この章で学ぶこと
南アメリカ州とオセアニア州は、 1 つの章であつかいますが、 それぞれに大きな個性を持つ地域です。 南アメリカは、 世界最大の熱帯雨林アマゾンと、 南北に走る高い山脈アンデス山脈が主役の大陸。 オセアニアは、 オーストラリアという大陸国家と、 太平洋に散らばる数多くの島々で成り立っています。
両地域に共通するのは、 ヨーロッパからの入植を受け、 もともと暮らしていた 先住民 (南米のインディオ、 オーストラリアのアボリジニ、 ニュージーランドのマオリ) が大きな影響を受けた歴史です。 そして今は、 鉱産資源や農産物で世界とつながり、 アジア・太平洋経済圏の一員として重要な役割を果たしています。
- 南アメリカ州の自然 (アマゾン・アンデス山脈) と気候を知る
- ブラジルのコーヒー・大豆を中心とする農業と、 鉱産資源を理解する
- オーストラリアの牧羊・鉱業・白豪主義から多文化主義への変化を知る
- 太平洋の島嶼国 (ミクロネシア・メラネシア・ポリネシア) の暮らしを知る
- 南米とオセアニアの先住民と、 APECなど経済連携を理解する
ポイント: 「南半球」 「広大な自然」 「先住民と移民」 「資源と一次産業」 の 4 つのキーワードで、 南米とオセアニアは多くの共通点を持ちます。 6 章で学んだ北アメリカ州と比較しながら読むと、 南北アメリカのちがいも見えてきます。
1. 南アメリカ州の自然 — アンデス山脈とアマゾン
アマゾン熱帯雨林 — 世界最大の熱帯雨林。 「地球の肺」 とも。
シドニー・オペラハウス (オーストラリア) — オセアニアの象徴。 ユネスコ世界遺産。
南アメリカ大陸は、 北は赤道をこえて北半球に少しかかり、 南は南緯 55 度ほどまで細長くのびる大陸です。 西側には高い山脈が、 東側には大平原と高原が広がる 「東西で性格がちがう」 大陸です。
西部のアンデス山脈 — 環太平洋造山帯
太平洋沿いを南北に約 7,500 キロメートルにわたり走るのが アンデス山脈 です。 6,000 メートルをこえる山々が連なり、 北アメリカのロッキー山脈と同じく環太平洋造山帯の一部で、 火山や地震が多い地域です。 アンデスの高地では標高 4,000 メートルをこえる場所にも街があり、 ペルーのクスコやボリビアのラパスなどが知られています。
中央から北東 — アマゾンの熱帯雨林
赤道直下を中心に広がるのが、 世界最大の流域面積を持つ アマゾン川 と、 その流域の アマゾン熱帯雨林 です。 流域面積は約 700 万平方キロメートルで、 日本の国土 (約 38 万平方キロメートル) の約 18 倍ほど。 多様な動植物が生息し、 「地球の肺」 と表現されることもあります。
中南部 — パンパとブラジル高原
アマゾンの南には ブラジル高原 が広がり、 さらに南のアルゼンチンには パンパ と呼ばれる温帯草原があります。 パンパは小麦や大豆の栽培、 牛の放牧がさかんで、 アルゼンチン経済を支えています。
気候 — 赤道から寒帯まで
| 地域 | 気候帯 | 特徴 |
|---|
| アマゾン流域 | 熱帯雨林 | 年中高温多雨 |
| ブラジル高原 | サバナ | 雨季・乾季がある |
| アルゼンチンパンパ | 温帯 | 小麦・牛 |
| アンデス高地 | 高山気候 | 標高で気温が変わる |
| パタゴニア (南端) | 寒帯・冷帯 | 強風と氷河 |
大事: 南米の自然は 「西 = アンデス、 北 = アマゾン、 南 = パンパ」 と整理するとわかりやすいです。
2. ブラジルを中心とする南米の産業
南アメリカ州で最大の国が ブラジル です。 面積は約 851 万平方キロメートル (世界第 5 位)、 人口は約 2 億 1,000 万人。 ポルトガル語を話す国として知られます。
コーヒーから大豆へ — 多様化する農業
ブラジルは、 長らく世界最大の コーヒー 生産国として知られてきました。 一つの作物に経済が依存する状態をモノカルチャーと言い、 価格の上下で国の経済が大きくゆれてしまう弱点があります。
近年は 大豆、 さとうきび (バイオエタノールの原料)、 とうもろこし、 オレンジなどへと作物が多様化し、 巨大な農業国へと変身しました。 アマゾン周辺の開発も進み、 大豆や牛の放牧地が広がっています。
鉱産資源 — 鉄鉱石・銅・原油
南米は鉱産資源の宝庫です。 ブラジルの 鉄鉱石 (世界有数の産出)、 チリ・ペルーの 銅、 ベネズエラの原油などが代表的です。 これらは中国・日本などアジアの国々へも大量に輸出されています。
工業化と BRICS
ブラジルは、 自動車・航空機 (エンブラエル社)・鉄鋼などの工業も発展し、 ロシア・インド・中国・南アフリカとともに BRICS と呼ばれる新興経済国の一員となっています。
都市化とスラム
サンパウロやリオデジャネイロなど大都市への人口集中が進み、 都市部には ファベーラ と呼ばれる貧困層が暮らす地区 (スラム) が形成されています。 都市と農村、 富裕層と貧困層の格差が大きいのが課題です。
ポイント: ブラジルは 「コーヒーだけの国」 ではなく、 大豆・鉄鉱石・工業と多角化を進めた結果、 BRICS の一員と呼ばれるほどに経済を成長させました。
3. オセアニア州の自然とオーストラリア
オセアニア州は、 オーストラリア大陸、 ニュージーランド、 そして太平洋に散らばる メラネシア・ミクロネシア・ポリネシア という 3 つの島嶼 (とうしょ) 地域から成り立っています。
オーストラリアの自然
オーストラリアは、 6 大陸の中で最も小さく、 1 つの国で大陸を占める唯一の国です。 面積は約 770 万平方キロメートルで、 日本の約 20 倍。 国土の大部分は内陸の グレートビクトリア砂漠 などの乾燥地で、 人口は沿岸部 (シドニー・メルボルン・ブリスベン・パース) に集中しています。
ニュージーランドの自然
ニュージーランドは、 北島と南島の 2 つの主要な島からなる国。 環太平洋造山帯に属し、 火山と地震が多く、 温暖で湿潤な気候を生かした牧羊・酪農がさかんです。
太平洋の 3 区分
| 区分 | 意味 | おもな国・地域 |
|---|
| メラネシア | 「黒い島々」 | パプアニューギニア・フィジー |
| ミクロネシア | 「小さな島々」 | パラオ・ミクロネシア連邦 |
| ポリネシア | 「多くの島々」 | サモア・トンガ・ハワイ・ニュージーランド |
これらの島々はサンゴ礁や火山で形づくられ、 美しい海と文化で知られますが、 海面上昇の影響を受けやすいことが大きな課題となっています。
大事: オセアニア = 「オーストラリア + ニュージーランド + 太平洋の島々」 という構成をまず押さえることが大切です。
4. オーストラリアの産業と多文化主義
オーストラリアの産業は、 「牧畜・農業 + 鉱業 + サービス業」 という構成が大きな特色です。 人口は約 2,600 万人ほどで、 国としては大きくありませんが、 1 人あたりの産出は高い水準にあります。
牧羊と牧牛
降水量の少ない内陸では 牧羊 ( 羊の飼育) が中心で、 羊毛と羊肉を生産します。 内陸の大牧場を グレートアーテジアン盆地 という地下水が支えています。 沿岸部では牛の放牧がさかんで、 牛肉は日本をはじめアジアに輸出されています。
小麦と鉱業
南西部・南東部では小麦の栽培がさかん。 西部では 鉄鉱石、 東部では 石炭 の産出が多く、 これらの鉱産資源を大量に中国や日本へ輸出しています。 オーストラリアの経済を支える大きな柱が、 この 資源輸出 です。
白豪主義から多文化主義へ
20 世紀中ごろまで、 オーストラリアはヨーロッパ系以外の移民を制限する 白豪主義 という政策をとっていました。 しかし、 1970 年代にこの政策を廃止し、 アジアや太平洋の国々からの移民も受け入れる 多文化主義 に大きく方針を転換しました。 現在、 シドニーやメルボルンには中国系・ベトナム系・インド系などのコミュニティが大きく育っています。
アボリジニとの和解
オーストラリアの先住民を アボリジニ と言います。 ヨーロッパ人の入植後、 土地を奪われ、 子供を強制的に引き離されるなどの厳しい歴史を経験しました。 1990 年代以降、 政府は過去の過ちを公式に謝罪し、 アボリジニの文化と言語を守る取り組みが進められています。 ニュージーランドの先住民 マオリ についても、 同様の和解の動きがあります。
ポイント: オーストラリアが 「ヨーロッパの国」 から 「アジア・太平洋の一員」 へと自分を位置づけ直した歴史は、 国家の大きな方針転換の一例です。
5. アジア太平洋とのつながり — APEC
南アメリカ州とオセアニア州は、 太平洋をはさんでアジアや北米と結ばれ、 経済のつながりが年々強まっています。
APEC (アジア太平洋経済協力)
太平洋を取り囲む国々が経済の自由化と協力を進める枠組みが APEC (Asia-Pacific Economic Cooperation) です。 アジア (日本・中国・韓国・東南アジア)、 北米 (アメリカ・カナダ・メキシコ)、 南米 (チリ・ペルー)、 オセアニア (オーストラリア・ニュージーランド・パプアニューギニア) など 21 の国・地域が参加しています。
中国との結びつき
オーストラリア・ブラジル・チリなどの鉱産資源や農産物は、 中国への輸出が大きな比重を占めています。 中国の経済が上下すると、 これらの国の経済も影響を受ける関係にあります。
日本との関係
日本にとっても、 オーストラリア・ブラジルは鉄鉱石・石炭・大豆などの重要な輸入相手国です。 また、 オーストラリアには多くの日本企業が進出し、 学校で日本語を教える取り組みも行われています。
環境問題と国際協力
アマゾンの森林伐採、 太平洋の島々の海面上昇、 サンゴ礁の白化など、 両地域は地球規模の環境問題と直面しています。 このため、 国際的な協力と持続可能な開発が強く求められています。
大事: 南米・オセアニアは 「遠い地域」 ではなく、 太平洋を通じて日本と直接結ばれている大切なパートナーです。
まとめ — 南米とオセアニアを 3 行で
- 南米はアンデス山脈とアマゾンの大自然、 ブラジルの多角化した農業と鉱業が主役。
- オセアニアはオーストラリアの牧羊・鉱業と、 太平洋の島々の多様な文化が特徴。
- 両地域はAPECなどを通じて、 アジア・北米と結ばれた太平洋経済圏の一員。
安全と学び方の心がけ — 先住民へのリスペクト
南米のインディオ (先住民)、 オーストラリアのアボリジニ、 ニュージーランドのマオリなどの先住民は、 ヨーロッパ人の入植以前からその土地で文化を育み、 自然とともに暮らしてきた人々です。 学習するときに、 つぎの点を心に留めておきましょう。
- 先住民を 「過去の人々」 と思わない。 今も同じ国に暮らし、 文化を受け継いでいる人がいます。
- 「未開」 「遅れている」 といった上下の表現を使わない。 異なる知恵と暮らし方として尊重する。
- 先住民の名前や呼び方は、 当事者が望む呼称 (アボリジニ → アボリジナル・ピープルなど) を大切にする。
- 「自然とともに生きる」 知恵 (持続可能な漁・農・狩りの方法) を学ぶ姿勢をもつ。
- 一次資料 (各国政府の公式情報、 先住民自身の発信) を大切にする。
地理を学ぶことは、 同時に 「ちがう文化をどう尊重するか」 を学ぶことでもあります。 偏見や上下関係ではなく、 対等な文化として学ぶ姿勢を持ちましょう。