はじめに
この章では、 3 年生で入門した 短歌・俳句 をさらに深め、 百人一首入門、 四季の 季語、 そして 自分で俳句を作る体験へ進みます。
この章でできるようになること:
- 文語調 の短歌や俳句を声に出して音読でき、 リズムを楽しめる
- 百人一首 の代表 5 首を知っている
- 春・夏・秋・冬・新年の 季語 をいくつか言える
- 自分で季語を入れた俳句を 1 つ作れる
- 詩や俳句を友達と読み伝え合える
1. 短歌の世界 — 五・七・五・七・七
短歌 は 5・7・5・7・7 の 31 音でつくられた、 日本でいちばん古い詩の形です。 1300 年前の 『万葉集』 から今までずっとつくられつづけています。
万葉集から(奈良時代)
春過ぎて夏来たるらし白妙の衣干したり天の香具山
— 持統天皇 (万葉集)
意味: 春が過ぎて夏がやって来たらしい。 真っ白な衣をほしているという、 天の香具山で。
古今和歌集から(平安時代)
花の色はうつりにけりないたづらに我が身世にふるながめせし間に
— 小野小町
意味: 花の色があせてしまった。 長雨をながめているうちに、 私自身も年をとってしまった。
音読のコツ: 5・7・5・7・7 の区切りで軽く息を切ると、 リズムがきれいに出ます。
2. 俳句の世界 — 五・七・五と季語
俳句 は 5・7・5 の 17 音でつくられた、 世界でいちばん短い詩と言われます。 中にかならず 季語(季節をあらわす言葉) を 1 つ入れるのがきまりです。
| 作者 | 句 | 季語 | 季節 |
|---|
| 松尾芭蕉 | 古池や蛙飛びこむ水の音 | 蛙 | 春 |
| 与謝蕪村 | 菜の花や月は東に日は西に | 菜の花 | 春 |
| 小林一茶 | やせ蛙まけるな一茶これにあり | 蛙 | 春 |
| 正岡子規 | 柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺 | 柿 | 秋 |
| 松尾芭蕉 | 閑かさや岩にしみ入る蝉の声 | 蝉 | 夏 |
| 松尾芭蕉 | 五月雨を集めて早し最上川 | 五月雨 | 夏 |
| 松尾芭蕉 | 名月や池をめぐりて夜もすがら | 名月 | 秋 |
注:上の俳人はすべて江戸時代〜明治時代の作家で、 すべてパブリックドメインです。
3. 季語 — 四季をあらわす言葉
季語 は 季節をあらわす言葉。 春・夏・秋・冬のほかに 「新年」 という区分があります。
| 季節 | 季語のれい |
|---|
| 春 | さくら・うぐいす・ひばり・たんぽぽ・つくし・春風・あたたか |
| 夏 | せみ・ほたる・ひまわり・夕立・かみなり・あつい・夕涼み |
| 秋 | こおろぎ・赤とんぼ・もみじ・すすき・名月・天高し |
| 冬 | ゆき・北風・つらら・水仙・すきま風・さむい |
| 新年 | お正月・初日の出・かるた・たこあげ・ぞうに |
四季をあらわす風景のれい:
サクラ。 春の季語。 4 月ごろに花がさく。
ひまわり。 夏の季語。 大きな黄色い花。
もみじ。 秋の季語。 葉が赤く色づく。
雪。 冬の季語。 白くつもった雪。
調べ方:季語をまとめた本を 歳時記(さいじき) といいます。 図書館でさがしてみましょう。
4. 百人一首入門
百人一首 は、 鎌倉時代の歌人藤原定家(ふじわらのていか) が、 100 人の歌人のすぐれた短歌を 1 首ずつえらんでまとめた 100 首の歌集です。 13 世紀につくられ、 今から 700 年以上も前の作品で、 すべてパブリックドメインです。
代表 5 首
| 番 | 作者 | 短歌 |
|---|
| 1 | 天智天皇 | 秋の田のかりほの庵の苫をあらみ我が衣手は露にぬれつつ |
| 2 | 持統天皇 | 春過ぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山 |
| 3 | 柿本人麻呂 | あしひきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む |
| 4 | 山部赤人 | 田子の浦にうち出でてみれば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ |
| 9 | 小野小町 | 花の色はうつりにけりないたづらに我が身世にふるながめせし間に |
百人一首の楽しみ方
- かるた遊び: 上の句を読んで、 下の句の札を取る遊び。 お正月の風物詩
- 暗唱大会: お気に入りの 5 首を声に出して覚える
- 季節と情景を想像: 「田子の浦」 で富士山を見上げる場面を思いうかべる
5. 自分で俳句を作ってみよう
俳句を作るのはむずかしくありません。 つぎの 4 ステップで作ってみましょう。
4 ステップで作る
- 季節を決める — 今の季節か、 思い出の季節
- 季語を 1 つえらぶ — 上の表から 1 つ
- 感じたことを短く書く — 形は気にせずふつうの文で
- 5・7・5 に形をととのえる — 言葉をけずる、 入れかえる
自作俳句サンプル(Studia オリジナル)
つぎは Studia オリジナルの自作俳句です。 練習の参考にしてください。
| 自作俳句 | 季語 | 季節 |
|---|
| 朝ねぼう窓からひかる春の風 | 春の風 | 春 |
| ひまわりがぼくのせより高くなる | ひまわり | 夏 |
| 赤とんぼ黒板の字がゆれる午後 | 赤とんぼ | 秋 |
| 雪がふるぼくの足あと一つだけ | 雪 | 冬 |
| 初日の出家族みんなの顔が赤い | 初日の出 | 新年 |
注:上の 5 句はすべて Studia のオリジナル作品です。 練習のヒントにしてください。
自分で作ってみよう
「公園で見つけた桜」 をテーマに、 5・7・5 で作ってみましょう。
例: さくらちるベンチの上にピンクの雨(季語 = さくら/春。 Studia オリジナル)
6. まとめ
- 短歌 は 5・7・5・7・7、 俳句 は 5・7・5
- 百人一首 は 藤原定家 がえらんだ 100 首の名歌集
- 季語 は春・夏・秋・冬・新年の 5 つに分かれる
- 俳句は 季節 → 季語 → 短い文 → 5・7・5 の 4 ステップで作れる
次の章では、 ことわざ・慣用句・故事成語の活用 と 表現技法(比喩・反復・倒置) を学びます。