
6. 推敲の手順
書き終えたら、 必ず推敲します。 次の順序が効率的です。
- 全体構造の確認 — 序論・本論・結論が明瞭か
- 段落単位の確認 — 一段落一論点になっているか
- 文単位の確認 — 主述対応、 冗長表現の削除
- 語レベルの確認 — 誤字・脱字・誤用の修正
- 音読 — 読みにくい箇所・呼吸の乱れを感知する
注意:推敲では「書き足す」 より 「削る」 方が効果が大きいことが多い。 冗長表現の削除だけで文章の切れ味が増す。
7. 高校生のための小論文 5 ステップ
最後に、 60 分で 800 字の小論文を書く手順をまとめます。
- 5 分: 問いを分析し、 主張を一文で書き出す
- 10 分: 根拠・反論への応答を箇条書きで構成メモを作る
- 35 分: メモに従って書く
- 5 分: 推敲 (構造・段落・文の順に確認)
- 5 分: 字数調整と最終清書
やってみよう: 「これからの共同体のあり方について、 あなたの考えを 800 字以内で述べよ」 という課題で、 上記 5 ステップを試みてみよう。 時間を計って書く練習が最も効く。
次章では、 書くことの基礎としての 要約・批評 を学びます。
まとめ — 小論文の書き方を 3 行で
- 小論文は問いを分析し出題意図を把握した上で、 序論・本論・結論の三層構成で主張と根拠を組み立てるのが原則である
- 二項対立 を活かして反論への応答を組み込み、 接続表現で論理の流れを明示することで説得力が増す
- 文体・表現ルールを守り、 必ず推敲を行う 5 ステップが、 限られた時間内で良質な小論文を書く近道である