この章で学ぶこと
第 1 学年では植物のつくりとはたらきを学びました。 中学 2 年では 動物 (とくにヒト) の体 のしくみを学びます。
私たちの体は、 食物をとってエネルギーを取り出し、 酸素を取り入れて不要なものを出し、 全身に栄養と酸素を運び、 まわりを感じて反応する — という 複数のはたらきが同時に動いている ことで生きています。
- 消化 のしくみと 消化酵素 のはたらきを理解する
- 栄養分が 吸収 されるしくみを知る
- 呼吸 で酸素を取り入れ、 二酸化炭素を出すしくみを知る
- 心臓 と 血液・血管 のはたらきで物質が全身に運ばれることを理解する
- 不要物が 腎臓 でこし出されるしくみを知る
- 感覚器官と 神経系 により反応が起こることを理解する
- 反射 と 意識的な反応 のちがいを説明できる
多面的に見る: 1 つの食物が体に入ってから、 消化 → 吸収 → 循環 → 呼吸 (細胞) → 排出と何段階ものしくみを通ります。 1 つずつでなく つなげて とらえることが大切です。
1. 消化 と 消化酵素
消化 とは
口から入った食物は、 そのままでは大きすぎて体に取り込めません。 食物を 小さな粒 (分子) に分解するはたらきを 消化 といいます。
消化 はつぎの 2 種類のはたらきで行われます。
| 種類 | 内容 |
|---|
| 物理的消化 | かみ砕く、 すりつぶす、 こなごなに動かす |
| 化学的消化 | 消化酵素 で化学的に分解する |
消化器官のつながり
口からこう門までの 1 本の管を 消化管 といい、 そのまわりに付属の消化器官 (肝臓・すい臓など) があると考えます。
| 順番 | 器官 | 主なはたらき |
|---|
| 1 | 口 | かみ砕く、 だ液を混ぜる |
| 2 | 食道 | 胃へ送る |
| 3 | 胃 | 胃液でタンパク質を分解 |
| 4 | 十二指腸 | すい液・胆汁がそそぎこまれる |
| 5 | 小腸 | 最終分解と栄養吸収 |
| 6 | 大腸 | 水分を 吸収、 ふんを形成 |
| 7 | こう門 | ふんを体外へ |
3 大栄養素と 消化酵素
| 栄養素 | 分解する酵素 (主なもの) | 分解後 |
|---|
| デンプン | だ液中の アミラーゼ、 すい液中のアミラーゼ | ブドウ糖 |
| タンパク質 | 胃液中の ペプシン、 すい液中のトリプシン | アミノ酸 |
| 脂肪 | 胆汁で乳化 → すい液中の リパーゼ | 脂肪酸とモノグリセリド |
大切: 胆汁 (たんじゅう) は肝臓で作られ、 胆のうにたくわえられ、 十二指腸へ出されます。 胆汁そのものには 消化酵素 は含まれていませんが、 脂肪を細かい粒にする (乳化) はたらきがあり、 リパーゼのはたらきを助けます。
だ液のはたらきを確かめる実験
| 試験管 | 中身 | 温度 | ヨウ素液 | ベネジクト液 |
|---|
| A | デンプンのり + だ液 | 体温 (約 40 ℃) | 反応なし | 加熱で赤褐色 (糖あり) |
| B | デンプンのり + 水 | 体温 | 青紫色 (デンプンあり) | 反応なし |
A ではデンプンが糖に変わっていることがわかります。 これがだ液中の アミラーゼ のはたらきです。
酵素は体温で最もはたらく: 高温 (約 60 ℃ 以上) で酵素はこわれてはたらかなくなり、 低温でははたらきがおそくなります。
2. 栄養分の 吸収
消化 で小さくなった栄養分は、 主に 小腸の内壁 で体に取り込まれます。
小腸のとくちょう
- 内側に 柔毛 という小さなひだが数えきれないほどあり、 表面積が テニスコート 1 面分 にもなる
- 表面積が広いほど 吸収 が速くなる
吸収 の道すじ
| 栄養分 | 吸収 される場所 | 入る場所 |
|---|
| ブドウ糖、 アミノ酸 | 柔毛 | 毛細血管 → 肝臓へ |
| 脂肪酸、 モノグリセリド | 柔毛 で再び脂肪になる | リンパ管 → 静脈へ |
肝臓では、 ブドウ糖を グリコーゲン に変えてたくわえたり、 アミノ酸から必要なタンパク質を作ったり、 アンモニアを害の少ない 尿素 に変えたりします。
大腸のはたらき
- 主に 水分 を 吸収 する
- 残りをふんとしてこう門から出す
- 大腸内には 腸内細菌 が多数いて、 一部のビタミンを作る
3. 呼吸 のしくみ
肺のつくり
| 部位 | はたらき |
|---|
| 鼻 | 空気を温め、 ほこりを取り除く |
| 気管 | 空気の通り道 |
| 気管支 | 気管が二つに分かれ、 さらに細かく枝分かれ |
| 肺 | 左右に 1 つずつ。 内部は 肺胞 という小さな袋の集まり |
肺胞 とは
肺の中で気管支が行き止まりになり、 直径 0.1 〜 0.3 mm の小さな袋になったものが 肺胞 です。 ヒトの肺には約 3 〜 6 億個あり、 全部の表面を広げると約 70 m² (テニスコート半分) にもなります。
広い表面積 = 効率が良い: 小腸も肺も、 表面積を広げることで物質の受けわたしを効率化しています。 体の中で共通する工夫です。
気体の交換
肺胞 のまわりには毛細血管が網の目のように走っています。 ここでつぎの 気体の交換 が起こります。
| 場所 | 入るもの | 出るもの |
|---|
| 肺胞 | 酸素 (吸う空気から血液へ) | 二酸化炭素 (血液から吐く空気へ) |
吸う息と吐く息
| 気体 | 吸う息 | 吐く息 |
|---|
| 窒素 | 78 % | 78 % |
| 酸素 | 21 % | 16 % |
| 二酸化炭素 | 0.04 % | 4 % |
| 水蒸気 | 少ない | 多い |
吐く息で鏡がくもるのは、 体内の水蒸気が多く含まれるためです。
呼吸運動
肺自身には動く筋肉がないため、 まわりの 横隔膜 と ろっ間筋 の動きで空気を出し入れします。
| 動作 | 横隔膜 | ろっ骨 | 胸の体積 |
|---|
| 吸う | 下がる | 上がる | 大きくなる |
| はく | 上がる | 下がる | 小さくなる |
細胞での 呼吸
呼吸 には 2 段階あります。
| 種類 | 場所 | 内容 |
|---|
| 外呼吸 | 肺 | 空気と血液の間で気体交換 |
| 細胞呼吸 | 全身の細胞 | 栄養分 + 酸素 → エネルギー + 二酸化炭素 + 水 |
細胞呼吸 は化学変化: 第 4 章で学んだ 「酸化」 の一種と考えることができます。 ブドウ糖をゆっくり燃やしてエネルギーを取り出すしくみです。
4. 心臓 と 血液 のめぐり
心臓 のつくり
ヒトの 心臓 は 4 つの部屋 に分かれています。
| 部屋 | はたらき |
|---|
| 右心房 | 全身からもどってきた血液を受ける |
| 右心室 | 肺へ血液を送る |
| 左心房 | 肺からもどってきた血液を受ける |
| 左心室 | 全身へ血液を送る (最も強い筋肉) |
心臓 は自分でリズムを作り、 1 分間に約 60 〜 80 回、 一生では約 25 億回動き続けます。
2 つの循環
| 循環 | 道すじ |
|---|
| 肺循環 | 右心室 → 肺動脈 → 肺 → 肺静脈 → 左心房 |
| 体循環 | 左心室 → 大動脈 → 全身 → 大静脈 → 右心房 |
動脈と静脈と毛細血管
| 種類 | とくちょう |
|---|
| 動脈 | 心臓 から出る血液が流れる。 壁が厚く弾力がある |
| 静脈 | 心臓 へもどる血液が流れる。 壁がうすく、 逆流をふせぐ 弁 がある |
| 毛細血管 | 動脈と静脈をつなぐごく細い血管。 壁がうすく、 物質の受けわたしが起こる |
注意: 「動脈 = 酸素が多い」 ではありません。 「動脈 = 心臓 から出る」 と覚えます。 肺動脈 には二酸化炭素が多い血液が流れます (例外)。
血液の成分
| 成分 | はたらき |
|---|
| 赤血球 | 中に ヘモグロビン を含み、 酸素を運ぶ |
| 白血球 | 細菌を食べて体を守る |
| 血小板 | 出血を止める |
| 血しょう | 液体の部分。 栄養分・二酸化炭素・不要物をとかして運ぶ |
組織液 と細胞の関係
血液中の血しょうが毛細血管の壁からしみ出し、 細胞のすきまを満たしたものを 組織液 といいます。 細胞は組織液を通して栄養と酸素を受け取り、 二酸化炭素や不要物を出します。
5. 不要物の 排出
細胞呼吸 やタンパク質の分解でできる不要物を体外へ出すしくみを 排出 といいます。
おもな不要物
| 不要物 | できかた |
|---|
| 二酸化炭素 | 細胞呼吸 |
| 水 | 細胞呼吸、 食物中の水 |
| アンモニア | アミノ酸の分解 |
アンモニアは体に害があるため、 肝臓で害の少ない尿素に変えられ ます。
腎臓 のはたらき
腎臓 はそら豆の形をした器官で、 背中側のこしの上に左右 1 つずつあります。
| 段階 | しくみ |
|---|
| 1 | 血液を こし出して 尿素・水・塩類を取り出す |
| 2 | 必要な水分と栄養分を再吸収 する |
| 3 | 残りを 尿 として ぼうこう にため、 体外へ出す |
二酸化炭素と水の 排出
- 二酸化炭素は 肺から息 で出る
- 水は尿・息・汗 で出る (汗には体温を下げるはたらきもある)
6. 感覚器官と 神経系
5 つの感覚
| 感覚 | 器官 | 受け取るもの |
|---|
| 視覚 | 目 | 光 |
| 聴覚 | 耳 | 音 (空気の振動) |
| きゅう覚 | 鼻 | におい (気体の物質) |
| 味覚 | 舌 | あじ (液体中の物質) |
| 触覚 | 皮ふ | おしつけ・温度・痛み |
目のつくり
| 部位 | はたらき |
|---|
| 角膜 | 目の一番外の透明な膜 |
| 水晶体 | 凸レンズ。 厚さを変えてピントを合わせる |
| 網膜 | 像が結ばれる場所。 光を感じる細胞が並ぶ |
| 視神経 | 信号を脳へ送る |
耳のつくり
| 部位 | はたらき |
|---|
| 耳かく (外耳) | 音を集める |
| こ膜 | 音で振動する |
| 耳小骨 | 振動を伝え、 大きくする |
| うず巻管 | 振動を信号に変え、 聴神経へ |
神経系 のつくり
| 部位 | はたらき |
|---|
| 中枢神経 (脳・せきずい) | 信号を受け取り、 命令を出す |
| 感覚神経 | 感覚器官から中枢へ信号を送る |
| 運動神経 | 中枢から筋肉へ命令を送る |
| 末しょう神経 | 感覚神経 + 運動神経をまとめたよび名 |
7. 反応と反射
意識的な反応 (脳で判断)
「ボールが飛んできた → 目で見る → 脳で判断 → 手でとる」 のように、 脳が関わる 反応です。 反応時間は約 0.2 秒。
道すじ: 感覚器官 → 感覚神経 → せきずい → 脳 → せきずい → 運動神経 → 筋肉
反射
熱いものに触れた瞬間に手を引っこめる、 ひざの下をたたくと足がぴくっと上がる — のように、 脳を通さず に起こる反応を 反射 といいます。 反応時間は約 0.1 秒と速く、 体を危険から守ります。
道すじ: 感覚器官 → 感覚神経 → せきずい → 運動神経 → 筋肉
| 反応の種類 | 通り道 | 速さ | 例 |
|---|
| 意識的な反応 | 脳を通る | 約 0.2 秒 | ボールをとる、 信号で止まる |
| 反射 | せきずいで折り返す | 約 0.1 秒 | 熱さで手を引く、 ひざ反射 |
反応時間をしらべる実験
物さしを落として何 cm でつかめたかで反応時間を計ります。
| つかんだ位置 | 反応時間 (約) |
|---|
| 5 cm | 0.10 秒 |
| 10 cm | 0.14 秒 |
| 15 cm | 0.17 秒 |
| 20 cm | 0.20 秒 |
| 25 cm | 0.23 秒 |
落下距離と時間の関係 (自由落下) から、 物さしが落ちる距離を時間に直して求めます。
心臓 — 4 つの部屋 (右心房・右心室・左心房・左心室) からなるポンプ。 血液 を全身に送り出す。
消化器官 — 口・食道・胃・小腸・大腸と続く消化管と、 肝臓・すい 臓 などの消化腺。 栄養分 を吸収する。
安全のきまり (この章でとくに大切)
この章は 「自分の体」 と 「動物の体」 をあつかいます。 命をそんちょうする心をもって学習しましょう。
解剖 (かいぼう) のマナー
- 中学では動物の解剖は必須ではありませんが、 もし行う場合は 「生命をいただく」 という気持ちを忘れない
- 解剖の前に観察動物に黙とうをささげる、 後はていねいに処理する
- 写真・映像やモデルで学ぶ方法を優先してよい
- ふざけたり、 体の一部をもてあそんだりしない
自分の体を観察するとき
- だ液をとるときは自分のものだけをつかう (他の人のものと混ぜない、 衛生上の理由)
- 試験管に入れた自分のだ液・血液関連の実験器具は その場ですぐ洗うか廃棄 する
- 反応時間の実験で物さしが顔に当たらないように距離をとる
食物を使う実験
- ヨウ素液・ベネジクト液を使ったあとのデンプンや食物は食べない (薬品がついている)
- 加熱後の試験管は熱いので試験管ばさみでつかむ
体調が悪いとき
具合が悪いとき、 立ちくらみがするときは我慢せずに教師に伝えます。 自分の体を観察する学習では、 安全が第一です。
まとめ — 動物の体を 3 行で
- 動物の体は 消化 ・吸収 ・呼吸 ・血液循環・排出 の 5 系統が連携して生命活動を維持している
- 消化酵素 (アミラーゼ・ペプシン等) は食物を分解し、 小腸の柔毛で吸収された栄養分は 心臓 のポンプ作用で全身に運ばれる
- 神経系 は感覚器官からの刺激を中枢で処理して命令を出すしくみで、 脊髄だけで起こる反射と脳が関わる反応を区別する