この章で学ぶこと
第 3 章では プレートの動きが引き起こす火山と地震 を学びます。 自然災害と直結する章であり、 学ぶことそのものが 防災 になります。
- 火山の噴火 タイプ (盾状火山・成層火山・カルデラ) を知る
- マグマの性質と噴火様式の関係を理解する
- 地震波 (P波・S波・表面波) の性質を復習する
- マグニチュード と 震度 のちがいを区別する
- 津波 のしくみと危険性を知る
- 緊急地震速報 と防災の行動を身につける
大事: 日本は全世界の地震の 約 20%、 活火山の 約 7% が集中する国です。 火山と地震を学ぶことは 生きる力 に直結します。
1. 火山のしくみ
マグマの性質と噴火タイプ
マグマは 「二酸化ケイ素 (SiO₂) の割合」 で性質が大きく変わります。 この割合が高いと ねばり気 が強く、 低いとさらさら流れます。
| マグマの種類 | SiO₂の割合 | ねばり気 | 噴火様式 |
|---|
| 玄武岩質マグマ | 約 45〜52% | 弱い (さらさら) | 穏やかな溶岩流出 |
| 安山岩質マグマ | 約 52〜63% | 中間 | 爆発と流出が混在 |
| 流紋岩質マグマ | 約 63% 以上 | 強い (どろどろ) | 激しい爆発、 火砕流 |
ポイント: ねばり気が強いマグマは ガスが抜けず、 限界を超えると 大爆発 を起こします。 ねばり気が弱いとガスが抜けやすいので 「噴泉のように」 流れ出ます。
火山の形と例
| 火山の形 | マグマの種類 | 例 |
|---|
| 盾状火山 (たてじょう) | 玄武岩質、 さらさら | ハワイのマウナロア、 キラウエア |
| 成層火山 | 安山岩質、 中間 | 富士山、 浅間山、 桜島、 岩手山 |
| 溶岩ドーム | 流紋岩質、 どろどろ | 雲仙普賢岳の平成新山 |
| カルデラ | 巨大噴火後の陥没地形 | 阿蘇カルデラ、 姶良カルデラ |
噴出物の種類
| 種類 | 説明 |
|---|
| 溶岩 | 地表を流れるマグマ |
| 火山砕屑物 (火山灰・軽石・スコリア) | 細かい粒 〜 こぶし大まで |
| 火山ガス | 水蒸気、 CO₂、 二酸化硫黄 (SO₂)、 硫化水素 |
| 火砕流 | 高温のガス・火山灰・軽石が一体となって高速で流下 |
火砕流と火山泥流 (ラハール)
| 現象 | 速さ・温度 | 危険性 |
|---|
| 火砕流 | 時速 100 km 以上、 数百 ℃ | 接近したら助からない、 山麓が一瞬で焼失 |
| ラハール (火山泥流) | 時速数十 km、 岩石と水の混合 | 河川沿いを数十 km 流れ、 集落を押し流す |
大事: 雲仙普賢岳の 1991 年噴火では 火砕流 により多数の死傷者が出ました。 火山噴火の際は必ず 気象庁 の 噴火警戒レベル を確認し、 避難指示に従いましょう。
2. マグマの生成と火成岩
火成岩の分類
マグマが冷え固まってできた岩石を 火成岩 と言います。 「冷える速さ」 と 「SiO₂の割合」 で分類されます。
| 冷え方 | 成因 | 名前 | 結晶の大きさ |
|---|
| 深成岩 | 地下深くでゆっくり冷える | 等粒状組織 | 大きくそろう |
| 火山岩 | 地表近くで急に冷える | 斑状組織 | 大きな斑晶 + 細かい石基 |
| SiO₂の割合 | 火山岩 | 深成岩 |
|---|
| 少ない (約 45〜52%) | 玄武岩 | 斑れい岩 |
| 中間 (約 52〜63%) | 安山岩 | 閃緑岩 |
| 多い (約 63% 〜) | 流紋岩 | 花崗岩 |
主な造岩鉱物
火成岩を作る鉱物 (= 造岩鉱物) は約 7 種類。
| 鉱物 | 色 | 特徴 |
|---|
| 石英 | 無色 | 花崗岩に多い、 ガラス状 |
| 長石 (斜長石・正長石) | 白〜灰 | 最も量が多い |
| 黒雲母 | 黒 | 花崗岩や流紋岩に |
| 角閃石 | 緑黒 | 安山岩に |
| 輝石 | 黒 | 玄武岩に |
| かんらん石 | 緑 | マントルの主鉱物 |
ポイント: 岩石と鉱物は別物。 「岩石」 は鉱物が集まったもの、 「鉱物」 は結晶としての単位。 ごはんが岩石、 米粒が鉱物とイメージしてください。
3. 地震のしくみと地震波
震源と震央
| 用語 | 意味 |
|---|
| 震源 | 地下で地震が発生した点 |
| 震央 | 震源の真上の地表の点 |
| 震源距離 | 観測点から震源までの距離 |
| 震源の深さ | 震央から震源までの深さ |
地震波と大森公式
地震波は P波が先、 S波が後 に到達します。 P波が来てからS波が来るまでの時間を 初期微動継続時間 と呼び、 これで 震源距離 を推定できます。
| 公式 | 内容 |
|---|
| 大森公式 | 震源距離[d] = k × 初期微動継続時間[t] ([k] ≈ 6〜8 km/s) |
初期微動 (P 波による小さなゆれ) と 主要動 (S 波による大きなゆれ) を区別することが重要。
緊急地震速報
気象庁がP波を各地の地震計で検知し、 S波が到達する 数秒〜数十秒前 に警報を出すしくみ。 「P 波と S 波の速さの差」 を使った防災技術です。
| ステップ | 流れ |
|---|
| ① 震源近くでP波を観測 | 地震発生 |
| ② 気象庁が震源とマグニチュードを即推定 | 数秒で計算 |
| ③ S波到達前に警報発信 | テレビ・スマホ・防災行政無線 |
| ④ S波到達、 大きなゆれ | この数秒で安全行動 |
4. マグニチュードと震度
大きさとゆれのちがい
| 用語 | 意味 | 例 |
|---|
| マグニチュード (M) | 地震の エネルギーの大きさ。 1 つの地震に 1 つ | M 9.0 = 東日本大震災 |
| 震度 | ある地点の ゆれの強さ。 場所ごとに異なる | 震度 7、 6 強、 6 弱、 5 強... |
マグニチュードの仕組み
マグニチュードは 対数スケール で表されます。 つまり 「1 大きいとエネルギーが約 32 倍」、 「2 大きいと約 1000 倍」 になります。
| マグニチュード差 | エネルギーの比 |
|---|
| ΔM = 1 | 約 32 倍 |
| ΔM = 2 | 約 1000 倍 |
| ΔM = 3 | 約 32000 倍 |
ポイント: M 7 と M 9 の地震は 約 1000 倍 のエネルギーの差があります。 「M 7 がちょっと大きいだけの M 9」 ではありません。
震度の階級 (気象庁)
気象庁の 震度階級 は 0、 1、 2、 3、 4、 5 弱、 5 強、 6 弱、 6 強、 7 の 10 段階。
| 震度 | ゆれの様子 |
|---|
| 0 | 人は感じない |
| 1〜2 | 静かな室内で気づく程度 |
| 3〜4 | 室内の物がゆれる、 多くの人がゆれを感じる |
| 5 弱・5 強 | 棚の物が落ちる、 ガラスが割れることがある |
| 6 弱・6 強 | 立っているのが困難、 多くの家具が倒れる |
| 7 | 立てない、 多くの建物が倒壊 |
5. 津波のしくみ
津波とは
津波 は、 海底での地震や火山噴火などにより 海底が急に上下する ことで発生する大きな波。 「波」 と言っても普通の風浪とは性質が大きく異なります。
| 性質 | 通常の波 | 津波 |
|---|
| 波長 | 数 m〜100 m | 数十 km〜数百 km |
| 速さ | 時速数十 km | 時速 700 km (深い海)、 50 km (浅瀬) |
| 持続時間 | 数秒 | 数分続く 1 つの波 |
| エネルギー | 表面だけ | 海全体が動く |
津波が大きくなるしくみ
沖で高さ数十 cm しかない津波が、 海岸に近づくと数 m〜10 m 以上になるのはなぜか。
| ステップ | しくみ |
|---|
| ① 沖 (深い海) | 津波は速いが低い |
| ② 浅瀬に近づく | 海底との摩擦で速度が落ちる |
| ③ 後続の波が追いつく | エネルギーが圧縮されて高くなる |
| ④ 海岸に押し寄せる | 数 m〜10 m の高い壁として上陸 |
津波のこわさ
| 特徴 | 説明 |
|---|
| 第 1 波が最大とは限らない | 第 2 波・第 3 波が大きいことが多い |
| 引き波から始まることも | 海が急に引いたら危険サイン |
| 車で逃げられない | 渋滞で逃げ遅れる、 徒歩で高台へ |
| 数十 cm で人は流される | 大人でも 30 cm の津波で立てない |
大事: 津波警報や注意報が出たら、 海岸から離れて高台へ走る。 「まだ大丈夫」 と思っても数分後には致命的になります。 2011年東日本大震災では津波により約 2 万人が犠牲になりました。
6. 防災と安全配慮
地震が起きたらの行動
| 場所 | 行動 |
|---|
| 室内 | 机の下、 落下物から頭を守る |
| キッチン | コンロの火をすぐ消す、 包丁から離れる |
| 通学路 | ブロック塀や看板から離れる |
| 海岸 | すぐ高台へ避難 |
| 山道 | 落石と土砂崩れに注意 |
火山噴火へのそなえ
| ポイント | くわしく |
|---|
| ハザードマップを見る | 火砕流や溶岩流が来る範囲を知る |
| 噴火警戒レベル | 1 (活火山であることに留意) 〜 5 (避難) |
| 火山灰対策 | マスク・ゴーグル・水の確保 |
| 噴石対策 | 山頂付近ではヘルメット |
7. ふりかえり
- [ ]マグマのSiO₂割合と噴火様式の関係を言える
- [ ]盾状火山・成層火山・溶岩ドーム・カルデラの例が言える
- [ ]火砕流とラハールの危険性を説明できる
- [ ]マグニチュードと震度のちがいを説明できる
- [ ]マグニチュードが 対数スケール (1 上で約 32 倍のエネルギー) と知っている
- [ ]緊急地震速報が P波 を使うしくみと知っている
- [ ]津波の速さ・波長・引き波から始まることがあるを知っている
- [ ]震度 5 弱以上の行動を言える
この章の安全配慮
- 学ぶことそのものが防災。 知識が命を守る
- 緊急地震速報が鳴ったら 数秒で安全行動 (机の下、 火を消す)
- 津波警報が出たら 海岸から離れて高台へ徒歩で
- 活火山へ行くときは 噴火警戒レベル を必ず確認、 ヘルメットとマスクを用意
- 公式気象庁・防災科学技術研究所の情報を信頼、 SNS デマに注意
次の章: 第 4 章では、 地表で起こる 風化・侵食・堆積 と、 その結果できる 地層 や 化石 から過去の地球を読み解く方法を学びます。
桜島 (鹿児島) — 現在も活動を続ける日本を代表する活火山。 NASA Earth Observatory が衛星から大規模噴火を撮影。 火山灰は風に乗り数百 km 先まで飛散する。
地震波の地震計記録 — 最初に速い P波 (Primary、 縦波) が到達し、 やや遅れて S波 (Secondary、 横波) が来る。 P 波到着から S 波到着までの時間 = 初期微動継続時間 に 大森公式 を掛けると震源距離がわかる。