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第 3 章では、 「原子と原子がどう結びつくか」 を学びます。 原子が集まって物質を作るとき、 結びつき方は大きく 3 種類あります。
そして結合の種類がちがうと、 できる 結晶 の性質 (融点・硬さ・電気伝導性など) も大きく異なります。
ポイント: 第 2 章で学んだ 価電子 がこの章の主役です。 価電子を やりとり すれば イオン結合、 共有 すれば 共有結合、 自由に流す と 金属結合 です。
原子が 電子 を失ったり受け取ったりして 電気を帯びた粒子 になったものを イオン と呼びます。 + の電気を帯びたものを 陽イオン (カチオン)、 − の電気を帯びたものを 陰イオン (アニオン) と呼びます。
| 種類 | 例 | 価数 | 電子配置 (希ガスと同じになる) |
|---|---|---|---|
| 陽イオン | Na⁺ | +1 | Ne と同じ (2, 8) |
| 陽イオン | K⁺ | +1 | Ar と同じ (2, 8, 8) |
| 陽イオン | Mg²⁺ | +2 | Ne と同じ |
| 陽イオン | Ca²⁺ | +2 | Ar と同じ |
| 陽イオン | Al³⁺ | +3 | Ne と同じ |
| 陰イオン | F⁻ | −1 | Ne と同じ |
| 陰イオン | Cl⁻ | −1 | Ar と同じ |
| 陰イオン | O²⁻ | −2 | Ne と同じ |
| 陰イオン | S²⁻ | −2 | Ar と同じ |
複数の原子がまとまって 1 つのイオンとなるものを 多原子イオン と呼びます。 高校化学で必ず覚えるべきもの:
| 名前 | 化学式 | 価数 |
|---|---|---|
| アンモニウムイオン | NH₄⁺ | +1 |
| 水酸化物イオン | OH⁻ | −1 |
| 硝酸イオン | NO₃⁻ | −1 |
| 炭酸水素イオン | HCO₃⁻ | −1 |
| 酢酸イオン | CH₃COO⁻ | −1 |
| 塩化物イオン | Cl⁻ | −1 |
| 硫酸イオン | SO₄²⁻ | −2 |
| 炭酸イオン | CO₃²⁻ | −2 |
| リン酸イオン | PO₄³⁻ | −3 |
陽イオン と 陰イオン が 静電気力 (クーロン力) で結びつくのが イオン結合 です。 一般に 金属元素 と 非金属元素 の間でできます。
| 例 | 反応 |
|---|---|
| Na (1 族) + Cl (17 族) | Na → Na⁺ + e⁻、 Cl + e⁻ → Cl⁻、 Na⁺ + Cl⁻ → NaCl |
| Mg (2 族) + 2Cl (17 族) | Mg²⁺ + 2Cl⁻ → MgCl₂ |
| 2Na (1 族) + O (16 族) | 2Na⁺ + O²⁻ → Na₂O |
| Ca (2 族) + O (16 族) | Ca²⁺ + O²⁻ → CaO |
イオン結合 でできた物質は 組成式 で表します (分子 としての単位が存在しないため)。 全体で電気が 中性 になるように、 陽と陰の比を決めます。
| 陽イオン | 陰イオン | 組成式 |
|---|---|---|
| Na⁺ | Cl⁻ | NaCl |
| Na⁺ | SO₄²⁻ | Na₂SO₄ (Na 2 個) |
| Ca²⁺ | OH⁻ | Ca(OH)₂ (OH 2 個) |
| Al³⁺ | SO₄²⁻ | Al₂(SO₄)₃ (3 + 2 の最小公倍数) |
| NH₄⁺ | NO₃⁻ | NH₄NO₃ |
ポイント: 組成式 の書き方: ① 陽イオンを先に、 ② 電荷が中性になる比率 で、 ③ 多原子イオン が 2 個以上必要なときは ( ) でくくって数を添える (例: Ca(OH)₂)。
非金属元素の原子どうしが、 電子を出し合い、 共有して 結びつくのが 共有結合 です。 共有する電子対を 共有電子対 と呼びます。 H₂、 O₂、 N₂、 Cl₂ などの単体や、 H₂O、 CO₂、 NH₃、 CH₄ などの化合物がこれにあたります。
共有結合 を表すときは、 元素記号のまわりに価電子を 「:」 や 「・」 で書く 電子式 と、 共有電子対を 「−」 (棒 1 本で 1 ペア) で書く 構造式 の 2 種類があります。
| 物質 | 化学式 | 構造式 | 共有電子対の数 |
|---|---|---|---|
| 水素 | H₂ | H−H | 1 (単結合) |
| 塩素 | Cl₂ | Cl−Cl | 1 |
| 酸素 | O₂ | O=O | 2 (二重結合) |
| 窒素 | N₂ | N≡N | 3 (三重結合) |
| 水 | H₂O | H−O−H | 2 |
| アンモニア | NH₃ | H−N(−H)−H | 3 |
| メタン | CH₄ | H−C(−H)(−H)−H | 4 |
| 二酸化炭素 | CO₂ | O=C=O | 4 (二重 × 2) |
| 一酸化炭素 | CO | C≡O (1 つは 配位結合) | 3 |
| 種類 | 共有電子対 | 例 |
|---|---|---|
| 単結合 (−) | 1 ペア | H−H、 Cl−Cl、 H−O |
| 二重結合 (=) | 2 ペア | O=O、 O=C=O |
| 三重結合 (≡) | 3 ペア | N≡N、 H−C≡C−H (アセチレン) |
ポイント: N₂ (三重結合) はとても安定で、 空気中に約 78 % 存在するのに反応しにくい理由です。 一方 O₂ や N=O などは反応性があります。
通常の 共有結合 は 「両方の原子が 1 個ずつ電子を出し合う」 ですが、 片方の原子だけが電子対を提供 する結合を 配位結合 と呼びます。 一度結合してしまえば、 通常の共有結合と区別できません。
| 例 | しくみ |
|---|---|
| アンモニウムイオン NH₄⁺ | NH₃ の N が持つ非共有電子対を H⁺ に提供して 4 個目の結合 |
| オキソニウムイオン H₃O⁺ | H₂O の O が H⁺ に電子対を提供 |
| 錯イオン ([Cu(NH₃)₄]²⁺ など) | 配位子 (NH₃ や H₂O) が中心金属イオンに電子対を提供 |
第 2 章で学んだ 電気陰性度 は、 共有結合の中で電子を引き寄せる強さを表す値でした。 結合している 2 つの原子の電気陰性度の差が大きいほど、 共有電子対は電気陰性度の大きい側にかたより、 結合に 極性 が生じます。
| 結合 | 電気陰性度の差 | 極性 |
|---|---|---|
| H−H、 Cl−Cl、 N=N | 0 | なし (無極性) |
| H−Cl | 3.0 − 2.1 = 0.9 | あり (Cl 側が −) |
| H−O | 3.5 − 2.1 = 1.4 | あり (O 側が −) |
| H−N | 3.0 − 2.1 = 0.9 | あり (N 側が −) |
| Na⁺ Cl⁻ | 3.0 − 0.9 = 2.1 | 完全に移動 → イオン結合 |
結合に 極性 があっても、 分子全体としては打ち消し合う ことがあります。 分子全体の形 (立体構造) がカギです。
| 分子 | 結合の極性 | 分子全体の形 | 分子全体の極性 |
|---|---|---|---|
| H₂、 N₂、 O₂、 Cl₂ | なし | 直線 | なし |
| CO₂ (O=C=O) | あり | 直線 (左右対称) | 打ち消す → なし |
| CH₄ | わずか | 正四面体 (上下左右対称) | 打ち消す → なし |
| H₂O | あり | 折れ線 (104.5°) | 打ち消さない → あり (極性分子) |
| NH₃ | あり | 三角すい | あり |
| HCl | あり | 直線 | あり |
大事: 極性分子 (H₂O、 NH₃、 HCl) は極性分子どうしで引き合い、 無極性分子 (O₂、 CO₂、 CH₄) は無極性分子どうしで引き合います。 「似たものどうしはよく溶け合う」 が化学の大原則です。 水 (極性) に油 (CH₄ 系、 無極性) が溶けないのはこのため。
共有結合 は 「分子内の結合」 (強い) ですが、 分子と分子の間にも弱い引力があります。 これを 分子間力 (ファンデルワールス力) と呼びます。
特に、 H が F、 O、 N と結びついた分子 どうしに働く強い引力を 水素結合 と呼びます。 水 H₂O が室温で液体 (CH₄ や H₂S は気体) であるのは、 水素結合のおかげです。
| 分子間の力 | 強さの目安 |
|---|---|
| 共有結合 (内部) | 約 400 kJ/mol |
| 水素結合 | 約 20 kJ/mol |
| ファンデルワールス力 | 約 1 〜 10 kJ/mol |
金属結合 とは、 金属原子が 価電子 を共有し合い、 自由に動く 自由電子 を持つ結合です。 金属イオン (陽イオン) を自由電子が包みこむイメージです。
自由電子 が自由に動けることから、 金属には次のような性質があります。
| 性質 | 理由 |
|---|---|
| 電気伝導性 (電気をよく通す) | 自由電子が電場で流れる |
| 熱伝導性 (熱をよく伝える) | 自由電子が熱を運ぶ |
| 展性 (たたくと広がる) | 結合が 「ずれても切れない」 |
| 延性 (引っ張ると伸びる) | 同上 |
| 金属光沢 | 自由電子が光を反射 |
| 金属 | 用途 | 特徴 |
|---|---|---|
| 鉄 Fe | 鉄道、 建築、 機械 | 安価で強い、 さびやすい |
| 銅 Cu | 電線 | 電気・熱をよく通す |
| アルミニウム Al | 缶、 サッシ、 飛行機 | 軽い、 さびにくい (酸化皮膜) |
| 銀 Ag | 装飾、 反射鏡 | 電気・熱の伝導が最高 |
| 金 Au | 装飾、 電子部品 | さびない、 展性・延性が最大 |
| 水銀 Hg | 体温計 (旧)、 蛍光灯 | 唯一の液体金属 |
物質が固体として 規則正しく並ぶ と 結晶 になります。 結晶は結合の種類で 4 種類に分かれ、 性質が大きく異なります。
| 結晶の種類 | 結合 | 構成粒子 | 例 |
|---|---|---|---|
| イオン結晶 | イオン結合 | 陽イオン + 陰イオン | NaCl、 CaCO₃、 CuSO₄ |
| 分子結晶 | 分子間力 | 分子 | 氷 H₂O、 ドライアイス CO₂、 ヨウ素 I₂ |
| 共有結合の結晶 | 共有結合 | 原子 (網目状) | ダイヤモンド C、 黒鉛 C、 ケイ素 Si、 二酸化ケイ素 SiO₂ |
| 金属結晶 | 金属結合 | 金属イオン + 自由電子 | Fe、 Cu、 Al、 Ag、 Au |
| 性質 | イオン結晶 | 分子結晶 | 共有結合の結晶 | 金属結晶 |
|---|---|---|---|---|
| 融点 | 高い | 低い | 非常に高い | 一般に高い |
| 硬さ | かたいがもろい | やわらかい | 非常にかたい (ダイヤ) | 展性・延性 |
| 電気 | 固体では通さず、 水溶液・融解液 で通す | 通さない | 通さない (黒鉛を除く) | よく通す |
| 水への溶解 | よく溶けるものが多い | 溶けにくい (極性分子は例外) | 溶けない | 溶けない |
| 代表例 | NaCl (融点 801 °C) | 氷 (0 °C)、 ドライアイス (−78 °C 昇華) | ダイヤモンド (3550 °C)、 SiO₂ (1710 °C) | Fe (1538 °C)、 Al (660 °C)、 Hg (−39 °C) |
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 構造 | NaCl は 面心立方格子 に近い規則配列 (Na⁺ と Cl⁻ が交互) |
| 融点が高い理由 | 強い静電気力 (クーロン力) で結合 |
| もろい理由 | 力を加えると同符号のイオンが隣り合い、 反発で割れる |
| 電気を通す条件 | 固体ではイオンが動けず通さない、 水に溶かすか加熱して融解させるとイオンが動いて通る |
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 構造 | 分子がファンデルワールス力や水素結合で並ぶ |
| 融点が低い理由 | 分子間力が弱い |
| 昇華する例 | ドライアイス CO₂、 ヨウ素 I₂、 ナフタレン |
| 電気を通さない理由 | 自由に動く電子やイオンがない |
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 例 | ダイヤモンド C、 黒鉛 C、 ケイ素 Si、 SiO₂、 SiC |
| 融点が非常に高い理由 | 分子の単位でなく、 結晶全体が 1 つの巨大な共有結合網 |
| ダイヤモンドと黒鉛のちがい | 黒鉛は平面内で自由電子が動けるため電気を通す |
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 構造 | 体心立方格子 (Fe、 Na など)、 面心立方格子 (Al、 Cu、 Ag など)、 六方最密構造 (Mg、 Zn など) |
| 電気・熱を通す理由 | 自由電子が流れる |
| 加工できる理由 | 結合がずれても切れず、 たたいて広げることができる |
| 合金 | 異なる金属を混ぜて性質を改良: 鋼 (Fe + C)、 黄銅 (Cu + Zn)、 ジュラルミン (Al + Cu + Mg + Mn) |
物質を与えられたとき、 「どの結合・どの結晶か」 を判断する流れを整理します。
| 構成元素 | 想定結合 | 想定結晶 |
|---|---|---|
| 金属のみ (Fe、 Cu) | 金属結合 | 金属結晶 |
| 金属 + 非金属 (NaCl、 CaO) | イオン結合 | イオン結晶 |
| 非金属のみで 巨大構造 (ダイヤ、 SiO₂) | 共有結合 (分子でなく網) | 共有結合の結晶 |
| 非金属のみで 分子 (H₂O、 CO₂、 I₂) | 共有結合 (分子内) + 分子間力 (分子間) | 分子結晶 |
| 化学式 | 結合と結晶 | 予想される性質 |
|---|---|---|
| KBr | イオン → イオン結晶 | 高融点、 水に溶ける、 電気は水溶液で通す |
| H₂S | 共有 → 分子結晶 | 低融点、 水にわずか溶ける、 電気通さない |
| Si (ケイ素) | 共有結晶 | 非常に高融点、 半導体 |
| Mg | 金属 → 金属結晶 | 銀白色、 熱伝導、 燃えやすい |
| NH₄Cl | イオン (NH₄⁺ と Cl⁻) | 水に溶ける、 加熱で昇華 |
結晶 や 結合 に関する 実験 (NaCl の結晶観察、 銅の 電解析出など) でも第 1 章のルールを守ります。
| 薬品 | 危険性 | 対策 |
|---|---|---|
| Na、 K (アルカリ金属) | 水と激しく反応、 H₂ 発生・発火 | 教師のデモ以外は扱わない、 灯油中保存 |
| 銅 (II) 化合物 (CuSO₄ 等) | 飲み込むと有害 | 触れた手をよく洗う |
| 重金属イオン (Pb²⁺、 Hg²⁺、 Cd²⁺) | 中毒 | 廃液容器へ確実に分別 |
| 金属ナトリウムの廃棄 | 水と反応で発火 | エタノールでゆっくり反応させて処理 |
イオン結晶 を作るときに 強酸・強塩基 を使うことがあります (NaCl を中和で作る場合等)。
次の章: 第 4 章では、 化学計算の中心概念である mol (モル) を学びます。 「何 g の物質には 何個 の原子があるか」 をつなぐ数が アボガドロ数 で、 これが高校化学の計算の大黒柱です。 mol を自在に扱えるようになれば、 化学反応式から 「何 g 反応して何 g できるか」 が計算できます。