この章で学ぶこと
第 5 章では地球全体 の課題を概観 しました。 第 6 章では視点 を 日本列島 に絞り、 「わたしたちの暮らす国土はなぜ災害が多いのか」 「そこでどう生き抜くか」 を自然環境と防災の両輪 で考えます。
日本は世界有数の 災害多発国 です。 国土面積 は世界の約 0.25 % にすぎないのに、 マグニチュード 6 以上の地震の約 20 %、 活火山の約 7 % が集中しています。 同時に梅雨・台風・豪雪 といった気象災害も毎年発生します。
- 環太平洋造山帯 と 4 種類のプレート境界 から日本の地殻変動を説明できる
- 地震・津波・火山噴火 のメカニズムと過去の大規模災害を整理する
- 台風・線状降水帯・豪雪 などの気象災害と気候変動の影響 を理解する
- ハザードマップ の読み方と、 自助/共助/公助 の役割 を言える
- 自分の住む地域 のリスクと避難行動を自分ごととして考えられる
章のキーメッセージ: 災害を 「ゼロ」 にはできない。 けれど、 正しく怖がり、 備える ことで被害 を大きく減らせる (減災 の考え方)。
1. 日本列島を形づくるプレートと大地形
富士山 (山梨県・静岡県) — 標高 3776 m、 環太平洋造山帯 の一部で、 火山活動で形成。 日本の自然災害 (噴火・地震) の象徴。
環太平洋造山帯と日本
日本列島は、 太平洋を取り囲むように連なる 環太平洋造山帯 の一部です。 環太平洋造山帯は北アメリカのロッキー山脈・アンデス山脈・日本列島・フィリピン・ニュージーランドを含み、 「環太平洋火山帯 (火のリング)」 とも呼ばれ、 世界の地震・火山活動が集中します。
4 つのプレートのせめぎ合い
日本列島の地下では、 4 枚の プレート が押し合っています。 これほどプレート境界 が集中する場所は世界でも 稀 です。
| プレート | 種類 | 動き |
|---|
| ユーラシアプレート | 大陸 プレート | 西日本の多く |
| 北アメリカプレート | 大陸 プレート | 東日本の多く |
| 太平洋プレート | 海洋 プレート | 西北西方向 へ年約 8 cm 移動 |
| フィリピン海プレート | 海洋 プレート | 北西方向 へ年約 4 cm 移動 |
海洋 プレート (太平洋・フィリピン海) が大陸 プレート (ユーラシア・北アメリカ) の下に 沈み込む ことで、 海溝 (日本海溝・南海トラフ・伊豆小笠原海溝など) が形成 され、 内陸側に火山 ができます。
プレート境界 の 4 種類
地理総合ではプレート境界 を 4 種類で整理します。
| 境界 | しくみ | 例 |
|---|
| 沈み込み 帯 | 海洋 プレートが大陸 プレートの下へ沈む | 日本海溝・南海トラフ |
| 衝突 帯 | 大陸 プレート同士がぶつかる | ヒマラヤ・アルプス |
| 拡大境界 | プレートが引き離される | 大西洋中央海嶺・東アフリカ大地溝帯 |
| ずれ境界 | プレートが横にずれる | サンアンドレアス断層 |
覚え方: 「日本 = 沈み込み帯 の国」。 海溝と火山がセットで生まれるのはここのしくみです。
2. 日本の地形と気候
山地が 7 割
日本は 国土の約 4 分の 3 が山地・丘陵地 で、 平野 は残りの約 4 分の 1 です。 主な平野 (関東平野・濃尾平野・大阪平野など) は河川の下流 に集中し、 そこに大都市が発達 しました。
| 地形区分 | 主な例 | 特徴 |
|---|
| 山地・山脈 | 奥羽山脈・日本アルプス・中国山地 | 国土の約 4 分の 3 |
| 平野 | 関東平野・濃尾平野・石狩平野 | 沖積平野が多く、 人口集中 |
| 盆地 | 山形盆地・甲府盆地・京都盆地 | 寒暖差が大きく、 果樹栽培 に適す |
| 台地 | 関東ローム層・武蔵野台地 | 水が得にくく、 畑や住宅地 |
6 つの気候区分
日本は南北約 3,000 km に細長 く、 山脈 が列島を縦断 するため、 同じ国でも多様 な気候が見られます。 一般に 6 区分 で整理します。
| 気候区 | 主な地域 | 特徴 |
|---|
| 北海道の気候 | 北海道 | 冷帯 (亜寒帯)、 梅雨がない、 冬が長く厳寒 |
| 日本海側の気候 | 北陸・東北日本海側 | 冬に北西 の季節風 → 豪雪 |
| 太平洋側の気候 | 関東・東海・南九州 | 夏に南東 の季節風 → 高温多湿、 冬は乾燥 |
| 中央高地の気候 | 内陸山間部 | 夏涼しい、 冬寒い、 寒暖差大 |
| 瀬戸内の気候 | 山陽・四国北部 | 中国/四国山地に挟はさまれ降水量少 |
| 南西諸島の気候 | 沖縄・奄美 | 亜熱帯、 冬でも温暖、 台風多発 |
季節風と梅雨・台風
日本の気候を決める主役 は 季節風 (モンスーン) と 偏西風 です。 夏は太平洋高気圧からの南東風、 冬はシベリア高気圧からの北西風が卓越 し、 この風が日本海の水蒸気を取り込んで日本海側に豪雪 をもたらします。
6 月 〜 7 月には 梅雨前線、 夏 〜 秋には 台風 が接近 し、 日本の年降水量 (約 1,700 mm) は世界平均 (約 970 mm) の 2 倍近くに達します。
学習メモ: 梅雨 は オホーツク海高気圧と太平洋高気圧のせめぎ合い で停滞前線 が居座る現象。 台風 は 熱帯低気圧 が発達 し最大風速 17.2 m/s 以上 になったものと定義 されます。
3. 地震・津波・火山 — 大地の災害
地震の種類
日本の地震は大きく 2 種類に分けられます。
| 種類 | しくみ | 代表例 |
|---|
| 海溝型地震 (海溝型 地震) | プレート境界 で沈み込みの反動 | 1923 関東大震災・2011 東日本大震災 |
| 内陸型地震 (直下型) | 内陸 の活断層がずれる | 1995 阪神淡路大震災・2016 熊本地震 |
海溝型は マグニチュードが大きく (M8 〜 9 級)、 周期的 (100 〜 200 年) に発生します。 内陸型は 震源 が浅い ためマグニチュードがやや小さくても 震度 が大きく なり、 都市直下 で起きると甚大 な被害 となります。
マグニチュードと震度
| 用語 | 意味 |
|---|
| マグニチュード (M) | 地震そのものの大きさ (1 つの地震に 1 つ) |
| 震度 | 各地点の揺れ の強さ (場所 ごとに違う、 0 〜 7 の 10 段階) |
日本の震度階級 は 0・1・2・3・4・5 弱・5 強・6 弱・6 強・7 の 10 段階 です (5 と 6 が強弱に分かれる)。
津波のしくみ
海底 のプレート境界 が急にずれると、 海水全体 が持ち上げられて 津波 になります。 津波の速さは水深 5,000 m で時速 800 km (ジェット機並み)、 浅瀬 でも時速 30 〜 40 km で、 走って逃げ切れ ません。
重要: 強い揺れ や弱くて長い揺れ を海岸で感じ たら、 警報 を待たず 直ちに高台へ避難 する。 これを 「津波てんでんこ」 と呼ぶ三陸 の教えがあります。
火山と噴火
日本には約 111 の 活火山 があり、 世界の活火山の約 7 % が集中します。 噴火 は 溶岩・火砕流・火山灰・火山弾・噴煙 などをもたらし、 周辺だけでなく航空機・農作物にも広く影響 します。
代表的な噴火:
- 1991 雲仙普賢岳 (火砕流で死者 43 名)
- 2014 御嶽山 (突然 の水蒸気噴火、 死者 58 名)
- 2022 桜島・諏訪之瀬島など継続的噴火
火山は災害をもたらす一方で、 温泉・地熱発電・観光資源・肥沃 な土壌 など多くの恵み ももたらす存在 です。
4. 気象災害 — 台風・豪雨・豪雪・猛暑
台風 と高潮
台風 は 7 〜 10 月に多く、 強い風と雨に加え、 海面 が異常 に上昇 する 高潮 をもたらします。 1959 年の 伊勢湾台風 では高潮で 5,000 名以上が犠牲 になり、 災害対策基本法制定 のきっかけとなりました。
近年は 地球温暖化 により海面水温 が上昇 し、 「スーパー台風」 と呼ば れる風速 67 m/s 級の強大台風 の発生 が懸念 されています。
線状降水帯と集中豪雨
近年急増 しているのが 線状降水帯 です。 同じ場所に次々と積乱雲が発達 し、 数時間 〜 半日にわたり数百 mm の雨が降る現象です。
| 年 | 主な集中豪雨災害 |
|---|
| 2017 | 九州北部豪雨 |
| 2018 | 西日本豪雨 (死者 200 名超) |
| 2019 | 令和元年東日本台風 (台風 19 号) |
| 2020 | 令和 2 年 7 月豪雨 (球磨川氾濫) |
| 2024 | 令和 6 年能登半島豪雨 |
これらの災害は 温暖化による大気中水蒸気量の増加 が一因とされ、 「気候変動適応」 が急務 となっています。
豪雪 と豪雪災害
日本海側は冬に 豪雪 に見舞 われ、 屋根 の雪下ろ し中の転落事故、 雪崩、 立往生など毎年多数の死傷者が出ます。 札幌・新潟・金沢 など 100 万都市クラスで数 m の積雪 があるのは世界的に 珍しい現象です。
猛暑 と熱中症
近年は真夏日 (最高気温 30 ℃ 以上)・猛暑日 (35 ℃ 以上)・熱帯夜 (夜 25 ℃ 以上) が急増 し、 熱中症 による救急搬送 が年数万件規模 に達します。 体育 や部活動での熱中症予防も重要な学校課題です。
5. ハザードマップと防災情報
ハザードマップとは
ハザードマップ は、 過去の災害やシミュレーションに基づき、 想定浸水範囲・土砂災害危険区域・津波浸水想定・避難場所 などを地図にまとめたものです。 市町村が作成し、 ウェブや紙で配布 されます。
国土交通省の 「重ねるハザードマップ」 では、 全国の洪水・土砂・高潮・津波・道路通行規制 を地図上で重ね合わせて確認できます。
警戒レベル
豪雨災害を想定 した 5 段階 の警戒 レベル が用意されています。
| レベル | 内容 | 行動 |
|---|
| 1 | 早期注意情報 | 気象情報に注意 |
| 2 | 大雨注意報・洪水注意報 | 避難行動を確認 |
| 3 | 高齢者等避難 | 高齢者や障害 がある人は避難開始 |
| 4 | 避難指示 | 全員避難 |
| 5 | 緊急安全確保 | すでに災害発生、 命を守る最善行動 |
大事: レベル 4 で全員避難 を完了する。 レベル 5 は 「もう逃げ場がない状態」 であり、 そこに至らせないことが防災の目標です。
緊急地震速報 と J - ALERT
- 緊急地震速報: 強い揺れ が来る数秒 〜 十数秒前にテレビ・スマホで通知。 即座に身を守る行動をとる。
- J - ALERT (全国瞬時警報 システム): 弾道 ミサイル・大規模災害などを自治体経由で一斉配信。
6. 自助・共助・公助と主体的な防災
3 つの 「助」
防災の基本は 自助・共助・公助 (こうじょ) です。
| 種類 | 担い手 | 内容 |
|---|
| 自助 | 自分・家族 | 備蓄・非常持ち出し袋・避難経路確認 |
| 共助 | 近所・町内会・学校・職場 | 安否確認・救助・避難所運営 |
| 公助 | 国・都道府県・市町村・消防・警察・自衛隊 | 救助・物資配布・復旧 |
阪神淡路大震災 (1995) の救出者の約 7 割は 家族 や近隣住民 (自助・共助) によるものであったことが知られています。 公助の到着 を待つだけでは助からない局面があります。
学校・地域 の防災計画
- 学校では 避難訓練・引き渡し訓練・防災教育 を年数回実施
- 地域 では 防災訓練・要援護者リスト・避難行動要支援者計画 を整備
- 企業 では BCP (事業継続計画) で災害後の業務復旧 を計画
復興 と創造的復興
東日本大震災後の復興 では、 元に戻すだけでなく、 高台移転・防潮堤・津波避難 タワー・コンパクトシティ化など、 災害に強いまちづくり を同時に進める 「創造的復興」 が進められています。
7. 章のまとめと振り返り
| 観点 | キーワード |
|---|
| 地殻変動 | 環太平洋造山帯・4 プレート・沈み込み帯・海溝 |
| 大地の災害 | 地震 (海溝型/内陸型)・マグニチュード/震度・津波・火山 |
| 気象災害 | 季節風・梅雨・台風・線状降水帯・豪雪・猛暑 |
| 備え | ハザードマップ・警戒レベル・緊急地震速報・J - ALERT |
| 主体性 | 自助・共助・公助・創造的復興 |
確認クイズ (一問一答セットで演習)
- 日本列島の地下でせめぎ合う 4 つのプレートを全て答えよ。
- 海溝型地震と内陸型地震の違いを説明せよ。
- 警戒レベル 4 で取るべき行動は何か。
- 自助・共助・公助の違いを例をあげて説明せよ。
- 線状降水帯が近年増えているとされる背景を述べよ。
8. 安全と行動の呼びかけ (重要)
⚠️ 必ず自分ごととして取り組もう
- 家族 と 避難場所・避難経路 を確認する (ハザードマップで自宅リスクを知る)
- 非常持ち出し袋 (水 1 人 1 日 3 L × 3 日分・食料・モバイルバッテリー・常備薬・現金・ライト・ホイッスル・防寒具) を用意する
- 家具の固定・ガラス飛散防止 で室内 の危険 を減らす
- 緊急連絡方法 を家族 で共有 (災害用伝言ダイヤル 171・SNS の安否確認)
- 強い揺れ や警報 が出たら ためらわず行動 する
防災は 「特別 な人」 のものではなく、 わたしたち自身の暮らしを守る力 です。 学んだことを必ず家族 と共有し、 今日から 1 つでも備えを始めましょう。
まとめ — 日本の自然環境と防災を 3 行で
- 日本は 環太平洋造山帯 と 環太平洋火山帯 に位置し、 4 枚の プレート がぶつかるため 地震 と 火山 が多い国
- 海溝型地震 と 内陸型地震 による 津波 や、 台風・スーパー台風 の風水害など多様な自然災害が発生する
- ハザードマップ (国の 重ねるハザードマップ が便利) と 緊急地震速報 を活用し、 個人・家庭・地域での 減災 が重要