この章で学ぶこと
第 10 章 (最終章) は 地球 の歴史 と 災害 です。 これまで学んだ知識 を統合し、 「46 億年の物語」 と 「私たちが直面する自然 災害」 を一緒に考えます。
- 地質時代区分 (先カンブリア時代・古生代・中生代・新生代) を理解 する
- 化石 (示準化石・示相化石) で過去を読み解く
- 地球 の 5 大 大量絶滅 を学ぶ
- 気候変動 の歴史 (氷期・間氷期・ミランコビッチサイクル) を知る
- 現代の 地球温暖化 と地球規模環境問題 を押さえる
- 自然災害 (地震・津波・火山・気象・土砂) と 防災 を統合学習
- ハザードマップ と 避難計画 を作れるようになる
ポイント: この章のキーワードは 「地球 は変化し続けている」 と 「災害 を知ることが命を守る」 です。
1. 地質時代区分
4 大区分
| 時代 | 期間 (おおよそ) | 主な出来事 |
|---|
| 先カンブリア時代 | 46 億-5.4 億年前 | 地球誕生、 海 と 大気形成、 原核生物・真核生物 |
| 古生代 | 5.4 億-2.5 億年前 | カンブリア爆発、 魚類・両生類・爬虫類・陸上植物 |
| 中生代 | 2.5 億-6600 万年前 | 恐竜 の時代、 アンモナイト、 被子植物出現 |
| 新生代 | 6600 万年前-現在 | 哺乳類 と 鳥類 の時代、 人類 の出現 |
古生代の 6 紀
| 紀 | 期間 | 出来事 |
|---|
| カンブリア紀 | 5.4-4.9 億年前 | カンブリア爆発、 三葉虫 |
| オルドビス紀 | 4.9-4.4 億年前 | 筆石、 オルドビス紀末大量絶滅 |
| シルル紀 | 4.4-4.2 億年前 | 陸上植物出現、 オゾン層形成進む |
| デボン紀 | 4.2-3.6 億年前 | 魚類 の時代、 デボン紀後期大量絶滅 |
| 石炭紀 | 3.6-3.0 億年前 | 大森林形成 → 石炭、 両生類 |
| ペルム紀 | 3.0-2.5 億年前 | 爬虫類多様化、 ペルム紀末大量絶滅 (史上最大) |
中生代の 3 紀
| 紀 | 期間 | 出来事 |
|---|
| 三畳紀 | 2.5-2.0 億年前 | 恐竜 と 哺乳類 の出現、 三畳紀末大量絶滅 |
| ジュラ紀 | 2.0-1.45 億年前 | 恐竜 と アンモナイト の全盛、 始祖鳥 |
| 白亜紀 | 1.45-0.66 億年前 | 被子植物繁栄、 白亜紀末大量絶滅 (恐竜絶滅) |
新生代の区分
| 紀 / 世 | 期間 | 出来事 |
|---|
| 古第三紀 | 6600 万-2300 万年前 | 哺乳類大型化、 ヒマラヤ 形成開始 |
| 新第三紀 | 2300 万-260 万年前 | 人類 の 祖先分化 |
| 第四紀 更新世 | 260 万-1.2 万年前 | 氷期 と 間氷期 の繰り返し、 ホモ・サピエンス |
| 第四紀 完新世 | 1.2 万年前-現在 | 農耕 の開始、 文明 |
化石の種類
| 種類 | 役割 | 例 |
|---|
| 示準化石 | 時代 を決める (短期間に広範囲 に生息) | 三葉虫 (古生代)、 アンモナイト (中生代)、 ヌンムリテス (新生代古第三紀) |
| 示相化石 | 環境 を知る (限られた環境 に生息) | サンゴ (浅く暖かい海)、 シジミ (淡水-汽水) |
2. 大量絶滅
地球史上、 多数の種が同時 に絶滅する 大量絶滅 が 5 回起きました (= ビッグファイブ)。
| 順 | 時期 | 絶滅種の割合 | 主な原因 と推定 |
|---|
| ① | オルドビス紀末 (4.4 億年前) | 約 85 % | 寒冷化・海退 |
| ② | デボン紀後期 (3.7 億年前) | 約 75 % | 寒冷化・海洋無酸素事変 |
| ③ | ペルム紀末 (2.5 億年前) | 約 95 % | シベリア 洪水玄武岩 噴火・温暖化 |
| ④ | 三畳紀末 (2.0 億年前) | 約 80 % | パンゲア分裂期の 噴火 |
| ⑤ | 白亜紀末 (6600 万年前) | 約 75 % | 小惑星衝突 (ユカタン半島 チクシュルーブ クレーター) |
白亜紀末大量絶滅の詳細
| 証拠 | 内容 |
|---|
| K-Pg境界 の粘土層 | 世界各地に イリジウム 高含有層 (小惑星起源) |
| 衝撃石英 | 衝撃で生じる鉱物 |
| チクシュルーブクレーター | 直径約 180 km、 6600 万年前 |
| 津波堆積物 | 太平洋・カリブ海沿岸 |
小惑星 (直径約 10 km) 衝突 → 大量の塵で太陽光遮断 → 光合成停止 → 食物連鎖崩壊 → 恐竜 など絶滅。 一方哺乳類 と 鳥類 (= 恐竜 の子孫) が生き残り繁栄。
大事: 5 大大量絶滅 の多くは 大規模 噴火 (洪水玄武岩) や 小惑星衝突 による 急激な環境変化 が原因です。 「緩やかな変化 には進化で適応 できても、 急激な変化 には適応が間に合わない」 という 生命 の性質 が浮かび上がります。
3. 気候変動の歴史
地球史の気候変動
| 時期 | 気候 |
|---|
| 先カンブリア時代 | 全球凍結 (スノーボールアース) が数回 |
| 古生代末 (ペルム紀) | 温暖化、 末期に 超大陸 パンゲア |
| 中生代 (白亜紀) | 非常に温暖 (北極に森林) |
| 新生代古第三紀 | 温暖、 その後寒冷化開始 |
| 第四紀 (更新世) | 氷期 と間氷期の繰り返し (10 万年周期) |
| 完新世 (現在) | 安定 した温暖期、 ヒトの 文明誕生 |
ミランコビッチサイクル
氷期 と 間氷期 が繰り返される主因は、 地球の 公転軌道 と 自転軸 の周期的変動 であり、 これを ミランコビッチサイクル と呼びます。
| 要素 | 周期 |
|---|
| 離心率 (公転軌道のつぶれ度) | 約 10 万年 |
| 自転軸 の傾き | 約 4 万年 |
| 歳差運動 (自転軸の首振り) | 約 2 万年 |
これらが重なって太陽 放射 の高緯度 への配分が変わり、 氷期・間氷期 が起きると考えられています。
気候変動の証拠
| 証拠 | 読み取れること |
|---|
| 氷床コア (南極・グリーンランド) | 過去 80 万年の気温・CO₂ 濃度 |
| 海底コア | 有孔虫 の 酸素同位体比 から過去の海水温 |
| 年輪 | 過去数千年の気候 |
| サンゴ・鍾乳石 | 過去の 降水・海水温 |
4. 現代の地球温暖化
地球温暖化の現状
産業革命以降 (1850 年ごろ)、 大気中の 二酸化炭素 濃度 が急激 に増加し、 世界平均気温 が上昇 しています。
| 項目 | 産業革命前 | 現在 (2020 年代) |
|---|
| 大気 CO₂ 濃度 | 約 280 ppm | 約 420 ppm |
| 世界平均気温 | 基準 | + 約 1.2 ℃ |
主な温室効果ガス
| ガス | 主な排出源 |
|---|
| 二酸化炭素 (CO₂) | 化石燃料燃焼、 森林 伐採、 セメント 製造 |
| メタン (CH₄) | 家畜・水田・天然 ガス 漏 れ |
| 一酸化二窒素 (N₂O) | 肥料・工業 |
| フロン類 | 冷媒・エアロゾル (削減中) |
温暖化の影響
| 影響 | 内容 |
|---|
| 海面上昇 | 氷床・氷河 融解、 海水の熱膨張 (1900 年から約 20 cm 上昇) |
| 極端気象 | 豪雨・熱波・干ばつ・強い 台風 の増加 |
| 海洋酸性化 | 海が CO₂ を吸収、 サンゴ や 貝 が影響 |
| 生態系変化 | 種の分布北上、 一部種の絶滅 |
| 食糧生産 | 作物適地移動、 漁獲変動 |
国際的な取組
| 枠組 み | 内容 |
|---|
| 京都議定書 (1997) | 先進国の 排出削減義務 |
| パリ協定 (2015) | 全 196 か国・地域 が参加、 産業革命前比 + 1.5 ℃ 以内を努力目標 |
| カーボンニュートラル | 排出量 - 吸収量 = 0、 日本は 2050 年目標 |
5. 自然災害の統合学習
これまで章ごとに学んできた災害 を、 ここで 統合的 に振り返ります。
地震と津波 (第 2 章関連)
| 災害 | 主な原因 | 備え |
|---|
| 直下型地震 | 活断層 | 家具固定・耐震化・非常持出袋 |
| 海溝型地震 | プレート 沈み込み | 津波 避難・防潮堤 |
| 津波 | 海底地震・海底地すべり | 揺れたら すぐ高台 |
| 液状化 | 砂質地盤 + 地下水 | 地盤調査・地盤改良 |
火山災害 (第 3 章関連)
| 災害 | 内容 |
|---|
| 噴石 | 大きな石の飛来 (御嶽山 2014) |
| 火砕流 | 高温のガスと火砕物が高速流下 (雲仙普賢岳 1991) |
| 溶岩流 | 溶岩 が山麓に流れ下る |
| 火山灰 | 広範囲 に降下、 健康被害・航空障害 |
| 火山ガス | 二酸化硫黄・硫化水素 (草津白根山等) |
気象災害 (第 7 章関連)
| 災害 | 備え |
|---|
| 豪雨・線状降水帯 | ハザードマップ確認、 警報 レベル 4 で避難 |
| 台風・高潮 | 早めの避難、 海岸から離れる |
| 竜巻 | 頑丈な建物内、 1 階の中心部、 窓から離れる |
| 落雷 | 木の下危険、 建物か車内へ |
| 雪害 | 雪崩警戒、 屋根雪下ろしは単独でしない |
土砂災害 (第 4 章関連)
| 種類 | 前兆 |
|---|
| 土石流 | 山鳴り、 河川の急な濁り、 流木 |
| 地すべり | 地面の亀裂、 沢の水位変化 |
| がけ崩れ | 小石の落下、 地面のひび割れ |
6. 防災と減災
防災の 3 段階
| 段階 | 内容 |
|---|
| 事前 (備え) | ハザードマップ確認、 家具固定、 非常持出袋、 家族 避難計画 |
| 発生時 | 命を守る行動 (低く・隠れる・頭を守る) |
| 事後 (復旧) | 安否確認、 ライフライン復旧、 二次災害防止 |
ハザードマップの使い方
| ステップ | 内容 |
|---|
| ① 入手 | 市区町村ホームページ、 国土地理院 重ねるハザードマップ |
| ② 確認 | 自宅・学校・職場の 浸水・土砂・津波・火山 リスク |
| ③ 経路 | 安全な 避難経路 を複数決める |
| ④ 共有 | 家族 と集合場所・連絡手段を決める |
非常持出袋の中身 (例)
| 分類 | 中身 |
|---|
| 水・食料 | 飲料水 (1 人 1 日 3 L)、 非常食 (3 日分) |
| 衛生 | マスク・手指消毒・タオル・トイレパック |
| 情報 | ラジオ・モバイルバッテリー・懐中電灯 |
| 医薬 | 常備薬・救急用品 |
| 個人 | 身分証 コピー・現金・着替 え |
共助と自助
| 概念 | 内容 |
|---|
| 自助 | 自分と 家族 の命を守る (備えと行動) |
| 共助 | 近所・地域 で助け合う (声かけ・救出) |
| 公助 | 消防・警察・自衛隊 など行政の救助 |
大事: 大規模 災害時は 公助 が届くまで数日かかる ことが多く、 最初の 72 時間 は 自助 と共助 が命を救います。 日ごろから近所と顔を知っておきましょう。
7. 地球を守る一員として
私たちにできること
| 分野 | 行動 |
|---|
| 地球温暖化 | 省エネ・再生可能エネルギー利用・食品ロス削減 |
| 防災 | ハザードマップ確認・避難訓練参加・防災用品準備 |
| 生態系保全 | 在来種を守る・外来種を持ち込まない・海洋プラスチック減らす |
| 科学 への関心 | 科学 リテラシー を高める・情報 を鵜呑みにしない |
持続可能な開発目標 (SDGs)
地学 と関連が深い目標は多くあります。
| 目標 | 関連 |
|---|
| 6: 安全な 水 | 水資源・水質 |
| 7: クリーンエネルギー | 再生可能エネルギー |
| 11: 住み続けられるまち | 防災・都市計画 |
| 13: 気候変動対策 | 地球温暖化 |
| 14: 海の豊かさ | 海洋保全 |
| 15: 陸の豊かさ | 森林・生物多様性 |
8. ふりかえり
この章の安全配慮
- ハザードマップ を必ず確認 し、 自宅・学校 のリスクを把握する
- 揺れたら 低く・隠れる・頭を守る (ドロップ・カバー・ホールドオン)
- 津波警報 → すぐ高台へ、 海岸から離れる
- 豪雨・台風 → 警報 レベル 4 で全員避難、 川の様子を見に行かない
- 火山 噴火警戒区域 に立ち入らない、 ヘルメット着用
- 非常持出袋 を 半年ごとに中身点検 (賞味期限等)
- 家族 と 集合場所・連絡手段 を決めておく
9. 高校地学全体のまとめ
第 1-10 章を通して学んだこと:
| 章 | テーマ | 中心概念 |
|---|
| 1 | 地球 の概観 | 形・大きさ・層構造・年齢 |
| 2 | プレートテクトニクス | 地震・海嶺・海溝・活断層 |
| 3 | 火山と岩石 | マグマ・噴火様式・火成岩 |
| 4 | 地表の変化 | 風化・侵食・堆積・地層 |
| 5 | 大気 と放射 | 大気構造・太陽放射・地球放射 |
| 6 | 海洋 | 海流・深層循環・エルニーニョ |
| 7 | 天気 と季節 | 高気圧・低気圧・前線・台風 |
| 8 | 太陽 系 | 太陽・惑星・ケプラーの法則 |
| 9 | 恒星 と 銀河 | HR図・星の一生・ビッグバン |
| 10 | 地球 の歴史 と 災害 | 地質時代・大量絶滅・防災 |
最後に: 地学 は 「地球 を知る学問」 であり、 同時に 「地球 とともに生きる知恵」 です。 岩石 の一つ・空の一雲・夜空の一星から、 46 億年の物語 と 138 億年の宇宙 が見えてきます。 この視座 を持ったまま、 これからの人生を歩んで下さい。 科学 と命と 地球 を守る一員として。
ティラノサウルス・レックス — 白亜紀末 (約 6800-6600 万年前) の北米に生息した最大級の肉食恐竜。 K-Pg境界 の大量絶滅で鳥類以外の恐竜と共に絶滅した。
地質時計 — 地球誕生 (46 億年前) を 12 時、 現在 をふたたび 12 時に置いた 「1 時計 = 46 億年」 の表示。 ヒト (Homo sapiens) の出現は 最後の 0.4 秒、 文明 は 0.005 秒 に過ぎない。 地学 があつかう時間 スケールの巨大 さを一目で体感 できる。