この章で学ぶこと
アジア州 は世界最大の州で、 人口約 47 億人 (世界の約 6 割) が暮らします。 中国・インドという 2 つの人口大国 を抱え、 急速 に経済 が成長 している一方、 西アジアの産油国から東南アジアの多民族国家まで多様 なすがたを持ちます。
中学地理では、 アジアを 東アジア・東南アジア・南アジア・中央アジア・西アジア の 5 区分で整理します。
- アジアの 自然環境 (ヒマラヤ山脈・モンスーン) を説明できる
- 米作 が 盛んな理由 と主な産地 を言える
- 中国 の 経済特区 と急成長 のしくみを理解する
- インド の IT 産業 が発達 した理由 を説明できる
- 東南アジア の ASEAN と工業化、 西アジア の 原油 と OPEC の役割 を理解する
ポイント: 「アジア = 日本」 と思いがちだが、 アジアは 48 か国以上 あり、 自然・宗教・経済 ともに多様。 日本はその中の 東アジアの 1 か国 にすぎないことを強く意識 しよう。
1. アジアの自然環境
タージ・マハル (インド) — 17 世紀のイスラム建築。 ヒンドゥー教 とイスラムの文化が混ざるインドを象徴する世界遺産。
アジアは ユーラシア大陸の東半分 を占め、 北はロシアのシベリア、 南はインドネシアの赤道直下まで約 7,000 km にわたります。
主な地形
| 地形 | 特徴 |
|---|
| ヒマラヤ山脈 | 世界最高の山脈、 エベレスト (8,849 m) を含む |
| チベット高原 | 「世界の屋根」、 平均標高 4,500 m |
| ゴビ砂漠・タクラマカン砂漠 | 中国・モンゴルの内陸部 |
| 長江 (チャンチャン)・黄河 (ホワンホー) | 中国の大河、 古代文明 が栄えた |
| ガンジス川・インダス川 | 南アジアの大河、 ヒンドゥー教の聖河 |
| メコン川 | 東南アジアを流れる国際河川 (中国・ラオス・タイ・カンボジア・ベトナム) |
モンスーン (季節風) — アジアの暮らしを決める風
アジアの多くの地域 は、 季節 により風向きが変わる モンスーン (季節風) の影響 を受けます。
| 季節 | 風の向き | 結果 |
|---|
| 夏 | 海 → 大陸 | 大量 の雨 を運ぶ → 米作に適する |
| 冬 | 大陸 → 海 | 乾燥 と寒気 を運ぶ |
夏のモンスーンがもたらす大量 の雨が、 アジアで 米作が盛んな最大の理由 です。 インドのチェラプンジでは年降水量が 1 万 mm を超える年もあり、 世界有数 の多雨地となっています。
大事: モンスーンは恵みであり災いでもある。 大雨 がもたらす洪水 (バングラデシュ・タイなど) は毎年のように起こる。
2. アジアの農業 (米作と多様性)
米作
- 稲 (米) は高温多湿 を好む作物
- アジアは世界の米生産 の約 9 割 を占める
- 主な米産地: 中国 (世界 1 位)・インド (2 位)・インドネシア・バングラデシュ・ベトナム・タイ
- タイ・ベトナムは 米の輸出大国 ( 2 国で世界の輸出 の約半分)
その他の主な作物・農業
| 作物・農業 | 主な産地 |
|---|
| 小麦 | 中国北部・インド北部 (パンジャブ) |
| 茶 | インド (アッサム・ダージリン)・スリランカ・中国 |
| 綿花 | インド・中国・パキスタン |
| 天然ゴム | タイ・インドネシア・マレーシア |
| アブラヤシ (パームオイル) | インドネシア・マレーシア |
| コーヒー | ベトナム (世界 2 位)・インドネシア |
| 遊牧 (羊・ヤク) | モンゴル・チベット |
東南アジアの プランテーション農業 (ヨーロッパ植民地時代につくられた大規模農園) は、 今でも 天然ゴム・パームオイル・コーヒー などの主な供給源です。
米作の工夫
| 地域 | 工夫 |
|---|
| 日本・韓国 | 機械化、 品種改良 (コシヒカリなど) |
| 中国南部・東南アジア | 二期作 (1 年に 2 回米をつくる) |
| インドネシア (バリ島) | 棚田、 山の斜面を段々にした田 |
ポイント: 同じ米作でも国により規模・技術 が大きく違う。 日本は 1 戸当たり約 2 ha、 タイは約 4 ha、 アメリカは約 200 ha と桁違い。
3. 中国の急成長 (経済特区と工業)
中国 (中華人民共和国) は 人口約 14 億人 (世界 1 位タイ、 2023 年にインドに抜かれたと言われる)・面積約 960 万 km² (世界 4 位)・GDP 世界 2 位 の大国です。
1978 年 〜 の 改革開放
1978 年、 中国は 改革開放 政策 を始め、 計画経済 から 市場経済 へ大きく舵を切りました。 沿岸部の 5 都市 (シェンチェン (深セン)・チューハイ・スワトウ・アモイ・ハイナン) を 経済特区 に指定 し、 外国企業 の投資 を受け入れました。
「世界の工場」 から 「世界の市場」 へ
- 1990 〜 2000 年代: 安い労働力で 「世界の工場」 と呼ばれた
- 2010 年代以降: 賃金上昇 と国内消費拡大 で 「世界の市場」 へ
- スマホ・電気自動車 (EV)・太陽光パネルの生産 で世界をリード
中国の課題
| 課題 | 内容 |
|---|
| 沿岸 と内陸 の経済格差 | 上海やシェンチェンと内陸農村 で所得差が大きい |
| 大気汚染 (PM2.5) | 工業 と自動車増加で北京などで深刻化 |
| 少子高齢化 | 一人っ子政策 (1979 〜 2015 年) の影響 で急速 に進む |
| 多民族国家 | ウイグル・チベットなど少数民族 の状況 |
大事: 中国は 漢民族 が約 9 割、 残りは 55 の少数民族。 公用語は中国語 (普通話・北京語系) だが、 各地で方言や民族語が使われる。
4. インドの IT 産業と多様な社会
インドは人口約 14 億人で、 2023 年に中国を抜き 世界 1 位 になったと推計 されています。
IT 産業の急成長
インドは 1990 年代以降、 IT 産業 で世界をリードする国になりました。 中心は南部の バンガロール (現ベンガルール) で、 「インドのシリコンバレー」 と呼ばれます。
IT 産業が発達した理由
| 理由 | 説明 |
|---|
| 英語が話せる人が多い | 旧イギリス植民地、 公用語の 1 つが英語 |
| 数学教育 が強い | 世界的に有名 な数学者・技術者を 輩出 |
| 時差を活用した 24 時間体制 | アメリカが夜の時にインドが昼 → アメリカ企業 の業務を引き継ぐ |
| 賃金 が安い (欧米に比べて) | コールセンター・プログラム開発 の受託 |
多様な社会
- 公用語はヒンディー語と英語 だが、 各州 で 22 の公認言語 が使われる
- ヒンドゥー教 が約 8 割、 イスラム教が約 14 %、 シーク教・キリスト教・仏教 なども
- カースト制度 — 古代 から続く身分制度。 法律では禁止 されたが結婚 や仕事では影響 が残る
インドの産業
- 農業: 米・小麦・茶・綿花・サトウキビ
- 工業: 鉄鋼・自動車 (タタ・マヒンドラ)・医薬品 (ジェネリック医薬品大国)
- IT: ソフトウェア輸出額が世界トップクラス、 ベンガルール・ハイデラバード・チェンナイ
ポイント: インドと中国は 「BRICS」 (ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカの頭文字) と呼ばれる新興経済大国 グループの中心。
5. 東南アジア (ASEAN と工業化)
東南アジアは 11 か国: タイ・ベトナム・インドネシア・フィリピン・マレーシア・シンガポール・ラオス・カンボジア・ミャンマー・ブルネイ・東ティモール。
ASEAN (東南アジア諸国連合)
- 1967 年設立、 現在 10 か国加盟 (東ティモールは加盟申請中)
- 域内関税撤廃・人とモノの自由移動 を進める
- 人口合計約 6.7 億人、 GDP 合計は世界 5 位規模
急速な工業化
東南アジアは安い労働力と整備 された工業団地 (タイのバンコク周辺、 ベトナムのハノイ・ホーチミン周辺) で 「アジアの生産拠点」 に。 日本企業 の工場 も多数進出 (トヨタ・ホンダ・ソニーなど)。
シンガポールの例
シンガポールは 赤道直下の都市国家 (面積約 720 km²、 人口約 580 万人)。 マレー半島南端の立地を活かし、 金融・物流・観光 の国際 ハブ。 1 人当たり GDP は日本を上回る約 7 万ドル。
西アジア (中東) と原油
| 国 | 特徴 |
|---|
| サウジアラビア | 世界最大級の原油産出国、 イスラム教の聖地 メッカ があり |
| イラン | ペルシャ文化の中心、 シーア派イスラム教 |
| アラブ首長国連邦 (UAE) | ドバイ の急成長、 観光と金融 |
| トルコ | アジアとヨーロッパの接点、 イスラム教だが政教分離 |
| イスラエル | ユダヤ教の国、 ハイテク産業 |
OPEC (石油輸出国機構)
1960 年設立、 主な産油国が石油価格 を安定 させる目的のカルテル。 加盟国: サウジアラビア・イラク・イラン・クウェート・UAE・ベネズエラ・ナイジェリアなど。
大事: 「中東 = 紛争」 というイメージが強いが、 平和に暮らす多数 の一般市民 が圧倒的多数。 ニュースで報道 されるのは一部 の地域・出来事に 限られる。
6. アジアの課題とこれから
| 課題 | 内容 |
|---|
| 人口問題 | インド・東南アジアで増加続く一方、 日本・韓国・中国は少子高齢化 |
| 環境問題 | 大気汚染・水質汚染・森林破壊 |
| 経済格差 | 沿岸 の都市と内陸農村 |
| 領土問題 | 南シナ海・東シナ海など |
| エネルギー | 石炭火力から再生可能 エネルギーへの転換 |
それでも、 2050 年には世界の GDP の半分をアジアが占める とも予測 され、 21 世紀 は 「アジアの世紀」 と呼ばれます。
7. ふりかえり
この章の安全配慮 (アジアの多様性を尊重)
- 「アジア = 日本」 「アジア = 中国」 と 特定 の国で代表 させない。 アジアは 48 か国以上あり、 それぞれ 自立した文化と歴史を持つ
- 「中東 = 紛争」 「アフリカ寄りの国 = 貧困」 などのステレオタイプを避ける。 一般市民 の多数 は平和に暮らす
- イスラム教 = 過激 と短絡的に結びつけない (19 億人の圧倒多数 は平和的な信者)
- 中国・インドの急成長 を 「日本の脅威」 と一面的に捉えず、 協力 のパートナー としての 側面 も見る
- 統計やニュースは 複数 の情報源 (NHK・新聞・現地メディアなど) で確かめる
次の章: 第 4 章では ヨーロッパ州 を学びます。 EU という 28 か国 (現在 27) の連合で統合を進めた一方、 ブレグジットなどの課題 も。 「統合」 と 「多様性」 が共存する興味深い州です。