この章で学ぶこと
第 2 章では 地球の中身 を学びます。 直接見ることができない内部を、 地震波と岩石の研究から明らかにしました。
- 地球の 4 層構造 (地殻・マントル・外核・内核) を知る
- 地震波の速さから内部を推定するしくみを理解する
- プレートテクトニクス の基本をつかむ
- マグマがどこでどうできるかを知る
- アイソスタシー (地殻の浮力平衡) を学ぶ
ポイント: 地球の半径は約 6378 km。 人がほった最深の掘削孔 (コラ半島) でも約 12 km。 つまり、 直接見えているのは 地球の 0.2% だけ。 残りは 地震波 と 隕石 の研究から推定しました。
1. 地球内部の 4 層構造
地球内部 の 4 層構造 — 地殻 (Crust)・マントル (Mantle)・外核 (Outer core、 液体)・内核 (Inner core、 固体) という同心円状の層からなる。 中心まで約 6378 km。
4 層の概要
| 層 | 深さ (上端→下端) | 主な物質 | 状態 |
|---|
| 地殻 | 0〜約 30 km (大陸)、 0〜約 7 km (海洋) | 花崗岩 (大陸)、 玄武岩 (海洋) | 固体 |
| マントル | 〜約 2900 km | かんらん岩 | 固体 (但し流れる) |
| 外核 | 〜約 5100 km | 鉄 + ニッケル | 液体 |
| 内核 | 〜約 6378 km (中心) | 鉄 + ニッケル | 固体 |
地殻の 2 種類
| 種類 | 厚さ | 主な岩石 | 密度 |
|---|
| 大陸地殻 | 平均約 35 km (ヒマラヤでは 60 km) | 花崗岩質 | 約 2.7 g/cm³ |
| 海洋地殻 | 平均約 7 km | 玄武岩質 | 約 3.0 g/cm³ |
大陸地殻の方が 厚い が 軽い、 海洋地殻の方が 薄い が 重い という特徴があります。
マントルの構造
マントルは 1 枚ではなく、 上下で区分されます。
| 区分 | 深さ | 特徴 |
|---|
| 上部マントル | 〜約 670 km | かんらん岩、 マグマがここでできる |
| 遷移層 | 410〜660 km 付近 | 圧力で結晶構造が変わる |
| 下部マントル | 〜約 2900 km | より圧力の高い結晶、 ゆっくり対流 |
大事: マントルは 固体 だが 長い時間 (数億年) で見れば流れる。 「氷河や飴がゆっくり変形する」 のと同じで、 マントル対流がプレートを動かす原動力になる。
核の性質
| 区分 | 状態 | 役割 |
|---|
| 外核 | 液体 (鉄 + ニッケル) | 地磁気 を作る (ダイナモ作用) |
| 内核 | 固体 | 圧力が高すぎて液体になれない |
外核が流動しているため、 その中を流れる電流が 地球磁場 を生み出します。 この磁場が、 太陽風から地球を守っています。
2. 地震波から内部を知る
地震波の種類
地震が起きると、 さまざまな波が出ます。 主に実体波と表面波の 2 種あり、 実体波は内部を透過します。
| 波の種類 | 速さ | 性質 | 液体を通るか |
|---|
| P波 (縦波) | 約 5〜14 km/s | 進行方向に押し引き | 通る |
| S波 (横波) | 約 3〜7 km/s | 進行方向に直角に振動 | 通らない |
| 表面波 (レイリー波・ラブ波) | より遅い | 地表を伝う、 被害が大きい | — |
S 波シャドーゾーン
S波は 液体を通れない 性質があります。 大きな地震が起きたとき、 地球中でS波が観測されない領域 (= シャドーゾーン) があることから、 「外核は液体」 と結論されました。
| 震源からの角度 | 観測される波 |
|---|
| 0°〜103° | P波とS波両方 |
| 103°〜143° | P波もS波も観測されず (シャドーゾーン) |
| 143°〜180° | P波のみ (回折して届く)、 S波なし |
不連続面
地震波の速さが急に変わる深さを 不連続面 と呼びます。 物質や状態が変わることを示します。
| 不連続面 | 深さ | 上と下の境界 |
|---|
| モホロビチッチ不連続面 (モホ面) | 大陸 30〜70 km、 海洋約 7 km | 地殻とマントル |
| グーテンベルク不連続面 | 約 2900 km | マントルと外核 |
| レーマン不連続面 | 約 5100 km | 外核と内核 |
ポイント: この 3 つの面は 地震波 の観測から発見されたもので、 直接掘ったわけではありません。 ここが 「地震波が地球のX線」 と呼ばれる理由です。
3. プレートとプレートテクトニクス
リソスフェアとアセノスフェア
マントルの上部と地殻を合わせた 「硬い 1 枚」 を リソスフェア と呼び、 その下の 「少し流れる部分」 を アセノスフェア と呼びます。 この リソスフェア が プレート です。
| 層 | 深さ | 性質 |
|---|
| リソスフェア (= プレート) | 0〜約 100 km | 硬くて動くブロック |
| アセノスフェア | 約 100〜300 km | 流動性が高い、 マグマができる |
地球表面のプレート
地球表面は約 15 枚 のプレートに分かれていて、 それぞれが 年に数 cm〜10 cm 動いています。
主なプレート:
| プレート名 | 主な範囲 |
|---|
| 太平洋プレート | 太平洋の大部分 |
| ユーラシアプレート | ヨーロッパ、 アジア (西部・東部) |
| 北アメリカプレート | 北米、 グリーンランド、 シベリア東端 |
| 南アメリカプレート | 南米 |
| アフリカプレート | アフリカ |
| オーストラリアプレート | オセアニア |
| 南極プレート | 南極 |
| フィリピン海プレート | フィリピン海 |
ポイント: 日本列島は 北アメリカプレート・ユーラシアプレート・太平洋プレート・フィリピン海プレート の 4 枚 がぶつかる場所。 世界有数の 地震と火山の国 である理由がここにある。
プレート境界の 3 種類
| 境界 | 動き | できるもの | 例 |
|---|
| 発散境界 | お互いに離れる | 海嶺、 大陸地溝 | 大西洋中央海嶺、 アフリカ大地溝帯 |
| 収束境界 | お互いにぶつかる | 海溝、 沈み込み帯、 造山帯 | 日本海溝、 ヒマラヤ山脈 |
| トランスフォーム境界 | 横にずれる | 大きな断層 | サンアンドレアス断層 |
収束境界の 2 タイプ
| タイプ | 例 | 特徴 |
|---|
| 海洋プレート vs 大陸プレート | 日本海溝、 南米西岸 | 重い海洋プレートが沈み込む → 海溝と火山 |
| 大陸プレート vs 大陸プレート | ヒマラヤ、 アルプス | お互い軽くて沈み込めず → 巨大な山脈 |
プレートを動かす力
| 駆動力 | しくみ |
|---|
| マントル対流 | 熱い物質が上昇、 冷えたものが下降 |
| スラブプル | 沈み込むプレートが自分の重さで引っぱる |
| リッジプッシュ | 海嶺でできた新しいプレートが押す |
4. マグマの生成
マグマはどこでできるか
マグマは 地殻とマントルの境界付近 でできます。 できる場所と仕組みは 3 つ。
| 場所 | でき方 |
|---|
| 沈み込み帯上のマグマ | 沈む海洋プレートから 水 が出てマントルが部分融解 |
| 海嶺下のマグマ | マントルが上昇して 減圧 で融解 |
| ホットスポット上のマグマ | マントル深部から高温なプルームが上昇 |
ホットスポットとは
ホットスポットはプレート境界と関係なく、 マントル深部からの上昇流 (プルーム) で生まれるマグマの出口。 動かない噴出口の上をプレートが動くことで、 島の列 ができます。
| 例 | 説明 |
|---|
| ハワイ諸島 | 太平洋プレートが北西に動くと、 島が並ぶ |
| イエローストーン | 北米大陸下のホットスポット、 巨大噴火の履歴 |
5. アイソスタシー (浮力平衡)
アイソスタシーの考え方
アイソスタシー は、 「地殻がマントルの上で 氷が海に浮かぶように浮いている」 という考え方です。
| 部位 | 浮かぶ性質 |
|---|
| 厚い大陸地殻 (ヒマラヤ) | 高く突き出すが、 下にも深く沈む (山根) |
| 薄い海洋地殻 | あまり突き出さない |
氷山の例え
| 氷山の例 | 地球の例 |
|---|
| 氷山の 9/10 は海中 | ヒマラヤも 「山根」 が深く沈んでいる |
| 氷が解ければ浮力が減る | 氷河が解けると大地がゆっくり上昇 (後氷期回復) |
後氷期回復
最終氷期 (1 万年前) に北欧や北米を覆っていた 巨大な氷床 が解けた結果、 大地がゆっくり持ち上がり続けています。 スカンジナビア半島は今でも年約 1 cm 上昇中。 アイソスタシーの良い実例です。
6. 地球内部を調べる方法
さまざまな手段
| 方法 | わかること |
|---|
| 地震波トモグラフィー | 地球内部を 「CT スキャン」 のように3D化 |
| 隕石の組成分析 | 太陽系誕生時の物質 = 地球の原料と比較 |
| 高圧実験 (ダイヤモンドアンビル) | 高圧下の岩石を実験室で再現 |
| 掘削 | 海底掘削船 「ちきゅう」 で数 km |
| 地熱流量 | 地球が出す熱から内部の状態を推定 |
探査船 「ちきゅう」
日本の海洋研究開発機構 (JAMSTEC) が運用する掘削船。 海底から数 km 掘り、 マントルへの到達を目指しています。 南海トラフの巨大地震研究にも大きく貢献しています。
7. ふりかえりと安全配慮
この章の安全配慮
- 地震の速報 (P 波を検知して緊急地震速報) の意味を知る → 第 3 章
- プレート境界上に住む人は 地震と火山ハザードマップ を確認する
- 掘削や岩石採集は必ず許可とヘルメットが必要
- マントルや核の高温・高圧環境は 実験室での再現 に特殊な装置が必要、 一般ではできない
次の章: 第 3 章では、 プレートの動きが引き起こす 火山と地震 を学びます。 噴火のタイプ、 マグニチュード、 震度、 津波のしくみを、 防災とセットで学んでいきます。
プレートの世界分布 (2022 年改訂版) — 地球表面は約 15 枚のプレートに分かれ、 年数 cm〜10 cm 動く。 日本列島周辺は 太平洋プレート・フィリピン海プレート・ユーラシアプレート・北アメリカプレート の 4 枚がぶつかる世界有数の変動帯。