この章で学ぶこと
中学 1 年の地理は、 まず 「わたしたちが暮らす 地球 はどんな形をしていて、 どこになにがあるのか」 を知るところから始まります。
小学 5 年でも国土・気候を学びましたが、 中学では 世界全体 を俯瞰 し、 緯度・経度 を使った 正確な位置表現 や、 GIS という デジタル地図 の考え方を身につけます。
- 6 大陸 と 3 大洋 の名前・位置・特徴 を言える
- 緯度 と 経度 のしくみ、 本初子午線 と 赤道 がどこを通るかを説明できる
- 時差 が生まれる理由 (地球の自転) と計算方法を理解する
- 地図の 3 つの主な図法 (メルカトル図法・モルワイデ図法・正距方位図法) の使い分けが分かる
- GIS (地理情報システム) とは何か、 身近な利用例を挙げられる
ポイント: 中学地理の出発点は 「位置を正確に表す言葉」 を持つこと。 緯度・経度・時差・図法はそのための 「共通の物差し」 です。
1. 地球という星 (大きさ・形・自転公転)
ベハイムの 地球儀 (1492 年製作) — 現存する世界最古の地球儀。 当時まだアメリカ大陸が知られていないため描かれていない。
地球は、 太陽系にある 8 つの惑星 の 1 つで、 表面の約 70 % が海、 約 30 % が陸です。
地球の大きさと形
| 項目 | 数値 |
|---|
| 半径 (赤道) | 約 6,378 km |
| 一周 (赤道) | 約 4 万 km |
| 表面積 | 約 5.1 億 km² |
| 海と陸の比率 | 海約 7 : 陸約 3 |
地球は真円 ではなく、 自転 の遠心力 で赤道部分がわずかにふくらんだ 回転楕円体 (かいてんだえんたい) です。 ただし、 中学段階では 「ほぼ球形」 と覚えておけば十分です。
自転 と公転
| 動き | 周期 | 結果として起こること |
|---|
| 自転 | 約 24 時間で 1 周 | 昼と夜・時差 |
| 公転 (太陽の周り) | 約 365 日で 1 周 | 季節 (春夏秋冬)・気温 の変化 |
地球は地軸 が 約 23.4 度 傾いたまま太陽の周りを回っています。 この傾きがあるからこそ、 北半球と南半球で 季節 が逆 になるのです (日本が夏のときオーストラリアは冬)。
大事: 「時差」 は自転 が原因、 「季節」 は公転 と地軸 の傾きが原因。 混同しやすいので必ず区別 して覚えましょう。
2. 6 大陸と 3 大洋
世界の陸地 は 6 つの大陸 に、 海は 3 つの大洋 に大きく分けられます。
6 大陸 の一覧
| 大陸 | 面積 (約) | 主な特徴 |
|---|
| ユーラシア大陸 | 約 5,500 万 km² | 世界最大、 ヨーロッパ + アジア。 人口も最多 |
| アフリカ大陸 | 約 3,000 万 km² | 第 2 位、 赤道が中央を通る |
| 北アメリカ大陸 | 約 2,400 万 km² | カナダ・アメリカ・メキシコ |
| 南アメリカ大陸 | 約 1,800 万 km² | アンデス山脈・アマゾン川 |
| 南極大陸 | 約 1,400 万 km² | 厚い氷に覆われ、 定住者なし |
| オーストラリア大陸 | 約 770 万 km² | 最小の大陸、 1 国で 1 大陸 |
3 大洋 の一覧
| 大洋 | 面積 (約) | 位置 |
|---|
| 太平洋 | 約 1.66 億 km² | 最大、 アジア・南北アメリカ・オセアニアに囲まれる |
| 大西洋 | 約 0.86 億 km² | 第 2 位、 アメリカとヨーロッパ・アフリカの間 |
| インド洋 | 約 0.73 億 km² | 第 3 位、 アフリカ・アジア・オセアニアの間 |
3 大洋を合わせると地球表面の約 65 % を占めます。 残りの海 (北極海・地中海・カリブ海など) は 「付属海」 と呼ばれます。
6 州の区分
地理では大陸とは別に、 文化・歴史 を加味した 6 つの州 で世界を整理します。 中学地理で中心となる区分です。
| 州 | 含む主な国・地域 |
|---|
| アジア州 | 日本・中国・インド・東南アジア・西アジアなど |
| ヨーロッパ州 | EU 加盟国・イギリス・ロシアの西部など |
| アフリカ州 | エジプト・ナイジェリア・南アフリカなど約 54 か国 |
| 北アメリカ州 | アメリカ合衆国・カナダ・メキシコなど |
| 南アメリカ州 | ブラジル・アルゼンチン・チリ・ペルーなど |
| オセアニア州 | オーストラリア・ニュージーランド・島嶼国 |
ポイント: 「6 大陸」 は自然区分、 「6 州」 は文化・地域区分。 中学では 「6 州」 で世界を学んでいきます (本書の Ch3 〜 Ch7)。
3. 緯度と経度 (位置を正確に言う言葉)
世界のどこかの場所 を 「東京」 「ロンドン」 と名前で呼ぶだけでなく、 数字 で正確に 表すしくみが 緯度と経度 です。
緯度 (北か南か)
- 赤道 (緯度 0 度) を基準 に、 北へ 90 度 (北極)、 南へ 90 度 (南極) を測る
- 北は 「北緯」、 南は 「南緯」 と呼ぶ
- 同じ緯度を結んだ線 = 緯線、 東西に平行
- 例: 東京は北緯約 35 度、 シドニーは南緯約 33 度
経度 (東か西か)
- イギリスの ロンドン (旧グリニッジ天文台) を通る線を 本初子午線 (経度 0 度) とする
- そこから東へ 180 度、 西へ 180 度を測る
- 東は 「東経」、 西は 「西経」 と呼ぶ
- 同じ経度を結んだ線 = 経線、 北極 と南極 を結ぶ
- 例: 東京は東経約 140 度、 ニューヨークは西経約 74 度
緯度・経度で位置を表す
東京 (東京駅) は 「北緯 35.68 度・東経 139.77 度」 と表せます。 これは世界のどこでも一意 に通じる 「世界共通 の住所」 です。 GPS や地図アプリもこの値を使っています。
| 都市 | 緯度・経度 (約) |
|---|
| 東京 | 北緯 35.68 度・東経 139.77 度 |
| ニューヨーク | 北緯 40.71 度・西経 74.01 度 |
| ロンドン | 北緯 51.51 度・経度 0.00 度 |
| シドニー | 南緯 33.87 度・東経 151.21 度 |
| リオデジャネイロ | 南緯 22.91 度・西経 43.17 度 |
大事: 本初子午線 が通る国 = イギリス・フランス・スペイン・アルジェリア・マリ・ブルキナファソ・トーゴ・ガーナ (8 か国)。 また赤道が通る大陸 = アフリカ・南アメリカ (ユーラシアは通らない)。 試験で頻出。
4. 時差 (地球が自転するから)
地球は 24 時間で 1 周 = 360 度回転 します。 つまり 1 時間で 15 度 ずつ動く計算です。 このため、 経度が違う地点では 「今は何時か」 がずれます。 これが 時差 です。
時差の計算
各国は自国の標準を決めるために 標準時 (標準時子午線) を持っています。
- 日本の標準時子午線: 東経 135 度 (兵庫県明石市を通る)
- イギリス: 経度 0 度 (グリニッジ標準時、 GMT)
- 経度差 ÷ 15 = 時差 (時間)
例: 日本 (東経 135 度) とイギリス (経度 0 度) の経度差 = 135 度 → 時差 = 9 時間。 日本の方が太陽が先に昇るので、 日本が 「進んでいる」。 日本が 12 時 (正午) なら、 イギリスは朝 3 時。
日付変更線
太平洋の 経度 180 度 付近 に、 国や島を避けてジグザグに引かれた線が 日付変更線 です。 これを 西から東 へ越えると 1 日戻る、 東から西 へ越えると 1 日進む ルールです。
| 地点 | 標準時子午線 | 日本との時差 |
|---|
| ロンドン | 経度 0 度 | -9 時間 |
| ニューヨーク | 西経 75 度 | -14 時間 |
| ロサンゼルス | 西経 120 度 | -17 時間 |
| シドニー | 東経 150 度 | +1 時間 |
| ペキン | 東経 120 度 | -1 時間 |
ポイント: ロシアやアメリカ・カナダのように国が東西に広い場合は、 国内で 複数 の標準時 を持ちます (アメリカ本土は 4 つ)。 中国は国土が広いのに 標準時を 1 つ に統一 している例外例です。
5. 地図の図法 (球を平面にする工夫)
地球は球なので、 平らな紙に写すと 必ずどこかがゆがみます。 目的 に応じて使い分けるために、 主につぎの 3 つの図法が使われます。
主な 3 つの図法
| 図法 | 特徴 | 主な用途 |
|---|
| メルカトル図法 | 角度 が正しい (経線と緯線が直角)。 高緯度で面積 が誇張される | 航海図・船の進路図 |
| モルワイデ図法 | 面積 が正しい。 形はゆがむ | 分布図 (人口分布・気候区分など) |
| 正距方位図法 | 中心からの 距離と方位 が正しい | 航空図、 緊急時の最短経路表示 |
メルカトル図法の落とし穴
メルカトル図法で世界地図を見ると、 グリーンランドがアフリカぐらい大きく 見えます。 でも実際 の面積 はアフリカの約 1/14 です。 高緯度ほど面積 が誇張 されるためです。
逆に、 赤道直下の アフリカやインドネシア は実際 より小さく感じられます。 「世界を公平に見るためには何図法を使うかを意識 せよ」 と言われます。
正距方位図法 の使いどころ
東京を中心とした正距方位図法を見ると、 「ニューヨークへ飛行機で行く最短経路 は北極上空 を通る」 ことが分かります。 これは 大圏航路 と呼ばれ、 メルカトル図法で直線 を引いたものとは違います。
大事: 「メルカトル = 角度・モルワイデ = 面積・正距方位 = 距離と方位」 とセットで覚える。 試験では 「人口密度を表す地図にふさわしい図法を 1 つ選びなさい」 などの形で出題されます (答えはモルワイデ)。
6. GIS (地理情報システム)
GIS (Geographic Information System、 ジーアイエス) とは、 地図とさまざまなデータ (人口・気温・お店の位置など) を コンピュータ上で重ね合わせて 分析 するしくみです。
身近な GIS の例
| サービス | できること |
|---|
| Google マップ | 地図 + 道路案内 + お店情報 |
| ハザードマップ | 地震・洪水・津波 の危険度 を地図に表示 |
| コンビニの出店計画 | 人口・所得・通行量データを重ねて候補地を探す |
| 農業の精密農業 | 衛星写真 + 土壌 データで肥料 を効率化 |
| 救急車の配置 | 人口・道路状況 から最適配置 を決定 |
GIS の強み
- 重ね合わせ が自由 (例: 「老人人口 + 病院の位置」 で医療不足地域 を可視化)
- 時系列 で変化を見られる (例: 1990 年と 2020 年の人口を比較)
- 一般市民 も国土地理院の 「地理院地図」 で無料利用可能
GIS は防災・まちづくり・農業・物流・観光 など、 あらゆる分野 で活用 され、 今後さらに重要性が高まります。
ポイント: スマホの 「現在地を表示」 機能 は GPS (全地球測位 システム) の信号 を使って緯度・経度を計算し、 GIS の地図上に重ねて表示するしくみ。 緯度・経度と GIS はまさに 1 つの仕組 みで動いています。
7. ふりかえり
この章で学んだことをふりかえりましょう。
この章の安全配慮 (地図や GIS の出典確認)
地図や GIS データを使うときは、 つぎのことに気をつけましょう。
- 地図は 作成者の視点 が入る (中心をどこに置くか、 何を強調 するか)。 「中立な地図は存在 しない」 と知っておく
- インターネット上の地図は 出典 (国土地理院・Google・OpenStreetMap など) を必ず確かめる
- 地図上の国境 は国や立場 により解釈 が 異なる場合がある (例: カシミール地方)。 1 つの地図だけで判断 しない
- ハザードマップは 更新日 を確かめる。 古いデータで安心 しない
次の章: 第 2 章では、 世界の 5 つの気候帯 とそこに暮らす人々の生活 (衣・食・住・宗教) を学びます。 同じ地球にこれほど違う暮らしがあることを知る、 中学地理の醍醐味 (だいごみ) の章です。