この章で学ぶこと
第 5 章では 大気 の構造と動きを学びます。 私たちが呼吸する空気は地球を包む 薄い層。 その層は高さで性質が大きく変わり、 地球全体で大きな循環をしています。
- 大気の 4 層構造 (対流圏・成層圏・中間圏・熱圏) を知る
- 各層の 気温 の変化をグラフで理解する
- オゾン層 の役割を知る
- 大気大循環 (ハドレー・フェレル・極循環) をつかむ
- 偏西風 と ジェット気流 が天気とどう関わるかを理解する
- コリオリ力 で風が曲がるしくみを知る
ポイント: 大気の 「質量の 99%」 は地表から 約 30 km までに集中しています。 地球の半径が 6378 km なので、 大気は リンゴの皮より薄い とも言えます。 この薄い層が私たちの命を支えています。
1. 大気の組成と気圧
大気の組成
地表付近の乾燥大気 (水蒸気を除く) の組成:
| 気体 | 割合 |
|---|
| 窒素 (N₂) | 約 78.1% |
| 酸素 (O₂) | 約 20.9% |
| アルゴン (Ar) | 約 0.93% |
| 二酸化炭素 (CO₂) | 約 0.04% (増加傾向) |
| その他 | 微量 |
そのほか、 場所と時期で大きく変動する 「水蒸気」 が 0〜4% 含まれます。
気圧とは
気圧 = 大気の重さによりかかる圧力。 単位は hPa (ヘクトパスカル)。
| 場所 | 気圧 |
|---|
| 海面 (標準) | 1013 hPa = 1 気圧 |
| 富士山山頂 (3776 m) | 約 640 hPa |
| エベレスト山頂 (8848 m) | 約 320 hPa |
| 旅客機飛行中 (10 km) | 約 250 hPa |
ポイント: 気圧は 高さとともに急に下がる。 高度 5500 m で約半分 (500 hPa)、 そこから 5500 m ごとにさらに半分になります。
2. 大気の 4 層構造
地球の大気 (国際宇宙ステーションからの撮影) — 地球の縁に対流圏 (オレンジ)、 成層圏 (青) が層状に重なる様子が見える。 大気の 99 % は地表から約 30 km までに集中、 地球の半径 (6378 km) と比べると 「リンゴの皮より薄い」 とも言われる。
4 層の概要
気温が高さとともに 増えたり減ったり することで、 大気は 4 層に分けられます。
| 層 | 高度 | 気温の変化 | 主な特徴 |
|---|
| 対流圏 | 0〜約 11 km | 高度とともに 下がる (-6.5℃/km) | 気象現象が起きる、 雲や雨 |
| 成層圏 | 11〜50 km | 高度とともに 上がる | オゾン層 がある、 安定 |
| 中間圏 | 50〜80 km | 高度とともに 下がる | 流星が燃える、 夜光雲 |
| 熱圏 | 80〜約 500 km | 高度とともに急に 上がる | オーロラ、 電離層、 国際宇宙ステーション |
対流圏の特徴
- 厚さは 赤道で約 17 km、 極で約 8 km と違う
- 気温は平均 100 m あたり 0.65℃ 下がる (気温減率)
- 上端を 対流圏界面 (圏界面) と呼ぶ
- ほぼ全ての 気象現象 がこの層で起きる (雲・雨・雪・雷)
成層圏とオゾン層
成層圏で気温が上昇するのは、 オゾン (O₃) が 紫外線 を吸収して加熱されるから。
| 用語 | 説明 |
|---|
| オゾン層 | 高度 20〜30 km 付近、 オゾンの濃度が高い層 |
| 役割 | 太陽からの紫外線 (UV-B、 UV-C) を吸収、 生物を守る |
| オゾンホール | フロンなどにより南極上空のオゾンが減少した現象 |
大事: 1980 年代に南極のオゾンホールが発見され、 フロン規制 (モントリオール議定書、 1987 年) が行われました。 今ではゆっくりと回復しており、 「国際協力で解決できた環境問題」 の数少ない例です。
中間圏と熱圏
| 層 | 特徴 |
|---|
| 中間圏 | 気温は高度とともに下がり、 約 -90℃ まで冷える (大気中で最も冷たい)。 流星が燃える |
| 熱圏 | 太陽からのX線・紫外線を吸収して数百〜1500℃ まで加熱。 ただし気体がまばらなので 「熱い」 感覚ではない |
電離層とオーロラ
熱圏には強い紫外線やX線で気体分子が電離した 電離層 があります。 電波を反射するため、 短波通信に利用されます。
オーロラは、 太陽風の荷電粒子が 地球磁場 に沿って高緯度上空に入り、 大気分子とぶつかって光る現象。 北極・南極に近い場所でよく見られます。
3. 大気が動く原因
太陽からの熱の不均一性
地球は球なので、 太陽からの 熱の受け方 が緯度で違います。
| 緯度 | 受ける熱 |
|---|
| 赤道付近 | 太陽がほぼ真上、 単位面積あたりの熱が多い |
| 極付近 | 太陽が低い角度、 同じ熱が広い面積に分散 |
この 不均一 が、 大気と海洋を動かす エネルギー源 です。
コリオリ力
地球が自転しているため、 動く物体は 見かけ上曲がって 進みます。 この 「見かけの力」 が コリオリ力。
| 半球 | 物体が曲がる向き |
|---|
| 北半球 | 進行方向に対して 右 に曲がる |
| 南半球 | 進行方向に対して 左 に曲がる |
コリオリ力は 赤道で 0、 極で最大。 これが、 偏西風や低気圧の渦の向きを決めます。
ポイント: 北半球の低気圧は 「反時計回り」、 高気圧は 「時計回り」 に風が吹くのは、 コリオリ力のせい。 南半球では逆になります。
4. 大気大循環
3 つの循環
地球全体の大気の動き = 大気大循環 は、 各半球で 3 つの循環から成ります。
| 循環 | 緯度 | 動き |
|---|
| ハドレー循環 | 赤道〜30° | 赤道で上昇、 30° で下降 |
| フェレル循環 | 30°〜60° | 中緯度の弱い循環 |
| 極循環 | 60°〜極 | 極で下降、 60° で上昇 |
各循環のしくみ
ハドレー循環:
| 段階 | 場所 | 動き |
|---|
| ① 加熱 | 赤道付近 | 強い太陽熱で空気が上昇 |
| ② 高緯度へ | 上空 | 高い高度を北 (南) へ流れる |
| ③ 下降 | 緯度 30° 付近 | 冷えて下降、 亜熱帯高圧帯 |
| ④ 戻る | 地表 | 貿易風として赤道へ戻る |
地表での風の帯
大気大循環の結果、 地表には緯度ごとに特徴的な風が吹きます。
| 緯度 | 風 | 名前 |
|---|
| 赤道付近 | 弱い上昇気流 | 赤道無風帯 |
| 0°〜30° | 北東 (南東) の風 | 貿易風 |
| 30°〜60° | 西寄りの風 | 偏西風 |
| 60°〜極 | 極からの風 | 極偏東風 |
高圧帯と低圧帯
| 緯度 | 気圧 | 天気の傾向 |
|---|
| 赤道 (0°) | 赤道低圧帯 | 雨が多い (熱帯雨林) |
| 30° | 亜熱帯高圧帯 | 乾燥 (砂漠が集中) |
| 60° | 亜寒帯低圧帯 | 低気圧が通りやすい |
| 極 | 極高圧帯 | 寒くて乾燥 |
ポイント: サハラ砂漠やアラビア砂漠、 オーストラリア中央の砂漠が 緯度 30° 付近 に集中しているのは、 亜熱帯高圧帯の下降気流が原因。 大気大循環の結果として地球上の気候が決まっています。
5. 偏西風とジェット気流
偏西風とは
偏西風 は、 中緯度 (30°〜60°) の上空を 1 年中 西から東へ 吹く強い風。 日本上空にも吹いていて、 天気が西から東へ移る 原因です。
ジェット気流
ジェット気流 は、 偏西風の中でも特に強い流れ。 高度約 10 km、 幅数百 km、 速さ 100〜300 km/h に達します。
| 種類 | 緯度 | 特徴 |
|---|
| 亜熱帯ジェット気流 | 緯度 30° 付近 | 強くて安定 |
| 寒帯前線ジェット気流 | 緯度 50°〜60° 付近 | 蛇行しやすく、 天気を大きく動かす |
偏西風の蛇行と異常気象
偏西風はまっすぐではなく 南北に蛇行 します。 蛇行が大きくなると:
| 現象 | 説明 |
|---|
| ブロッキング高気圧 | 蛇行が動かなくなり、 高気圧が 1 か所に居座る → 猛暑・熱波 |
| 強い寒波 | 北からの寒気が大きく南下 → 大雪 |
| 長雨 | 低気圧が同じ場所を通り続ける |
大事: 近年の 「異常気象」 (猛暑・豪雨・暖冬) は、 偏西風の蛇行が大きくなった結果とも言われています。 気候変動との関係が研究されています。
日本の飛行機とジェット気流
東京 → ロサンゼルスは 追い風 で約 10 時間、 ロサンゼルス → 東京は 向かい風 で約 12 時間かかります。 ジェット気流は 航空 に大きな影響を与えます。
6. ふりかえりと安全配慮
- [ ]大気の 4 層 (対流圏・成層圏・中間圏・熱圏) を気温の変化とセットで言える
- [ ]オゾン層の役割とオゾンホール、 モントリオール議定書を知っている
- [ ]コリオリ力が自転から生まれるしくみと半球で向きが違うことを説明できる
- [ ]大気大循環の 3 循環 (ハドレー・フェレル・極) を言える
- [ ]貿易風・偏西風・極偏東風が緯度ごとに吹くと知っている
- [ ]偏西風とジェット気流が天気を西から東へ動かすことを知っている
- [ ]偏西風の蛇行が異常気象を生むことを知っている
この章の安全配慮
- 高山での 高山病 に注意: 高度が上がると気圧が下がり酸素が薄くなる
- 紫外線対策: オゾン層が守ってくれても、 高緯度や高山では強い → 日焼け止め・サングラス
- 航空機内では気圧が低い環境 (約 0.8 気圧)、 体調不良に注意
- 気象現象 (台風・豪雨・落雷) は 気象庁の警報・注意報 を必ず確認
- 大気汚染 (PM 2.5・黄砂) が多い日はマスク・換気注意
次の章: 第 6 章では 大気の中で起こる気象現象 を詳しく学びます。 雲のでき方、 前線、 低気圧・高気圧、 台風、 そして日本の四季と天気の関係がテーマです。
大気大循環 の立体模式図 — 各半球に ① ハドレー循環 (赤道〜30°、 貿易風)、 ② フェレル循環 (30°〜60°、 偏西風)、 ③ 極循環 (60°〜極、 極偏東風) の 3 つが並ぶ。 30° の下降気流 = 亜熱帯高圧帯 にサハラ砂漠などが集中する理由が一目で分かる。