この章で学ぶこと
第 5 章では、 地球全体が抱える大きな課題 = 環境・人口・資源・エネルギー を学びます。 全てが結び付いており、 1 国では解決できないことが共通点。 「自分 1 人でできること」 と 「国・国際社会でできること」 を区別して考えましょう。
- 地球温暖化 の仕組みと影響、 パリ協定 の内容を説明 できる
- 人口爆発 と 少子高齢化 の違い、 世界と日本の状況 を知る
- 食料自給率 と食料問題、 フードロス を考える
- 化石燃料 と 再生可能エネルギー の比較、 日本のエネルギーミックスを理解 する
- SDGs (持続可能 な開発目標) を自分の行動に結びつける
ポイント: 地球課題は 「先進国と 途上国の立場の違い」 が鍵。 「先進国が過去に出した CO₂ で温暖化が進んだ」 「途上国はこれから経済成長の権利がある」 等、 公平性 (気候正義) を含めて考えましょう。
1. 地球温暖化と気候変動
アマゾン熱帯雨林 (ブラジル) — 「地球の肺」 ともよばれる。 開発と保全のバランスがグローバル課題。 気候変動・生物多様性と直結。
仕組み
地球の大気中の 温室効果ガス (CO₂・メタン CH₄・N₂O・フロン等) が太陽から受けた熱を大気中に 留 めることで、 地表が暖かく保たれる = 温室効果。 産業革命以降の化石燃料大量消費で CO₂ が急増、 結果として 地球平均気温が上昇 = 地球温暖化。
IPCC の警告
気候変動に関する政府間パネル (IPCC) の第 6 次評価報告書 (2021-23) は、 「人為起源の影響 は疑う 余地がない」 と結論。 産業革命 (約 1850 年) から 既 に 約 1.1 ℃ 上昇。 このままでは 21 世紀末に 2.7 〜 3.5 ℃ 上昇 の試算。
影響
| 分野 | 主な影響 |
|---|
| 海面 | 海面上昇 (氷河・氷床融解、 海水の熱膨張)。 21 世紀末までに 0.3 〜 1 m 予測 |
| 異常気象 | 強い台風・豪雨・干 ばつ・熱波の増加・激化 |
| 生態系 | サンゴの 白化、 北極 グマ・ペンギン等の生息地縮小 |
| 農業 | 米・小麦等の 収量減、 病害虫北上、 ワイン産地移動 |
| 健康 | 熱中症増加、 マラリア等熱帯病の拡大 |
| 移動 | 気候難民 (海面上昇で国土失う太平洋島嶼国等) |
国際的取り組み
| 年 | 出来事 |
|---|
| 1992 | 国連気候変動枠組条約 (リオサミット) |
| 1997 | 京都議定書 (先進国のみ 削減義務) |
| 2015 | パリ協定 (全締約国が削減目標提出) |
| 2021 | COP26 グラスゴー、 1.5 ℃ 目標強化 |
| 2023 | COP28 ドバイ、 化石燃料からの 「移行」 を初めて文書化 |
パリ協定 の要点
- 世界平均気温上昇を産業革命前比で 2 ℃ 未満 (理想 1.5 ℃) に抑える
- 全締約国 (途上国含む) が 削減目標 (NDC) を自主提出
- 5 年ごとに 進 捗 をレビュー (グローバルストックテイク)
- 2050 年までの カーボンニュートラル (排出と吸収のバランス) を多数の国が表明
日本も 2050 年カーボンニュートラル、 2030 年度に 2013 年度比 -46 % を表明 (2021 年)。
大事: 「温暖化 = 暑くなるだけ」 ではなく、 異常気象・生態系・食料・健康・移民 まで連鎖するグローバル課題であることを理解しましょう。
2. オゾン層と大気汚染
オゾン層の破壊
成層圏のオゾン (O₃) が太陽の 紫外線 を吸収し地表の生物を守っている。 かつて 冷 媒・スプレー用の フロン がオゾンを分解、 南極上空に オゾンホール が確認された。
→ 1987 年 モントリオール議定書 でフロン全廃へ。 2024 年時点でオゾン層は回復傾向、 21 世紀後半には 1980 年代水準へ回復見込 み。 「国際協力で環境問題を解決できた成功例」 とされる。
大気汚染
| 種類 | 原因 | 影響 |
|---|
| 酸性雨 | 工場・自動車排ガスの SOx・NOx が雨に溶ける | 森林枯損、 湖沼酸性化、 建造物腐食 |
| PM2.5 | 燃 焼・粉 塵、 越境移動 | 呼 吸器・循環器疾患 |
| 光化学スモッグ | NOx と 揮 発性有機化合物に紫外線 | 目や喉の痛み |
| 黄 砂 | 中国・モンゴル内陸 からの 砂 | 健康被害、 視界不良 |
ポイント: 越境大気汚染 は 1 国では解決不可。 東アジアでは日中韓三 国環境大臣会合 (TEMM) で協議が続く。
3. 人口問題
世界人口の推移
- 1800 年: 約 10 億
- 1950 年: 約 25 億
- 2000 年: 約 60 億
- 2022 年: 80 億 突 破
- 2050 年予測: 約 97 億
- ピーク後、 2100 年ごろ約 104 億で安定 (国連中位推計)
人口爆発 と人口転換
途上国では 多産多死 → 多産少死 (人口急増) の段階にある国が多い。 これが 人口爆発。 サブサハラアフリカ・南アジアが中心。
| 段階 | 出生率 | 死亡率 | 人口 |
|---|
| 1. 多産多死 | 高 | 高 | 安定 |
| 2. 多産少死 | 高 | 低 (医療改善) | 急増 |
| 3. 少産少死 | 低 (家族計画) | 低 | 緩やか増加 |
| 4. 少産少死 | 低 | 低 | 減少 (日本・欧州) |
日本と 少子高齢化
- 日本の人口は 2008 年約 1.28 億でピーク → 2025 年約 1.23 億 → 2050 年推計約 1.04 億
- 合計特殊出生率: 2024 年約 1.15 (人口維持には 2.07 必要)
- 65 歳以上比率: 約 29 % (2025)、 2050 年約 38 % 予測 → 超高齢社会
- 課題: 労働力不足、 社会保障費増、 地方過疎化
人口ピラミッド
| 形状 | 段階 | 例 |
|---|
| 富士山型 (底広・上細) | 多産多死 〜 多産少死 | サブサハラ・パキスタン |
| 釣鐘型 | 少産少死安定 | アメリカ・フランス |
| つぼ型 | 少産少死で減少 | 日本・イタリア・韓国 |
大事: 共通テストで 「人口ピラミッドから国を当てる」 問題 が頻出。 形状と経済段階・歴史イベント (戦後ベビーブームの凹凸等) を結び付けて読みましょう。
4. 食料問題
食料不足と過剰が同時に
- 世界で 飢 餓 に苦しむ人約 7.3 億人 (FAO、 2023)。 サブサハラ・南アジアに集中
- 一方先進国では フードロス が巨大。 世界で年間約 13 億トン (生産量の 1/3) が 廃棄
- 日本の食品ロス: 年間約 472 万トン (2022)、 1 人 1 日おにぎり 1 個分相当
食料自給率
カロリーベースで国内生産 ÷ 国内消費。 主要国:
| 国 | 食料自給率 (約) |
|---|
| カナダ | 約 220 % |
| オーストラリア | 約 200 % |
| アメリカ | 約 120 % |
| フランス | 約 130 % |
| ドイツ | 約 80 % |
| 日本 | 約 38 % (2022 年度) |
| 韓国 | 約 45 % |
日本は主食の米は 100 %、 しかし小麦・大豆・飼料・畜産物を大量輸入しているため全体として低い。
フードマイレージ
食料が産地から消費地まで運ばれる 距離 × 量。 日本は世界最大級で、 輸送で大量の CO₂ を排出していることを示す指標。 地産地消 が対策。
ポイント: 食料自給率を高める取組 = 国内農業振興、 飼料自給、 スマート農業、 6 次産業化等。 個人レベルでは 食品ロス削減・地産地消・フェアトレード商品 の選択ができる行動。
5. 資源とエネルギー
化石燃料 (有限資源)
| 燃料 | 主な産出国 | 残りの 寿命 (約) |
|---|
| 石油 | サウジ・アメリカ・ロシア・カナダ・中国 | 約 50 年 |
| 天 然 ガス | アメリカ・ロシア・イラン・カタール | 約 50 年 |
| 石炭 | 中国・インド・インドネシア・米・豪 | 約 130 年 |
| ウラン (核燃料) | カザフ・カナダ・豪 | 約 100 年 |
再生可能エネルギー
| 種類 | 強み | 弱み |
|---|
| 太 陽 光 | どこでも設置可、 価格低下 | 夜・曇で発電不可、 蓄電必要 |
| 風 力 | コスト競争力高、 洋上拡大 | 風が必要、 騒音 |
| 水 力 | 安定、 蓄電効果 (揚水式) | ダム建設で環境影響 |
| 地 熱 | 24 時間安定、 日本は資源大国 | 開発コスト・温泉との調整 |
| バイオマス | 廃材活用で 循環 | 燃焼で CO₂ 排出 (カーボンニュートラルとの整合) |
主要国のエネルギーミックス (発電、 約 2023)
| 国 | 化石燃料 | 原子力 | 再エネ |
|---|
| 日本 | 約 70 % | 約 6 % | 約 24 % |
| ドイツ | 約 45 % | 0 % (脱原発完了 2023) | 約 50 % |
| フランス | 約 8 % | 約 65 % | 約 27 % |
| 中国 | 約 65 % | 約 5 % | 約 30 % |
| アメリカ | 約 60 % | 約 18 % | 約 22 % |
大事: 日本は化石燃料 輸入依存度約 88 % (2023)。 エネルギー安全保障と脱炭素を同時に追求するために、 再エネ + 原 子力 + 省エネ + 水素等多様化を進めている。
6. SDGs と個人でできること
SDGs (持続可能 な開発目標)
2015 年国連サミットで採択。 17 目標 169 ターゲット、 2030 年までの行動計画。
| 番号 | 目標 (略) |
|---|
| 1 | 貧困をなくそう |
| 2 | 飢 餓 をゼロに |
| 3 | 健康と福祉 |
| 4 | 質の高い教育 |
| 5 | ジェンダー平等 |
| 6 | 安全な水とトイレ |
| 7 | エネルギーをみんなに |
| 8 | 働きがいと経済成長 |
| 9 | 産業・技術革新・基盤 |
| 10 | 不平等削減 |
| 11 | 住み続けられるまち |
| 12 | つくる・つかう責任 |
| 13 | 気候変動への対応 |
| 14 | 海の豊かさ |
| 15 | 陸の豊かさ |
| 16 | 平和と公正 |
| 17 | パートナーシップ |
個人でできる環境行動 (具体例)
地球課題は大きすぎて何もできない気がしがちだが、 高校生でもできることは多い。
| 分野 | 個人でできること |
|---|
| 気候 | 公共交通・自転車を使う、 エアコン 28 ℃ 設定、 LED 照明、 不要な電気を消す |
| 食料 | 食べ残しゼロ、 食材を計画的に買う、 地産地消、 フェアトレード商品 |
| 資源 | 3R (Reduce / Reuse / Recycle)、 マイバッグ・マイボトル、 古着 ・ 古本のリユース |
| 水 | シャワー短縮、 歯磨きで蛇口を止める |
| 情報発信 | SNS で信頼できる環境情報をシェア、 デマを拡散しない |
| 学習・参加 | 環境ボランティア、 生徒会での提案、 自治体のパブリックコメント |
ポイント: 「選択肢を知った上で選ぶ」 ことが第一歩。 「なんとなく安い物を買う」 「なんとなく余らせる」 を、 「なぜそう選ぶか を考える」 に変えるだけで大きな違いになります。
7. ふりかえりと安全配慮
学んだこと
この章の 安全配慮 — 個人でできる環境行動
地球環境を守る行動は 「無理なく続ける」 ことがいちばん大切。 過度な 我 慢 や罪悪感では続かない。 自分の生活 ・ 体調 ・ 経済状況に合わせて選びましょう。
- 「100 か 0 か」 で考えない — 完璧なヴィーガンになれなくても、 「週 1 回肉を抜く」 だけでも効果あり
- 正しい情報源 を持つ — 環境省・気象庁・IPCC・国連公式サイト、 信頼できるメディア・専門家
- エコウォッシュ に注意 — 「グリーン」 をうたう商品でも実効性が不明な場合がある。 認証マーク (FSC・MSC・ レインフォレスト・アライアンス・フェアトレード等) を確認
- 災害対策 とセットで考える — 異常気象が増える前提で、 第 2 章で学んだハザードマップ・避難計画を家族で共有
- 学校・地域での対話 — 1 人で抱え込まず、 同じ課題を考える仲間を増やす。 環境部・SDGs クラブ・地域ボランティア
- 将来の進路と結びつける — 再 エネ・気候政策・国際協力等の仕事も増加中。 大学・専門学校での学びの選択肢としても視野に
次の章: 第 6 章では、 視点を日本に戻し、 自然環境と防災 (地震・津波・台風・火山・ハザードマップ) を学びます。 この章で学んだ気候変動が、 日本の自然災害にも直結することを確認 していきましょう。