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高校化学基礎 の第 1 章は、 「化学とは何をする学問か」 を理解し、 中学で学んだ内容を高校流に整理し直す章です。 中学理科の 「原子」 「分子」 「化学反応式」 を土台に、 高校で 1 年半 〜 2 年半学ぶ化学の全体像をつかみます。
ポイント: 中学で 「物質」 「原子」 「分子」 を学びました。 高校化学ではさらに細かく、 「目で見える物質の性質」 と 「目で見えない原子・分子のふるまい」 をつなげて考えます。 この章はその 「橋渡し」 の章です。
化学 (Chemistry) とは、 「物質 の構造・性質・変化 を研究する学問」 です。 たとえば次のような問いを化学は扱います。
| 問いの例 | どんな化学の知識を使うか |
|---|---|
| 水 H₂O はなぜ 100 °C で沸騰するか | 分子間の引力 (水素結合)、 状態変化 |
| 食塩 NaCl はなぜ水によく溶けるか | イオン結合、 水和 |
| 鉄 Fe はなぜさびるか | 酸化還元反応、 電子 のやり取り |
| プラスチックはなぜ燃えるか | 有機化合物、 C と H の結合 |
| 電池はなぜ電気を流すか | 酸化還元反応と電子の流れ |
化学は次のような大きな領域に分かれます。 高校ではその入り口を学びます。
| 分野 | 扱う内容 | 高校での位置 |
|---|---|---|
| 無機化学 | H, C, N, O, Na, Cl, Fe など元素とその化合物 (有機を除く) | 化学 (発展) |
| 有機化学 | 炭素 C を中心とした化合物 (CH₄, C₂H₅OH, C₆H₆ など) | 化学 (発展) |
| 物理化学 | 化学反応のエネルギー・速度・平衡 を数式で表す | 化学基礎・化学 |
| 分析化学 | 物質を同定し、 量をはかる (滴定・クロマトグラフィー) | 化学基礎・化学 |
| 生化学 | 生命現象を化学で説明 (タンパク質・DNA) | 高校ではふれる程度 |
| 中学で学んだこと | 高校化学での発展 |
|---|---|
| 原子 はそれ以上分けられない | 原子は 陽子 + 中性子 + 電子 ででき、 電子配置 が性質を決める |
| 分子 は原子が結びついたもの | 共有結合・イオン結合・金属結合 と種類を区別 |
| 化学反応式 で変化を表す | mol で 量的関係 を計算 |
| 酸・アルカリ・中和 | pH を対数で表す、 電離度、 緩衝液 |
| 酸化還元 と 電池 | 酸化数、 電気分解、 電池 の起電力 |
大事: 中学化学では 「だいたいこうなる」 で OK でしたが、 高校化学では 「何 g・何 mol で、 何 g・何 mol ができるか」 と 数値 で表します。 mol (モル、 第 4 章) がその鍵になります。
身のまわりの 「もの」 はすべて 物質 です。 物質はまず 「純物質」 と 「混合物」 に分類されます。
| 区分 | 定義 | 例 |
|---|---|---|
| 純物質 | 1 種類だけの物質でできている | 水 H₂O、 食塩 NaCl、 酸素 O₂、 鉄 Fe、 銅 Cu |
| 混合物 | 2 種類以上の物質が混じっている | 海水 (水 + 食塩 + …)、 空気 (N₂ + O₂ + …)、 牛乳、 石油 |
純物質は 融点 や 沸点 が一定の値を示します。 混合物は融点・沸点が一定でなく、 沸騰 の間に温度が変化します。
| 性質 | 純物質 | 混合物 |
|---|---|---|
| 融点・沸点が一定 | ○ | ✕ |
| 化学式で表せる | ○ | ✕ |
| ろ過・蒸留 で分けられる | ✕ (分けても同じ物質) | ○ |
混合物はさまざまな 分離 操作で純物質に分けられます。 高校化学でよく出る主な方法は次のとおりです。
| 方法 | 原理 | 例 |
|---|---|---|
| ろ過 | 液体と固体のちがい | 泥水から砂を除く |
| 蒸留 | 沸点 のちがい | 海水から真水を取り出す |
| 分留 | 沸点 のちがい (連続的に) | 石油をガソリン・灯油などに分ける |
| 再結晶 | 温度による 溶解度 のちがい | 不純物を含む硝酸カリウムを純粋に |
| 抽出 | 溶媒への溶けやすさのちがい | コーヒー豆からカフェインを取り出す |
| 昇華法 | 昇華 (固体 → 気体) のちがい | ヨウ素 I₂ を砂から取り出す |
| クロマトグラフィー | 吸着のしやすさのちがい | 葉の色素を分ける |
ポイント: 蒸留 と 分留 はどちらも 「沸点のちがい」 が原理ですが、 1 回の加熱で終わるのが 蒸留、 連続的に何段もくりかえして細かく分けるのが 分留 です。
純物質 はさらに 「単体」 と 「化合物」 に分けられます。
| 区分 | 定義 | 例 |
|---|---|---|
| 単体 | 1 種類の 元素 だけでできている | 水素 H₂、 酸素 O₂、 鉄 Fe、 銅 Cu、 ダイヤモンド C |
| 化合物 | 2 種類以上の 元素 でできている | 水 H₂O、 食塩 NaCl、 二酸化炭素 CO₂、 メタン CH₄ |
| 大分類 | 小分類 | 具体例 |
|---|---|---|
| 物質 → 純物質 → 単体 | — | H₂、 O₂、 N₂、 Fe、 Cu、 Al、 C (ダイヤモンド) |
| 物質 → 純物質 → 化合物 | — | H₂O、 NaCl、 CO₂、 NH₃、 CH₄、 C₂H₅OH |
| 物質 → 混合物 | — | 空気、 海水、 牛乳、 ステンレス鋼、 石油 |
元素 とは、 「物質を構成する基本的な成分」 を表す概念です。 現在、 自然に存在する元素は約 90 種類、 人工的に作られたものを含めると 118 種類が知られています。
代表的な 元素 と 元素記号 (一部) を示します。
| 元素 | 記号 | 由来 |
|---|---|---|
| 水素 | H | Hydrogen (水を作るもの) |
| ヘリウム | He | Helium (太陽を意味する Helios) |
| 炭素 | C | Carbon |
| 窒素 | N | Nitrogen |
| 酸素 | O | Oxygen |
| ナトリウム | Na | Natrium (ラテン語) |
| マグネシウム | Mg | Magnesium |
| アルミニウム | Al | Aluminium |
| 硫黄 | S | Sulfur |
| 塩素 | Cl | Chlorine |
| カリウム | K | Kalium (ラテン語) |
| カルシウム | Ca | Calcium |
| 鉄 | Fe | Ferrum (ラテン語) |
| 銅 | Cu | Cuprum (ラテン語) |
| 銀 | Ag | Argentum (ラテン語) |
| 金 | Au | Aurum (ラテン語) |
「元素」 と 「単体」 は中学ではあいまいに使われがちでしたが、 高校化学では厳密に区別します。
| 用語 | 意味 | 文の例 |
|---|---|---|
| 元素 | 物質を構成する基本成分 (概念的) | 「水 H₂O は水素と酸素の 元素 からなる」 |
| 単体 | その元素だけでできた実在の物質 | 「水素ガス H₂ は水素の 単体 である」 |
文を見て判断するコツ:
大事: 「水は水素と酸素でできている」 と言うときの 「水素」 「酸素」 は 元素 を指します。 「水素ガスを集めた」 と言うときの 「水素ガス」 は 単体 (H₂) です。 文脈で使い分けましょう。
ある 物質 にどんな元素が含まれているかを調べる方法として、 高校化学では次の例が出ます。
| 方法 | 確認できる元素 | しくみ |
|---|---|---|
| 炎色反応 | Na (黄)、 K (赤紫)、 Li (赤)、 Ca (橙赤)、 Ba (黄緑)、 Cu (青緑) | 元素ごとに炎の色がちがう |
| 沈殿反応 | Cl⁻ (白沈)、 SO₄²⁻ (白沈)、 Ag⁺ (黒褐色) | 試薬を加えて 沈殿 ができるか |
| 気体 の 捕集 | CO₂ (石灰水を白濁)、 H₂ (爆鳴気)、 O₂ (火を強める) | 中学で学んだ確認法 |
同素体 とは、 「同じ 元素 からなる単体 でありながら、 性質がちがう ものどうし」 を指します。 原子のつながり方や結晶の構造がちがうために、 色・融点・硬さ・電気伝導性 などが大きく異なります。
| 元素 | 同素体の例 | 性質のちがい |
|---|---|---|
| 酸素 O | 酸素 O₂、 オゾン O₃ | O₂ は無色無臭、 O₃ は淡青色・特有のにおい・強い 酸化作用 |
| 炭素 C | ダイヤモンド、 黒鉛 (グラファイト)、 フラーレン (C₆₀)、 カーボンナノチューブ | ダイヤモンドは無色透明・最高の 硬さ・電気 を通さない / 黒鉛は黒・やわらかい・電気 を通す |
| 硫黄 S | 斜方硫黄 S₈、 単斜硫黄 S₈、 ゴム状硫黄 | 結晶の形や 弾性 がちがう |
| リン P | 黄リン (白リン) P₄、 赤リン | 黄リンは自然発火性・有毒、 赤リンは比較的安定・マッチの側薬 |
| 同素体 | 構造 | 色 | 硬さ | 電気 | 用途 |
|---|---|---|---|---|---|
| ダイヤモンド | 正四面体がくりかえす 共有結合の結晶 | 無色 | 最高 | 通さない | 宝石、 切削工具 |
| 黒鉛 | 平面状の層がファンデルワールス力で重なる | 黒 | やわらかい | よく通す | 鉛筆のしん、 電極 |
| フラーレン C₆₀ | サッカーボール型の分子 | 黒 | — | 半導体的 | 研究、 材料開発 |
| カーボンナノチューブ | 黒鉛を筒状に巻いた構造 | 黒 | 非常に強い | 通す | 高強度材料、 半導体 |
ポイント: 「同素体」 は 同じ 元素 の 単体 どうし です。 「水 H₂O と過酸化水素 H₂O₂」 や 「メタン CH₄ とエタン C₂H₆」 は化合物どうしなので同素体ではありません。 必ず 「単体どうし」 という条件を思い出してください。
物理変化 とは、 「物質そのものは変わらず、 形や 状態 (固体・液体・気体) だけが変わる変化」 です。
| 例 | 何が変わるか | 物質は ? |
|---|---|---|
| 氷がとけて水になる | 状態 (固体 → 液体) | H₂O のまま |
| 水が 蒸発 する | 状態 (液体 → 気体) | H₂O のまま |
| 砂糖が水に溶ける | 形 (粒 → 水溶液) | 砂糖と水のまま |
| 鉄を細かく切る | 形 (大きさ) | Fe のまま |
化学変化 (化学反応) とは、 「もとの物質とは別の物質 が生じる変化」 です。 化学反応式 で表せます。
| 例 | 反応式 | 何が起こるか |
|---|---|---|
| 水素が酸素と反応して水ができる | 2H₂ + O₂ → 2H₂O | 別の物質 (水) ができる |
| 鉄が燃えて酸化鉄になる | 4Fe + 3O₂ → 2Fe₂O₃ | 別の物質 (酸化鉄) ができる |
| 炭酸水素ナトリウムが加熱で分解 | 2NaHCO₃ → Na₂CO₃ + H₂O + CO₂ | 3 種類の別の物質ができる |
| 塩酸と水酸化ナトリウムが中和 | HCl + NaOH → NaCl + H₂O | NaCl と H₂O ができる |
| 観点 | 物理変化 | 化学変化 |
|---|---|---|
| 別の物質ができるか | できない | できる |
| 化学式が変わるか | 変わらない | 変わる |
| もとにもどせるか | 多くはもどせる (氷 ↔ 水) | もどしにくい (一般に) |
| 例 | 融解・蒸発・凝固・溶解 | 燃焼・中和・酸化・還元・分解・化合 |
| 名称 | 変化 |
|---|---|
| 融解 | 固体 → 液体 (氷 → 水) |
| 凝固 | 液体 → 固体 (水 → 氷) |
| 蒸発 / 沸騰 | 液体 → 気体 (水 → 水蒸気) |
| 凝縮 | 気体 → 液体 (水蒸気 → 水) |
| 昇華 | 固体 → 気体 (ドライアイス CO₂、 ヨウ素 I₂) |
| 凝華 (析出) | 気体 → 固体 |
大事: 「燃える」 「さびる」 「腐る」 「爆発する」 「色が変わる」 は化学変化のサインです。 一方、 「形が変わる」 「溶ける」 「蒸発する」 「冷える」 は物理変化のことが多いです。
高校化学の 実験 では、 中学と同じ器具に加えて、 高校で新しく出てくる器具があります。
| 器具 | 使い方 |
|---|---|
| ビーカー | 反応を起こす、 物質を溶かす (体積は正確でない) |
| メスシリンダー | 液体の体積を 1 mL 単位ではかる |
| ホールピペット | 一定体積 (10 mL など) を正確にはかる |
| メスフラスコ | 一定体積 (100 mL など) の 標準溶液 を作る |
| ビュレット | 滴定 で液を少しずつ加える |
| こまごめピペット | 少量の液を移す (ゴム球付き) |
| 試験管 | 少量の反応を観察 |
| ガスバーナー | 加熱 |
| 電子天秤 | 質量を 0.01 g 単位ではかる |
化学では SI 単位 を使います。 数が大きいとき・小さいときは 接頭語 を使います。
| 接頭語 | 記号 | 倍率 |
|---|---|---|
| キロ | k | 10³ (1 000) |
| ヘクト | h | 10² (100) |
| (基本) | — | 1 |
| ミリ | m | 10⁻³ (0.001) |
| マイクロ | μ | 10⁻⁶ |
| ナノ | n | 10⁻⁹ |
| ピコ | p | 10⁻¹² |
| 物理量 | 単位 | 例 |
|---|---|---|
| 質量 | g (グラム)、 kg | 1 kg = 10³ g |
| 体積 | L (リットル)、 mL | 1 L = 10³ mL = 10³ cm³ |
| 物質量 | mol (モル) | 第 4 章で学ぶ |
| 温度 | K (ケルビン)、 °C | T [K] = t [°C] + 273 |
| 圧力 | Pa (パスカル) | 1 atm ≒ 1.013 × 10⁵ Pa |
| 濃度 | mol/L | モル濃度 |
実験で得られた数値は 有効数字 を意識して書きます。 たとえば 「2.50 g」 と 「2.5 g」 は同じ値でも 精度がちがう ことを表します。
掛け算・割り算の結果は、 使った数値の中でいちばん少ない桁数 にそろえます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 服装 | 白衣 を着る、 長い髪は結ぶ、 サンダル不可 |
| 目の保護 | 保護メガネ は全員必須 (薬品・破片から目を守る) |
| 手の保護 | 強い 薬品 を扱うときは 手袋 |
| 換気 | ドラフトチャンバー (排気装置) で揮発性の薬品を扱う |
| 食事 | 実験室で飲食禁止、 ピペットを口で吸わない |
| 緊急時 | シャワー・アイウォッシュ・消火器 の位置を把握 |
| 薬品 | 危険性 | 対策 |
|---|---|---|
| 濃硫酸 H₂SO₄ | 強い 脱水性、 高温を発する | 水に少しずつ加える (逆は危険)、 保護メガネ |
| 濃塩酸 HCl | 揮発性、 刺激臭、 強酸 | ドラフト で扱う、 換気 |
| 濃硝酸 HNO₃ | 強酸 + 酸化作用 | ドラフト、 金属と反応して有毒ガス |
| 水酸化ナトリウム NaOH | 強塩基、 皮膚を溶かす | 固体は直接さわらない、 保護メガネ |
| アンモニア NH₃ 水 | 刺激臭、 目にしみる | 換気、 こまごめピペット |
| 有機溶媒 (アセトン・エーテル) | 引火性 | 火気厳禁、 換気 |
| 場面 | 注意 |
|---|---|
| 加熱 | ガスバーナー の元栓 → 空気 → 燃料の順で開ける、 消すときは逆 |
| 試験管加熱 | 口を自分や他人に向けない、 沸騰石 を入れる |
| ガラス破損 | 軍手 で拾う、 直接さわらない |
| 廃棄 | 流しに捨てない、 廃液容器に分別 |
この章で学んだことを確認しましょう。
次の章: 第 2 章では、 原子 の内部構造 (陽子・中性子・電子) と 周期表 を学びます。 中学では 「原子 はそれ以上分けられない」 と学びましたが、 高校化学では原子の中をのぞき、 「電子配置 が元素の性質を決める」 ことを知ります。 周期表がなぜあの形をしているのか、 その答えも見えてきます。