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第 2 章では、 中学で学んだ 「原子 はそれ以上分けられない」 を一歩ふみこえ、 「原子の中はどうなっているか」 を学びます。 原子の内部を知ることで、 「なぜ 周期表 はあの形をしているか」 「なぜ Na と K はにた性質を示すか」 という化学の根本的な問いに答えられるようになります。
ポイント: 化学の性質 (反応のしやすさ・イオン の価数・結合 の種類) はほぼすべて 電子のふるまい で決まります。 とくに いちばん外側の 電子 = 価電子 が主役です。
原子はとても小さいもので、 直径はおおよそ 10⁻¹⁰ m (= 0.1 nm) です。 1 円玉に並べると 1 億個で 1 cm 程度です。
| 物 | 大きさの目安 |
|---|---|
| 1 円玉の直径 | 2 × 10⁻² m (2 cm) |
| 髪の毛の太さ | 約 10⁻⁴ m |
| 細菌 | 約 10⁻⁶ m |
| ウイルス | 約 10⁻⁷ m |
| 分子 (水 H₂O) | 約 3 × 10⁻¹⁰ m |
| 原子 | 約 10⁻¹⁰ m |
| 原子核 | 約 10⁻¹⁵ m (原子の 1 万分の 1) |
ポイント: 原子のほとんどの体積は 電子が動くすきま です。 もし原子全体を東京ドームの大きさに例えると、 原子核 はピンポン球 1 個くらいの大きさです。
原子 は中心の 原子核 と、 そのまわりを取り巻く 電子 でできています。 原子核 はさらに 陽子 と 中性子 からなります。
| 構成粒子 | 記号 | 電気 | 質量 (相対値、 陽子 = 1) | 場所 |
|---|---|---|---|---|
| 陽子 | p (proton) | +1 (正電荷) | 1 | 原子核 の中 |
| 中性子 | n (neutron) | 0 (なし) | 1 | 原子核 の中 |
| 電子 | e⁻ (electron) | −1 (負電荷) | 約 1 / 1840 | 原子核 のまわり |
原子が電気的に中性 (電荷 = 0) であるとき、 陽子の数 = 電子の数 です。
| 原子 | 陽子 | 中性子 | 電子 |
|---|---|---|---|
| 水素 ¹H | 1 | 0 | 1 |
| ヘリウム ⁴He | 2 | 2 | 2 |
| 炭素 ¹²C | 6 | 6 | 6 |
| 窒素 ¹⁴N | 7 | 7 | 7 |
| 酸素 ¹⁶O | 8 | 8 | 8 |
| ナトリウム ²³Na | 11 | 12 | 11 |
| 塩素 ³⁵Cl | 17 | 18 | 17 |
| 鉄 ⁵⁶Fe | 26 | 30 | 26 |
| 用語 | 定義 |
|---|---|
| 原子番号 Z | 陽子の数。 元素 の種類を決める |
| 質量数 A | 陽子の数 + 中性子の数 |
| 中性子の数 | A − Z |
原子 を表すとき、 元素記号の左下に 原子番号、 左上に 質量数 を書きます。
| 表記 | 意味 |
|---|---|
| ₁²H や ²H | 質量数 2 の水素 (= 重水素 D) |
| ₆¹²C や ¹²C | 質量数 12 の炭素 |
| ₁₇³⁵Cl | 質量数 35 の塩素 |
周期表 は 原子番号の順 に元素を並べたものです。 1 番が水素 H、 2 番がヘリウム He、 3 番がリチウム Li …… と続きます。
| 番号 | 元素 | 記号 |
|---|---|---|
| 1 | 水素 | H |
| 2 | ヘリウム | He |
| 3 | リチウム | Li |
| 4 | ベリリウム | Be |
| 5 | ホウ素 | B |
| 6 | 炭素 | C |
| 7 | 窒素 | N |
| 8 | 酸素 | O |
| 9 | フッ素 | F |
| 10 | ネオン | Ne |
| 11 | ナトリウム | Na |
| 12 | マグネシウム | Mg |
| 17 | 塩素 | Cl |
| 18 | アルゴン | Ar |
| 20 | カルシウム | Ca |
| 26 | 鉄 | Fe |
| 29 | 銅 | Cu |
| 47 | 銀 | Ag |
| 79 | 金 | Au |
大事: 高校化学では少なくとも 原子番号 1 〜 20 までの元素 を順に言えるようにしましょう。 「水兵リーベぼくの船 …」 などのごろあわせが有名です。
同じ元素 (= 同じ 原子番号) でありながら、 中性子 の数がちがう (= 質量数 がちがう) ものどうしを 同位体 (アイソトープ) と呼びます。
| 元素 | 同位体の例 | 陽子 | 中性子 | 質量数 |
|---|---|---|---|---|
| 水素 | ¹H (軽水素) | 1 | 0 | 1 |
| 水素 | ²H (重水素 D) | 1 | 1 | 2 |
| 水素 | ³H (三重水素 T、 放射性) | 1 | 2 | 3 |
| 炭素 | ¹²C | 6 | 6 | 12 |
| 炭素 | ¹³C | 6 | 7 | 13 |
| 炭素 | ¹⁴C (放射性、 年代測定に使う) | 6 | 8 | 14 |
| 塩素 | ³⁵Cl | 17 | 18 | 35 |
| 塩素 | ³⁷Cl | 17 | 20 | 37 |
同位体 の中には、 原子核 がふあんていで 放射線 を出して別の元素に変わるものがあります。 これを 放射性同位体 (ラジオアイソトープ) と呼びます。
| 同位体 | 半減期 | 用途 |
|---|---|---|
| ¹⁴C | 5730 年 | 化石・遺物の年代測定 |
| ¹³¹I | 約 8 日 | 甲状腺の検査・治療 |
| ⁹⁹ᵐTc | 約 6 時間 | 体内検査 |
| ²³⁵U | 約 7 億年 | 原子力発電 |
ポイント: 同位体 は化学的性質がほぼ同じ (= 反応のしかたが同じ) です。 質量だけがちがうので、 物理的性質 (拡散速度や沸点がわずかに異なる) で分けます。
原子 の質量はあまりにも小さいため、 グラムで表すと不便です。 そこで ¹²C (炭素 12) を 12 とした相対値 で表します。 これを 相対質量 と呼び、 自然界に存在する 同位体 の存在比で加重平均したものを 原子量 と呼びます。
| 元素 | 主な同位体と存在比 | 原子量 |
|---|---|---|
| 水素 | ¹H 99.99 % + ²H 0.01 % | 約 1.0 |
| 炭素 | ¹²C 98.9 % + ¹³C 1.1 % | 約 12.0 |
| 塩素 | ³⁵Cl 75.8 % + ³⁷Cl 24.2 % | 約 35.5 |
| 銅 | ⁶³Cu 69.2 % + ⁶⁵Cu 30.8 % | 約 63.5 |
塩素の計算例: 35 × 0.758 + 37 × 0.242 ≒ 35.5
原子核 のまわりの 電子 は、 きまった 電子殻 に入っています。 内側から順に K 殻、 L 殻、 M 殻、 N 殻 … と名付けられ、 入ることのできる電子の最大数が決まっています。
| 電子殻 | 最大電子数 | 計算 (2n²) |
|---|---|---|
| K 殻 (n = 1) | 2 | 2 × 1² = 2 |
| L 殻 (n = 2) | 8 | 2 × 2² = 8 |
| M 殻 (n = 3) | 18 | 2 × 3² = 18 |
| N 殻 (n = 4) | 32 | 2 × 4² = 32 |
電子は原則として 内側の殻から順に入り、 高校化学では 20 番 (Ca) までは単純に K → L → M → N の順 で考えます (M 殻は 8 個で一旦安定し、 19 番から N 殻に入る) 。
| 原子番号 | 元素 | K | L | M | N | 価電子 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | H | 1 | — | — | — | 1 |
| 2 | He | 2 | — | — | — | 0 (8 でなく 2 で安定) |
| 3 | Li | 2 | 1 | — | — | 1 |
| 4 | Be | 2 | 2 | — | — | 2 |
| 5 | B | 2 | 3 | — | — | 3 |
| 6 | C | 2 | 4 | — | — | 4 |
| 7 | N | 2 | 5 | — | — | 5 |
| 8 | O | 2 | 6 | — | — | 6 |
| 9 | F | 2 | 7 | — | — | 7 |
| 10 | Ne | 2 | 8 | — | — | 0 |
| 11 | Na | 2 | 8 | 1 | — | 1 |
| 12 | Mg | 2 | 8 | 2 | — | 2 |
| 13 | Al | 2 | 8 | 3 | — | 3 |
| 14 | Si | 2 | 8 | 4 | — | 4 |
| 15 | P | 2 | 8 | 5 | — | 5 |
| 16 | S | 2 | 8 | 6 | — | 6 |
| 17 | Cl | 2 | 8 | 7 | — | 7 |
| 18 | Ar | 2 | 8 | 8 | — | 0 |
| 19 | K | 2 | 8 | 8 | 1 | 1 |
| 20 | Ca | 2 | 8 | 8 | 2 | 2 |
いちばん外側の 電子殻 (= 最外殻) に入っている 電子 を 価電子 と呼びます (希ガスは化学反応をほとんどしないので価電子 0)。 価電子 の数が元素の化学的性質を決めます。
| 価電子 | 性質 | 例 |
|---|---|---|
| 1 | +1 価の 陽イオン になりやすい (1 個失う) | Li⁺、 Na⁺、 K⁺ |
| 2 | +2 価の 陽イオン になりやすい (2 個失う) | Mg²⁺、 Ca²⁺ |
| 3 | +3 価の 陽イオン になりやすい | Al³⁺ |
| 6 | −2 価の 陰イオン になりやすい (2 個もらう) | O²⁻、 S²⁻ |
| 7 | −1 価の 陰イオン になりやすい (1 個もらう) | F⁻、 Cl⁻、 Br⁻ |
| 0 (8 個で安定) | 反応しにくい | He、 Ne、 Ar、 Kr (希ガス) |
大事: 元素が 「どんなイオンになるか」 「どんな 結合 を作るか」 はほぼ 価電子の数 で決まります。 周期表で 同じ列 にある元素は価電子の数が同じで、 性質がにています。
He、 Ne、 Ar、 Kr、 Xe、 Rn を 希ガス (貴ガス・18 族元素) と呼びます。 これらは最外殻が 電子 8 個 (He は 2 個) で完全に埋まっていて、 化学的に非常に安定 (反応しにくい) です。
ほかの元素が イオン になったり 共有結合 を作ったりするのは、 「希ガスと同じ電子配置になるため」 と説明できます。 これを オクテット則 (8 個で安定) と呼びます。
周期表 は、 元素を 原子番号 の順に並べて、 性質がにたものどうしが 同じ列 に来るように作られた表です。 1869 年に メンデレーエフ が最初の形を発表しました。
| 族 | 名前 | 主な元素 | 性質 |
|---|---|---|---|
| 1 | アルカリ金属 (H を除く) | Li、 Na、 K、 Rb、 Cs | 価電子 1、 +1 価イオン、 水と激しく反応 |
| 2 | アルカリ土類金属 | Ca、 Sr、 Ba (Be、 Mg は含めない立場が多い) | 価電子 2、 +2 価イオン |
| 17 | ハロゲン | F、 Cl、 Br、 I | 価電子 7、 −1 価イオン、 強い 酸化作用 |
| 18 | 希ガス (貴ガス) | He、 Ne、 Ar、 Kr、 Xe、 Rn | 安定、 化合物をほとんど作らない |
| 区分 | 族 | 性質 |
|---|---|---|
| 典型元素 | 1、 2、 13 〜 18 族 | 価電子が族番号と対応し、 性質の周期性が明確 |
| 遷移元素 | 3 〜 12 族 | 価電子はほぼ 1 〜 2、 酸化数 をいくつも取る、 多くは 有色 |
周期表 を大きく見ると、 左下が 金属、 右上が 非金属 に分かれます。 境目にある B、 Si、 Ge、 As、 Sb、 Te は 半金属 (半導体) と呼ばれ、 シリコン Si は IC チップの主役です。
| 区分 | 性質 |
|---|---|
| 金属 | 電気を通す、 熱を伝える、 光沢、 展性・延性 がある |
| 非金属 | 電気を通さない (一部例外: 黒鉛)、 熱を伝えにくい |
元素を 原子番号 の順に並べると、 性質が 周期的にくりかえしてあらわれる ことを 周期律 と呼びます。 これは 電子配置 (とくに価電子の数) が周期的にくりかえす ことが原因です。
| 物理量 | 周期内 (左 → 右) | 族内 (上 → 下) |
|---|---|---|
| 原子半径 | 小さくなる (核の引力が強まる) | 大きくなる (殻が増える) |
| イオン化エネルギー | 大きくなる (電子を取り除きにくくなる) | 小さくなる |
| 電子親和力 | 大きくなる (電子を受け取りやすくなる) | 小さくなる |
| 電気陰性度 | 大きくなる (Cl > S > P > Si > Al > Mg > Na) | 小さくなる |
| 金属性 | 弱まる | 強まる |
イオン化エネルギー とは、 「気体の原子から電子を 1 個取り除いて 陽イオン にするのに必要なエネルギー」 です。
| 元素 | イオン化エネルギーの大きさ |
|---|---|
| 希ガス (Ne、 Ar) | 非常に大きい (電子を取り除きにくい) |
| アルカリ金属 (Na、 K) | 小さい (電子を取り除きやすい) |
ポイント: Na の 1 番目の電子は K 殻や L 殻ではなく M 殻 に 1 個だけあって、 核から遠いため引力が弱く、 簡単に取れて Na⁺ になります。 これが 1 族 (アルカリ金属) の反応性が高い理由です。
電気陰性度 とは、 「原子が 共有結合 の電子を引き寄せる強さ」 を表す値です (ポーリングの値)。 第 3 章の 極性 で重要になります。
| 元素 | 電気陰性度 |
|---|---|
| F | 4.0 (最大) |
| O | 3.5 |
| N | 3.0 |
| Cl | 3.0 |
| C | 2.5 |
| H | 2.1 |
| Na | 0.9 (小さい) |
周期表 が読めると、 まだ学んでいない反応でも 「だいたいこう反応するだろう」 と予想 できるようになります。
| 元素の組合せ | 予想される反応 / 化合物 |
|---|---|
| 1 族の金属 (Na 等) + 17 族 (Cl 等) | NaCl、 KBr のようなイオン結合 (1 + 1 = 中性) |
| 2 族 (Ca 等) + 17 族 (Cl 等) | CaCl₂、 MgBr₂ (2 + 1 + 1) |
| 2 族 (Ca 等) + 16 族 (O 等) | CaO、 MgS (2 + 2) |
| 13 族 (Al) + 17 族 (Cl 等) | AlCl₃ (3 + 1 × 3) |
| 14 族 (C、 Si) | C₊H₄ や Si₊O₂ など 4 結合 |
| 分かること | 周期表のどこを見る |
|---|---|
| 元素が何価のイオンになるか | 族 (1 族 → +1、 2 族 → +2、 17 族 → −1、 16 族 → −2) |
| 電子配置 | 周期 (n) と族 (価電子) の組合せ |
| 金属か非金属か | 左下か右上か |
| 反応しにくいか | 18 族 (希ガス) はほぼ反応しない |
周期表の元素の中には強い反応性・毒性を持つものが多くあります。 高校化学で直接扱うことは少ないですが、 知識として押さえましょう。
| 元素 | 危険性 | 注意 |
|---|---|---|
| Na、 K (アルカリ金属) | 水と激しく反応し水素 H₂ を発生、 発火・爆発 | 灯油中に保存、 素手でさわらない |
| F₂、 Cl₂ (ハロゲン) | 強い 酸化作用、 有毒なガス | ドラフト で扱う |
| Hg (水銀) | 蒸気が有毒 | こぼしたら直ちに回収 |
| Pb (鉛) | 神経系に影響 | 子どもの誤食注意 |
| 放射性同位体 (²³⁵U、 ¹³¹I) | 放射線 | 高校では直接扱わない |
第 1 章と同じですが、 周期表・電子配置の 実験 (炎色反応等) でも守ること:
次の章: 第 3 章では、 原子どうしがどう結びつくか = 化学結合 を学びます。 イオン結合・共有結合・金属結合 の 3 種類を区別し、 結晶 の性質 (融点・電気伝導性など) と結びつけます。 「電気陰性度」 が結合の 極性 を決めるカギになります。