この章で学ぶこと
第 5 章では、 電流を数値 (アンペア・ボルト・オーム) でとらえる学習をしました。 この章では、 電流が流れるとそのまわりに何が起こるか を学びます。
電流はただ流れるだけでなく、 磁場 を作り出し、 磁石 と引き合ったり反発したりします。 そのはたらきを利用して、 私たちの身の回りの多くの機械 (モーター・スピーカー・発電機・IH 調理器) が動いています。
- 電流が流れる導線のまわりに 磁場 ができることを知る
- 右ねじの法則 で 磁場 の向きを決められるようになる
- コイルに流れる電流と 磁場 の関係を理解する
- 電磁誘導 と 誘導電流 のしくみを知る
- モーター と 発電機 がなぜ回るか、 なぜ電気を起こすかを説明できる
- 直流 と 交流 のちがいを知る
大切なこと: 第 5 章の 「電流 = 数値」 から、 第 6 章では 「電流 = 磁場を作るもの」 へ視点が広がります。 電気と 磁石 がふかくつながっていることがこの章の中心メッセージです。
1. 電流が作る 磁場
磁石のおさらい
磁石 には N 極 と S 極 があり、 同じ極どうしは反発し、 ちがう極どうしは引き合います。 磁石 のまわりには 磁場 (磁界 ともいう) があり、 その中に鉄粉をまくと、 N 極から出て S 極へもどる 磁力線 が見えます。
| 用語 | 意味 |
|---|
| 磁場 (磁界) | 磁石 や電流のまわりにできる、 磁力がはたらく空間 |
| 磁力線 | 磁場 の向きを線で表したもの。 N 極から出て S 極へ |
| 磁針 | 小さな 磁石。 N 極がさす向きが 磁場 の向き |
電流を流すと 磁場 ができる
導線に電流を流し、 そのそばに 磁針 を置くと、 磁針 がふれます。 これは電流が 磁場 を作っているしょうこです。 1820 年に エルステッド が発見しました。
電流を強くするほど、 また導線に近づくほど、 磁場 は強くなります。
| 条件 | 磁場 の強さ |
|---|
| 電流が大きい | 強くなる |
| 導線に近い | 強くなる |
| 電流が 0 | 磁場 は消える |
2. 右ねじの法則
直線の導線に電流を流すと、 磁場 は導線を中心に 同心円 にできます。 その向きは 「右ねじの法則」 で決まります。
右ねじの法則: 右ねじを電流の向きに進めるように回すと、 ねじの回る向きが 磁場 の向きに一致する。
右手を使った覚え方
右手の親指を電流の向きに向けると、 のこりの 4 本の指がまがる向きが 磁場 の向きになります。
| 電流の向き | 磁場 の向き (導線を上から見て) |
|---|
| 紙面から手前へ (・印) | 反時計回り |
| 紙面の奥へ (×印) | 時計回り |
確かめる実験
- 厚紙に穴をあけ、 直線の導線を通す
- 厚紙の上に鉄粉をまく
- 電流を流し、 紙を軽くたたく
- 鉄粉が同心円状にならぶことをかくにんする
- 磁針 を置き、 N 極の向きを記録して 磁場 の向きを調べる
3. コイルの 磁場
導線をぐるぐるまいたものを コイル といいます。 コイルに電流を流すと、 1 本 1 本の導線が作る 磁場 が重なり、 全体として 棒磁石 のような 磁場 ができます。
コイルの極の決め方 (右手の法則)
右手の 4 本の指を電流の流れる向き (コイルを巻く向き) にそえると、 親指がさす向きが N 極 になります。
| コイルの形 | 磁場 のとくちょう |
|---|
| 1 本の直線導線 | 同心円状の弱い 磁場 |
| 1 巻きの輪 | 中心を通る 磁場 |
| 多数巻いたコイル | 棒磁石 と同じ形の強い 磁場 |
コイルの 磁場 を強める方法
| 工夫 | 効果 |
|---|
| 巻き数をふやす | 磁場 が強くなる |
| 電流を大きくする | 磁場 が強くなる |
| 鉄しん を入れる | 磁場 がけたちがいに強くなる (電磁石) |
電磁石 のとくちょう
鉄しんをコイルに入れたものを 電磁石 といいます。
- 電流を流している間だけ 磁石 になる
- 電流を切ると 磁石 の性質を失う
- 電流の向きを変えると N 極・S 極が入れかわる
- 電流の大きさで強さを調節できる
これらの性質を使って、 リレー (継電器)、 スピーカー、 IH 調理器、 リニアモーターカーなど多くの機械が作られています。
4. 電流が 磁場 から受ける力
電流を流した導線を 磁場 の中に置くと、 導線は 力 を受けます。 これがモーターの原理です。
力の向き — フレミングの左手の法則
左手の親指・人さし指・中指を直角に開きます。
| 指 | 向き |
|---|
| 中指 | 電 流の向き |
| 人さし指 | 磁場の向き |
| 親指 | 力の向き (動く向き) |
「電・磁・力」 と順に 「中・人・親」 の指に当てると覚えられます。
力を大きくする方法
| 条件 | 力 |
|---|
| 電流を大きくする | 大きくなる |
| 磁場 を強くする (磁石 を強いものに) | 大きくなる |
| 導線を 磁場 に直角にする | 最大 |
| 導線を 磁場 に平行にする | 0 (力を受けない) |
モーターのしくみ
モーターは 「電流と 磁場 が力を生む」 性質を利用し、 コイルを回し続ける仕組みです。
- 磁石 の間にコイルを置く
- コイルに電流を流すと、 上下の導線が反対向きの力を受ける
- コイルが半回転する
- 整流子 と ブラシ が電流の向きを切りかえる
- 同じ向きに力がはたらき続け、 コイルは回り続ける
重要: モーターは 電気エネルギーを運動エネルギーに変える 装置です。 自動車 (EV)、 せん風機、 そうじき、 エレベーターなど私たちの生活で数え切れないほど使われています。
5. 電磁誘導 と 誘導電流
モーターの反対を考えます。 「コイルを回せば電流が流れるのではないか?」 — これを 1831 年に ファラデー が確かめました。
実験でわかること
検流計 (小さな電流を計れる計器) をつないだコイルに 磁石 を出し入れします。
| 操作 | 検流計のはり |
|---|
| 磁石 を入れる | ふれる |
| 磁石 を止める | 0 |
| 磁石 を出す | 反対にふれる |
| 磁石 を速く動かす | 大きくふれる |
| 巻き数をふやす | 大きくふれる |
| 強い 磁石 にする | 大きくふれる |
電磁誘導 とは
コイルをつらぬく 磁場 が変化すると、 コイルに電流が流れる現象を 電磁誘導 といいます。 そのときに流れる電流を 誘導電流 といいます。
重要: 誘導電流 が流れるのは 磁場 が変化している間だけ です。 磁石 を止めておくと電流は流れません。
誘導電流 の向き — レンツの法則
誘導電流 は、 「コイルをつらぬく 磁場 の変化をさまたげる向き」 に流れます。 これを レンツの法則 といいます。 中学では 「磁石 を入れるときと出すときで反対向きになる」 ととらえれば十分です。
6. 発電機と 直流・交流
電磁誘導 を連続して起こすしくみが 発電機 です。 火力・水力・原子力・風力・太陽光など、 ほぼすべての発電所でこの原理が使われています (太陽光をのぞく)。
発電機のしくみ
- 磁石 の間でコイルを回す
- コイルをつらぬく 磁場 がたえず変化する
- 電磁誘導 により 誘導電流 が流れ続ける
モーターと発電機は同じ構造: モーターは 「電気 → 運動」、 発電機は 「運動 → 電気」。 電池をつなげばモーター、 手で回せば発電機になります。
直流 と 交流
| 種類 | 電流の向き | 例 |
|---|
| 直流 (DC) | いつも同じ向き | 電池、 太陽光パネルの出力 |
| 交流 (AC) | 周期的に向きが入れかわる | コンセントの電気、 発電所の出力 |
周波数 (ヘルツ)
交流 が 1 秒間にくりかえす向きの変化の回数を 周波数 (単位ヘルツ Hz) といいます。 日本では 東日本が 50 Hz、 西日本が 60 Hz と二つの周波数が使われています (糸魚川・静岡を境)。
発光ダイオード (LED) で確かめる
LED は 決まった向き にだけ電流を流して光ります。
| 電流 | LED の光り方 |
|---|
| 直流 | 連続して光る |
| 交流 | 速く点滅する (人の目には連続に見える) |
交流 を LED につないで振ってみると、 点滅が線のように見え、 交流 であることが確認できます。
7. 身の回りの電気と 磁場
電気と 磁場 の関係は、 私たちの生活を支える多くの機器に使われています。
| 機器 | 利用している原理 |
|---|
| モーター (直流・交流) | 電流が 磁場 から受ける力 |
| 発電機 | 電磁誘導 |
| スピーカー | コイルが受ける力で振動板を動かす |
| マイク | 振動板の動きを 電磁誘導 で電流に変える |
| 変圧器 (トランス) | 1 次コイルの変化する 磁場 が 2 次コイルに 誘導電流 を起こす |
| IH 調理器 | 鍋自身に 誘導電流 が流れ、 抵抗で発熱 |
| リニアモーターカー | 強力な 電磁石 の反発・引き合いで浮上と推進 |
| 電車の自動改札・カード | コイルと電磁波で情報をやり取り |
これまでの章とのつながり: 第 5 章の 「電流・電圧・抵抗」、 第 6 章の 「磁場・電磁誘導」、 そして第 4 章の 「化学変化とエネルギー」 は、 すべてエネルギー変換でつながっています。 火力発電 = 化学 → 熱 → 運動 → 電気、 と 4 段階の変換が行われています。
コイルの 磁場 — 電流 を流したコイル (ソレノイド) の周りには、 棒磁石 と同じような 磁場 ができる。 N 極と S 極が現れる。
右手 の法則 — 導線 を 親指 の向きに 電流 が流れると、 指 の巻き方向に 磁場 ができる。 右ねじの法則 と同じことを 手 で表したもの。
安全のきまり (この章でとくに大切)
電気と強い 磁場 をあつかう章です。 つぎの注意をまもりましょう。
電気の安全
- ぬれた手でコンセントやスイッチにさわらない (感電のおそれ)
- たこ足配線をしない (発火のおそれ)
- 実験では 必ず教師の指示通りの電圧 に設定する
- ショート (+極と -極を直接つなぐ) を絶対にしない — 大電流が流れ、 電池が発熱し、 やけどや発火を起こす
- 実験後はスイッチを切り、 電池を外す
- コイルに大電流を流し続けない — 発熱して火傷や火災のおそれ
- 100 V の家庭用コンセントを直接実験に使わない — 感電死の危険
強い 磁場 の注意
- 強力な ネオジム磁石 ははさんだ指をつぶすほどの力がある — 顔や目に近づけない
- ペースメーカー (心臓の機械) を入れた人のそばで強力な 磁石 や 電磁石 を使わない
- スマートフォン・カード (磁気ストライプ)・時計を強い 磁場 に近づけない — こわれるおそれ
- 鉄や鋼の工具を強力磁石 の近くで使わない — はさみこまれてけがをする
こまったとき
火が出た、 こげたにおいがする、 感電した — すぐにスイッチを切り、 教師を呼ぶ。 自分で何とかしようとしてはいけません。
まとめ — 電流のはたらきを 3 行で
- 電流が流れると周囲に 磁場 ができ、 直線電流は 右ねじの法則 で向きが決まり、 コイルでは内部に強い磁場が生じる
- 磁場中の電流は力を受け (フレミングの左手の法則) これがモーターの原理、 逆に磁場の変化で電流が誘導されるのが 電磁誘導 と 誘導電流 である
- 直流 (向きが一定) と 交流 (周期的に向きが変わる) の違いを理解し、 発電機・モーター・スピーカーなど身の回りの電気機器の原理に結びつける