この章で学ぶこと
Ch3 で化学変化の 4 パターンを学びました。 この章では、 化学変化が起こるときに 熱が出たり (発熱)、 熱を吸ったり (吸熱) する現象 に注目 します。 カイロや冷却剤 (ひやろんのようなもの) のしくみを化学で説明 します。
- 発熱反応 と 吸熱反応 を区別 できる
- 鉄の 酸化 で温度が上がることを説明 できる (使い捨てカイロ のしくみ)
- 鉄 + 硫黄 の 硫化鉄生成 が激しく進む理由 を言える
- 化学変化と熱 の出入りを エネルギーの移動 として理解 できる
- 反応熱 と 活性化エネルギー の概念 を知る (発展)
- 加熱・硫化水素 ガス・発火注意 の安全ルールを守れる
ポイント: 化学変化は 「物質が変わるだけ」 ではなく、 「エネルギー (熱・光) も出入入りする」。 この章では エネルギーの視点 から化学変化を見直します。
1. 発熱反応と吸熱反応
発熱反応とは
化学変化の結果、 周りに熱を出す反応 を 発熱反応 と呼びます。 反応後の温度が 上がります。
| れい | 何が起こるか | 利用 |
|---|
| 鉄 + 酸素 (酸化) | カイロの中身 (鉄粉 がゆっくり酸化) | 使い捨てカイロ |
| 燃焼 (木・ガス・ろうそく) | 激しい酸化 → 高温と光 | 暖房・調理 |
| 金属 と酸の反応 | 亜鉛 + 塩酸 → 水素 + 熱 | 化学実験 |
| 中和反応 | 塩酸 + 水酸化ナトリウム → 食塩 + 水 + 熱 | (中 3 で詳しく) |
| 鉄 + 硫黄 | Fe + S → FeS、 反応が始まると自力で進む | 中 2 化学の代表実験 |
吸熱反応とは
化学変化の結果、 周りから熱を吸う反応 を 吸熱反応 と呼びます。 反応後の温度が 下がります。
| れい | 何が起こるか | 利用 |
|---|
| 重曹 + クエン酸 | 二酸化炭素を出しながら周りの熱 を奪う | 入浴剤・冷却 パック |
| 塩化アンモニウム + 水酸化バリウム | 強い吸熱、 -10 ℃ 近くまで下がる | 化学実験 |
| 硝酸 アンモニウム + 水 | 水に溶けるだけで大きな吸熱 | 瞬間冷却パック |
発熱と吸熱の区別
| 観点 | 発熱反応 | 吸熱反応 |
|---|
| 温度 | 上がる | 下がる |
| エネルギーの向き | 反応 → 周り | 周り → 反応 |
| 多さ | 化学変化の多く | 比較的少ない |
| 利用例 | カイロ・燃焼 | 冷却 パック・入浴剤 |
大事: 「発熱 か吸熱 か」 は 温度計を当てて確かめる。 反応の前後で 温度が上がるか下がるか で判断 します。
2. カイロのしくみ (鉄のゆっくり酸化)
使い捨てカイロ は、 鉄粉 が空気中の酸素とゆっくり結びついて熱を出す 仕組みで動いています。
カイロの中身
| 成分 | 役割 |
|---|
| 鉄粉 | 酸化される主役 |
| 活性炭 | 酸素をゆっくり通す、 反応を一定に保つ |
| 食塩 (NaCl) | 鉄の酸化 を進めやすくする (触媒的な役割) |
| 水 | 反応に必要な湿気 |
| バーミキュライト | 水を保つ鉱物 |
反応式 (要約)
| 反応 | 式 |
|---|
| 鉄の酸化 | 4Fe + 3O₂ → 2Fe₂O₃ (酸化鉄、 さびと同じ) |
| 出る熱 | 1 g の鉄が完全に酸化で約 7 kJ |
なぜ「ゆっくり」 進むのか
| 要因 | 効果 |
|---|
| 鉄粉 が細かく空気と触れやすい | 反応が持続 する |
| 袋の通気性を調整 | 酸素の量を制御 |
| 食塩 と水で反応を助ける | 一定の速さで進む |
| 大きな塊 の鉄 (鉄棒) | さびはゆっくり、 熱はほとんど感じない |
大きなカイロ vs 小さなカイロ
| 比較 | 結果 |
|---|
| 大きなカイロ | 鉄粉 が多い → 持続時間が長い |
| 小さなカイロ | 鉄粉 が少ない → 早く冷める |
ポイント: カイロは 化学変化そのものが熱を出している。 「電気 や電池 が入っている」 と思う人が多いが、 実は鉄と酸素の 化学変化だけ で動いています。
3. 鉄 + 硫黄 の反応
中 2 化学で必ず行う代表実験 が、 「鉄粉 と硫黄 の粉 をまぜて加熱 する」 反応です。
実験 の流れ
| ステップ | やること |
|---|
| ① | 鉄粉 7 g + 硫黄 4 g をよくまぜる (質量比 7 : 4) |
| ② | 試験管に入れ、 上部をガスバーナーで加熱 |
| ③ | 上部が赤くなったら加熱 をやめる |
| ④ | 反応が 下へ自力で進む (発熱反応だから) |
| ⑤ | 全体が黒ずんだら完了 |
反応前と反応後の比較
| 性質 | 反応前 (鉄 + 硫黄) | 反応後 (硫化鉄) |
|---|
| 色 | 鉄粉 = 灰、 硫黄 = 黄 | 黒 |
| 磁石 | 鉄粉 がつく | つかない |
| 塩酸 をかけると | 鉄から 水素 (無臭) が発生 | 硫化水素 (くさい卵の匂い) が発生 |
反応式
| 項目 | 内容 |
|---|
| 反応式 | Fe + S → FeS |
| タイプ | 化合 (Ch3 参照) + 発熱反応 |
| 質量比 | Fe : S = 7 : 4 |
なぜ自力で進むのか
最初の加熱 で反応が始まると、 その化学変化自身が熱を出す (発熱反応)。 その熱が 隣の部分 を加熱 し、 反応が連鎖 して下へ進んでいくのです。 これを 自己持続反応 と呼びます。
大事: 加熱 をやめても反応が 自力で続く のは、 「発熱反応 が連鎖する」 から。 これが 「自己持続反応」 と呼ばれ、 燃焼 や鉱山 での自然発火と同じしくみです。
4. 化学変化とエネルギーの出入り
化学変化を 「エネルギーの出入り」 として見ると、 全ての反応を統一的に説明 できます。
エネルギー図 (発熱反応)
| 状態 | エネルギーの高さ |
|---|
| 反応前 (Fe + S) | 高い |
| 反応後 (FeS) | 低い |
| 差 | 熱として周りに出る |
エネルギー図 (吸熱反応)
| 状態 | エネルギーの高さ |
|---|
| 反応前 (重曹 + クエン酸) | 低い |
| 反応後 | 高い |
| 差 | 周りから熱を吸う |
反応を起こすための「最初の一押し」
どんな反応にも、 最初に必要なエネルギー (= 活性化エネルギー) があります。
| 例 | 「最初の一押し」 |
|---|
| ガスバーナーの着火 | マッチや電気 スパーク |
| 鉄 + 硫黄 | 試験管上部の加熱 |
| 燃焼 | 火をつける |
| カイロ | 袋を開ける (空気を入れる) |
反応熱 (発展)
化学変化で出入りする熱の量を 反応熱 と呼び、 単位 は kJ/mol (キロジュール毎モル) で表します (高校で詳しく)。
| 反応 | 反応熱 (約) |
|---|
| 水素の燃焼 (H₂ + ½O₂ → H₂O) | -286 kJ/mol (発熱) |
| メタンの燃焼 (CH₄ + 2O₂ → CO₂ + 2H₂O) | -890 kJ/mol (発熱) |
| 鉄の酸化 (4Fe + 3O₂ → 2Fe₂O₃) | -1648 kJ/mol (発熱) |
ポイント: 化学変化は エネルギーの形を変える装置。 燃料の化学エネルギー → 熱エネルギー → 機械を動かす。 中 3 で学ぶ 「エネルギー」 単元の入口です。
5. 身の回りの発熱 ・ 吸熱
身の回りの発熱反応
| 例 | 反応 |
|---|
| 使い捨てカイロ | 鉄の酸化 |
| ガスコンロ | メタンやプロパンの燃焼 |
| ろうそく | パラフィン (炭化水素) の燃焼 |
| たき火 | 木 (セルロース等) の燃焼 |
| 発電所 | 石炭・石油・天然ガスの燃焼 |
| 車のガソリンエンジン | ガソリンの燃焼 |
身の回りの吸熱反応
| 例 | 反応 |
|---|
| 冷却 パック | 硝酸 アンモニウム + 水 |
| 入浴剤 | 重曹 + クエン酸 (発泡 + 軽い吸熱) |
| 水の蒸発 (汗) | 物理変化だが同じ効果で体を冷やす |
実験 のアイデア
| 実験 | やり方 |
|---|
| カイロの温度をはかる | カイロを開け、 5 分ごとに温度計を当てる |
| 重曹 + クエン酸 | 水の入ったコップに両方 を入れ、 温度計で温度変化をみる |
| 鉄粉 + 食塩 + 水 | 試験管でゆっくり加熱 される (= ミニカイロ) |
大事: 身の回りの 「あたたかい」 「冷たい」 商品の多くは、 化学変化で説明 できる。 化学を学ぶと、 商品ラベルの成分表を見て「なぜこれで温まるのか」 が分かるようになります。
6. 安全 — 加熱 ・ 発火注意
化学変化と熱の実験 では、 加熱中の温度・硫化水素ガス・自然発火 に注意 が必要 です。
加熱中の注意
| ルール | 理由 |
|---|
| 試験管の口 を人 に向けない | 急に中身が飛び出ることがある |
| 加熱部分 を直接触らない | 加熱後数分は高温 |
| 試験管ばさみを使う | 素手 で持つとやけど |
| 加熱中は試験管をふらつかせない | 中身が飛び散る |
| 加熱終了後は十分 に冷ます | まだ高温 なまま触らない |
鉄 + 硫黄実験 での注意
| 場面 | 注意 |
|---|
| 反応後の試験管を割らない | 中の硫化鉄を酸 に触れさせない |
| 硫化水素ガス に注意 | 硫化鉄 + 塩酸 → 硫化水素 (有毒・卵の腐った匂い) |
| 換気厳守 | 窓を開け、 換気扇を回す |
| 匂いを直接かがない | 手で軽く扇ぐ |
| 気分 が悪くなったら屋外へ | 速やかに新鮮 な空気 を |
発火 ・ 燃焼実験 での注意
| ルール | 説明 |
|---|
| 可燃物を周りに置かない | 紙・布・カーテンから離す |
| 消火用具を用意 | 濡れた布・消火器・水道を確認 |
| 服装 | 長袖 は袖 をまくる、 髪 は結ぶ |
| 大量の薬品 を使わない | 燃焼規模 が大きくなると制御 できなくなる |
| マグネシウムの燃焼 | 強い光を直視しない (目を痛める) |
自然発火のこと
カイロや鉄粉 は、 大量に積み重ねると 自然発火 (自力で火がつくこと) を起こすことがあります。 工場の火災の原因にもなっています。
大事: 「鉄が燃える」 「鉄で暑くなる」 は同じ反応。 量と時間の違いで 「カイロ」 にも「火災」 にもなります。 学校の実験 では 必ず少量 で、 先生 の指示 に従います。
燃焼 — 物質が 酸素 と激 しく結びついて光と 熱 を出す 化学変化。 代表的 な 発熱 反応。
瞬間冷却パック — 硝酸 アンモニウムが水に 溶けるときの 吸熱 を 利用 して 冷たくなる 製品。 代表的 な 吸熱反応 (厳密 には 溶解) の 身近 な 応用例。 打撲や発熱 の 応急処置 に使う。
まとめ
- 化学変化は 熱を出す (発熱反応) か 熱を吸う (吸熱反応) に分かれる
- カイロは 鉄のゆっくりした酸化 (4Fe + 3O₂ → 2Fe₂O₃) で発熱
- 鉄 + 硫黄 は 「自力で進む発熱反応」。 反応後は 磁石 につかない + 塩酸 で硫化水素が出る
- 吸熱反応の代表 = 重曹 + クエン酸、 硝酸 アンモニウム + 水
- 化学変化は エネルギーの移動 であり、 反応の前後での エネルギー差 が熱として出入りする
- 安全: 試験管の口 を向けない・換気・硫化水素注意・少量で行う
次の章では、 化学から物理に移り、 電流 と 電圧 を学びます。 オームの法則 と直列・並列回路が中心です。
まとめ — 化学変化と熱を 3 行で
- 化学変化は熱を出す 発熱反応 (鉄の酸化・カイロ等) と熱を吸う 吸熱反応 (重曹+クエン酸等) に分かれる
- 鉄+硫黄 は自力で進む発熱反応で、 反応後の生成物は磁石につかず塩酸で硫化水素が発生する点で原料と区別できる
- 化学変化はエネルギーの移動であり、 反応前後のエネルギー差が熱として出入りするのが熱変化の本質である