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小倉おぐら百人一首ひゃくにんいっしゅ 特集とくしゅう

百人一首ひゃくにんいっしゅ全ぜん100首しゅを読よむ・覚おぼえる

江戸時代えどじだいの絵札えふだといっしょに、100首しゅすべての意味いみと決きまり字じがわかります。かるたの練習れんしゅうもここでできます。

100人にんの歌人かじん
100首しゅ
1字じで取とれる札ふだ
7首しゅ
恋こいの歌うた
43首しゅ

ABOUT

百人一首ひゃくにんいっしゅってなに?

100人にんの歌人かじんの和歌わかを、1人にん1首しゅずつ集あつめたものです。鎌倉時代かまくらじだいの前半ぜんはんに、藤原定家ふじわらのていかが京都きょうとの小倉山おぐらやまの山荘さんそうで選えらんだと伝つたえられ、「小倉おぐら百人一首ひゃくにんいっしゅ」とよばれます。

1番ばんの天智天皇てんじてんのうから100番ばんの順徳院じゅんとくいんまで、おおよそ時代じだいの順じゅんにならんでいます。歌うたはすべて、天皇てんのうの命令めいれいでつくられた和歌集わかしゅう(勅撰集ちょくせんしゅう)から選えらばれています。

学校がっこうでは小学校しょうがっこう3・4年生ねんせいで「文語調ぶんごちょうの短歌たんかを音読おんどく・暗唱あんしょうする」学習がくしゅうが、中学校ちゅうがっこうで古典こてんの入門にゅうもんがあり、百人一首ひゃくにんいっしゅはその練習れんしゅうにちょうどよい歌うたの集あつまりです。

どんな歌うたが多おおい?

  • 恋43
  • その他20
  • 秋16
  • 春6
  • 冬6
  • 旅・別れ5
  • 夏4

恋こいの歌うたがおよそ半分はんぶん。季節きせつの歌うたでは秋あきがいちばん多おおい。

和歌わかのかたち ― 5・7・5・7・7 の31音おん

はるすぎて

5

なつきにけらし

7

しろたへの

5

ころもほすてふ

7

あまのかぐやま

7

上かみの句く(読よまれる)

下しもの句く(取とり札ふだ)

例れいは2番ばん「春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山」。かるたでは読よみ手てが上かみの句くから読よみ、取とる人ひとは下しもの句くだけが書かかれた札ふだをさがします。

KIMARIJI

決きまり字じ ― 最初さいしょの数文字すうもじで札ふだが決きまる

上かみの句くを頭あたまから聞きいていき、どの歌うたか1つに決きまる字じが「決きまり字じ」です。

む「む」で始はじまる歌うたは1首しゅだけきりたちのぼる あきのゆふぐれ

決きまり字じを覚おぼえれば、上かみの句くを最後さいごまで聞きかなくても取とれます。読よみ上あげたときの音おとで決きまるので、44番ばん「あふことの」は「おうことの」として数かぞえます。

何字なんじで決きまる?

  • 1字じ7首しゅ
  • 2字じ42首しゅ
  • 3字じ37首しゅ
  • 4字じ6首しゅ
  • 5字じ2首しゅ
  • 6字じ6首しゅ
決きまり字じの一覧いちらん(字数じすうごと・100首しゅ)

HOW TO

覚おぼえ方かたの5つのコツ

  1. 1

    1字じ決きまりから

    「むすめふさほせ」の7首しゅは頭あたまの1字じで取とれる。まずはここから。

  2. 2

    決きまり字じと下しもの句くをセットで

    上かみの句くを全部ぜんぶ覚おぼえなくてもよい。「む→きりたちのぼる」のように結むすびつける。

  3. 3

    20首しゅずつ区切くぎる

    1〜20番ばん、21〜40番ばん…と区切くぎって、覚おぼえたら次つぎへ。練習れんしゅうも範囲はんいを選えらべる。

  4. 4

    声こえに出だして読よむ

    5・7・5・7・7のリズムで読よむと頭あたまに残のこる。意味いみがわかると忘わすれにくい。

  5. 5

    似にた出でだしをくらべる

    「あさぼらけ」「きみがため」「わたのはら」は2首しゅずつ。ちがう字じに注目ちゅうもくする。

  6. 覚おぼえたら試ためそう

    上かみの句くや決きまり字じから下しもの句くを当あてる4択たくクイズ。

    練習れんしゅうする

ALL 100

全ぜん100首しゅ一覧いちらん

読よみは歴史的仮名遣れきしてきかなづかい。色いろのついた部分ぶぶんが決きまり字じです。

テーマ
決きまり字じ100首しゅ

1〜20番ばん

1天智天皇てんじてんのう
1番 天智天皇の絵札

秋の田のかりほの庵の苫をあらみわが衣手は露にぬれつつ

決きまり字じ あきの秋後撰集・秋中

あきのたの かりほのいほの とまをあらみ/わがころもでは つゆにぬれつつ

意味いみ

秋あきの田たんぼのそばにある仮かりの小屋こやは、屋根やねの苫とまの編あみ目めがあらいので、見張みはりをしている私わたしの袖そでは、夜よるつゆにぬれていくばかりだ。

ポイント「かりほ」は「仮庵かりいお」のこと。稲いねの番ばんをする人ひとの苦労くろうを思おもいやった歌うたとして伝つたえられている。

2持統天皇じとうてんのう
2番 持統天皇の絵札

春過ぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山

決きまり字じ はるす夏新古今集・夏

はるすぎて なつきにけらし しろたへの/ころもほすてふ あまのかぐやま

意味いみ

春はるが過すぎて、夏なつが来きたらしい。夏なつになると白しろい衣ころもをほすという天あまの香具山かぐやまに、真まっ白しろな衣ころもがほしてあるよ。

ポイント「てふ」は「という」の意味いみで、「ちょう」と読よむ。天あまの香具山かぐやまは奈良なら県けんにある山やま。作者さくしゃは1番ばんの天智天皇てんじてんのうの娘むすめ。

3柿本人麻呂かきのもとのひとまろ
3番 柿本人麻呂の絵札

あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む

決きまり字じ あし恋拾遺集・恋三

あしびきの やまどりのをの しだりをの/ながながしよを ひとりかもねむ

意味いみ

山鳥やまどりの長ながくたれ下さがった尾おのように長ながい長ながい夜よるを、私わたしはひとりさびしく寝ねるのだろうか。

ポイント「あしびきの」は「山やま」を引ひき出だす枕詞まくらことば。上かみの句く全体ぜんたいが「ながながし」を引ひき出だす序詞じょしになっている。

4山部赤人やまべのあかひと
4番 山部赤人の絵札

田子の浦にうち出でて見れば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ

決きまり字じ たご冬新古今集・冬

たごのうらに うちいでてみれば しろたへの/ふじのたかねに ゆきはふりつつ

意味いみ

田子たごの浦うらの海辺うみべに出でてながめると、真まっ白しろな富士山ふじさんの高たかい峰みねに、雪ゆきが降おりつづいているよ。

ポイント田子たごの浦うらは今いまの静岡しずおか県けんの海岸かいがん。『万葉集まんようしゅう』にある元もとの歌うたは、結むすびが「雪ゆきは降おりける」になっている。

5猿丸大夫さるまるだゆう
5番 猿丸大夫の絵札

奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋は悲しき

決きまり字じ おく秋古今集・秋上

おくやまに もみぢふみわけ なくしかの/こゑきくときぞ あきはかなしき

意味いみ

山やまの奥おくで、散ちった紅葉もみじをふみ分わけながら鳴ないている鹿しかの声こえを聞きくときこそ、秋あきはとりわけ悲かなしく感かんじられる。

ポイント鹿しかは秋あきに、妻つまをよんで鳴なくとされた。秋あきのさびしさを表あらわす代表だいひょう的てきな景物けいぶつ。

6中納言家持ちゅうなごんやかもち
6番 中納言家持の絵札

かささぎの渡せる橋に置く霜の白きを見れば夜ぞ更けにける

決きまり字じ かさ冬新古今集・冬

かささぎの わたせるはしに おくしもの/しろきをみれば よぞふけにける

意味いみ

かささぎが翼つばさを広ひろげてかけたという橋はし(宮中きゅうちゅうの階段かいだん)に、霜しもが白しろくおりているのを見みると、夜よるもすっかりふけたのだなあ。

ポイント七夕たなばたの夜よるに、かささぎが天あまの川がわに橋はしをかけるという中国ちゅうごくの伝説でんせつをふまえている。作者さくしゃは大伴家持おおとものやかもち。

7安倍仲麿あべのなかまろ
7番 安倍仲麿の絵札

天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも

決きまり字じ あまの旅・別れ古今集・羇旅

あまのはら ふりさけみれば かすがなる/みかさのやまに いでしつきかも

意味いみ

大空おおぞらをはるかに見上みあげると、月つきが出でている。あれは、ふるさとの春日かすがにある三笠山みかさやまに出でていたのと同おなじ月つきなのだなあ。

ポイント遣唐使けんとうしとして唐とうにわたった作者さくしゃが、ふるさとの奈良ならをなつかしんでよんだと伝つたえられる。

8喜撰法師きせんほうし
8番 喜撰法師の絵札

わが庵は都のたつみしかぞ住む世をうぢ山と人はいふなり

決きまり字じ わがいその他古今集・雑下

わがいほは みやこのたつみ しかぞすむ/よをうぢやまと ひとはいふなり

意味いみ

私わたしの小屋こやは都みやこの東南とうなんにあり、このように心こころ静しずかに住すんでいる。それなのに世間せけんの人ひとは、私わたしが世よの中なかをつらく思おもって宇治山うじやまにこもっていると言いっているそうだ。

ポイント「うぢ」は地名ちめいの「宇治うじ」と「憂うし(つらい)」の掛詞かけことば。「たつみ」は東南とうなんの方角ほうがく。

9小野小町おののこまち
9番 小野小町の絵札

花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに

決きまり字じ はなの春古今集・春下

はなのいろは うつりにけりな いたづらに/わがみよにふる ながめせしまに

意味いみ

桜さくらの花はなの色いろは、長雨ながあめが降ふっているあいだに、すっかりあせてしまった。私わたしの美うつくしさも、もの思おもいにふけってむなしく過すごすうちに、おとろえてしまったなあ。

ポイント「ふる」は「降ふる」と「経へる(時ときがたつ)」、「ながめ」は「長雨ながあめ」と「眺ながめ(もの思おもい)」の掛詞かけことば。

10蝉丸せみまる
10番 蝉丸の絵札

これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関

決きまり字じ これその他後撰集・雑一

これやこの ゆくもかへるも わかれては/しるもしらぬも あふさかのせき

意味いみ

これがあの、都みやこから出でて行いく人ひとも帰かえってくる人ひとも、知しり合あいも知しらない人ひとも、ここで別わかれてはまた出会であうという逢坂おうさかの関せきなのだなあ。

ポイント逢坂おうさかの関せきは、今いまの滋賀しが県けんと京都きょうと府ふの境さかいにあった関所せきしょ。名前なまえの「逢あう」に「人ひとと逢あう」意味いみがかけられている。

11参議篁さんぎたかむら
11番 参議篁の絵札

わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと人には告げよあまの釣舟

決きまり字じ わたのはらや旅・別れ古今集・羇旅

わたのはら やそしまかけて こぎいでぬと/ひとにはつげよ あまのつりぶね

意味いみ

大海原おおうなばらのたくさんの島々しまじまをめざして、私わたしは舟ふねをこぎ出だして行いったと、都みやこにいる人ひとたちに伝つたえておくれ、漁師りょうしの釣つり舟ふねよ。

ポイント作者さくしゃの小野篁おののたかむらは、罪つみをとがめられて隠岐おき(今いまの島根しまね県けんの島しま)に流ながされた。そのときの舟ふね出での歌うた。

12僧正遍昭そうじょうへんじょう
12番 僧正遍昭の絵札

天つ風雲の通ひ路吹きとぢよをとめの姿しばしとどめむ

決きまり字じ あまつその他古今集・雑上

あまつかぜ くものかよひぢ ふきとぢよ/をとめのすがた しばしとどめむ

意味いみ

空そらを吹ふく風かぜよ、雲くもの中なかにある天てんへの通とおり道みちをふさいでおくれ。天女てんにょのように美うつくしい少女しょうじょたちの姿すがたを、もうしばらくここにとどめておきたいから。

ポイント宮中きゅうちゅうの行事ぎょうじ(五節ごせちの舞まい)で舞まう少女しょうじょたちを、天女てんにょにたとえている。

13陽成院ようぜいいん
13番 陽成院の絵札

筑波嶺の峰より落つるみなの川恋ぞつもりて淵となりぬる

決きまり字じ つく恋後撰集・恋三

つくばねの みねよりおつる みなのがは/こひぞつもりて ふちとなりぬる

意味いみ

筑波山つくばさんの峰みねから流ながれ落おちるみなの川かわが、しだいに水みずを集あつめて深ふかい淵ふちになるように、私わたしの恋心こいごころもつもりつもって、深ふかいものになってしまった。

ポイント筑波山つくばさんは今いまの茨城いばらき県けんの山やま。上かみの句くが、下しもの句くの恋心こいごころのたとえになっている。

14河原左大臣かわらのさだいじん
14番 河原左大臣の絵札

陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに乱れそめにしわれならなくに

決きまり字じ みち恋古今集・恋四

みちのくの しのぶもぢずり たれゆゑに/みだれそめにし われならなくに

意味いみ

陸奥みちのくの「しのぶもじずり」の布ぬのの模様もようのように、私わたしの心こころは乱みだれはじめてしまった。いったい誰だれのせいだろう。私わたしのせいではないのに(あなたのせいだ)。

ポイント「しのぶもぢずり」は、今いまの福島ふくしま県けんの信夫しのぶ地方ちほうでつくられた、乱みだれた模様もようのすり染ぞめの布ぬの。

15光孝天皇こうこうてんのう
15番 光孝天皇の絵札

君がため春の野に出でて若菜摘むわが衣手に雪は降りつつ

決きまり字じ きみがためは春古今集・春上

きみがため はるののにいでて わかなつむ/わがころもでに ゆきはふりつつ

意味いみ

あなたにさしあげるために、春はるの野原のはらに出でて若菜わかなをつんでいる私わたしの袖そでに、雪ゆきがしきりに降ふりかかっている。

ポイント若菜わかなは、春はるの七草ななくさのような食たべられる草くさ。食たべると元気げんきに長生ながいきできると考かんがえられ、贈おくり物ものにした。

16中納言行平ちゅうなごんゆきひら
16番 中納言行平の絵札

立ち別れいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かば今帰り来む

決きまり字じ たち旅・別れ古今集・離別

たちわかれ いなばのやまの みねにおふる/まつとしきかば いまかへりこむ

意味いみ

あなたと別わかれて因幡いなばの国くにへ行いくが、その稲羽山いなばやまの峰みねに生はえている松まつのように、あなたが私わたしを待まっていると聞きいたら、すぐにでも帰かえってこよう。

ポイント「いなば」は国名こくめいの「因幡いなば(今いまの鳥取とっとり県けん)」と「往いなば(行いったならば)」、「まつ」は「松まつ」と「待まつ」の掛詞かけことば。

17在原業平朝臣ありわらのなりひらあそん
17番 在原業平朝臣の絵札

ちはやぶる神代も聞かず竜田川からくれなゐに水くくるとは

決きまり字じ ちは秋古今集・秋下

ちはやぶる かみよもきかず たつたがは/からくれなゐに みづくくるとは

意味いみ

ふしぎなことが多おおかった神々かみがみの時代じだいにも聞きいたことがない。竜田川たつたがわが、水みずを真まっ赤かな紅葉もみじでしぼり染ぞめにしているなんて。

ポイント「ちはやぶる」は「神かみ」を引ひき出だす枕詞まくらことば。竜田川たつたがわは奈良なら県けんの紅葉もみじの名所めいしょ。屏風びょうぶにかかれた絵えを見みてよんだ歌うた。

18藤原敏行朝臣ふじわらのとしゆきあそん
18番 藤原敏行朝臣の絵札

住の江の岸に寄る波よるさへや夢の通ひ路人目よくらむ

決きまり字じ す恋古今集・恋二

すみのえの きしによるなみ よるさへや/ゆめのかよひぢ ひとめよくらむ

意味いみ

住すみの江えの岸きしに寄よる波なみの「よる」ではないが、夜よるの夢ゆめの中なかの通とおり道みちでさえ、あなたはどうして人目ひとめをさけて会あいに来きてくれないのだろう。

ポイント住すみの江えは今いまの大阪おおさか市し住吉すみよしのあたり。「寄よる」と「夜よる」の同おなじ音おとを重かさねている。一いち字じ決きまり「す」。

19伊勢いせ
19番 伊勢の絵札

難波潟短き蘆のふしの間も逢はでこの世を過ぐしてよとや

決きまり字じ なにはが恋新古今集・恋一

なにはがた みじかきあしの ふしのまも/あはでこのよを すぐしてよとや

意味いみ

難波なにわの入いり江えに生はえている蘆あしの、短みじかい節ふしと節ふしのあいだほどのわずかな時間じかんさえ会あわずに、この一生いっしょうを過すごせと、あなたは言いうのですか。

ポイント蘆あしの「ふし(節ふし)」のように短みじかい時間じかん、という意味いみ。難波なにわ潟かたは今いまの大阪おおさか湾わんの入いり江え。

20元良親王もとよししんのう
20番 元良親王の絵札

わびぬれば今はた同じ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ

決きまり字じ わび恋後撰集・恋五

わびぬれば いまはたおなじ なにはなる/みをつくしても あはむとぞおもふ

意味いみ

恋こいに苦くるしんでいる今いまは、もうどうなっても同おなじことだ。難波なにわの海うみにある「みおつくし」のように、この身みをほろぼしても、あなたに会あいたいと思おもう。

ポイント「みをつくし」は、船ふねの通とおり道みちを示しめす杭くいの「澪標みおつくし」と「身みを尽つくし(命いのちをかける)」の掛詞かけことば。

21〜40番ばん

21素性法師そせいほうし
21番 素性法師の絵札

今来むと言ひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな

決きまり字じ いまこ恋古今集・恋四

いまこむと いひしばかりに ながつきの/ありあけのつきを まちいでつるかな

意味いみ

「すぐに行いきます」とあなたが言いったばかりに、秋あきの長ながい夜よるを待まちつづけて、とうとう明あけ方がたの月つきが出でるまで待まってしまったよ。

ポイント長月ながつきは昔むかしのこよみの九月くがつ。有明ありあけの月つきは、夜明よあけの空そらに残のこっている月つき。女性じょせいの立場たちばになってよんだ歌うた。

22文屋康秀ふんやのやすひで
22番 文屋康秀の絵札

吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐といふらむ

決きまり字じ ふ秋古今集・秋下

ふくからに あきのくさきの しをるれば/むべやまかぜを あらしといふらむ

意味いみ

吹ふくとすぐに秋あきの草くさや木きがしおれてしまうので、なるほど、山やまから吹ふく風かぜを「嵐あらし(荒あらし)」と言いうのだろう。

ポイント「山やま」と「風かぜ」を組くみ合あわせると「嵐あらし」という漢字かんじになる、という言葉ことば遊あそびの歌うた。一いち字じ決きまり「ふ」。

23大江千里おおえのちさと
23番 大江千里の絵札

月見ればちぢにものこそ悲しけれわが身ひとつの秋にはあらねど

決きまり字じ つき秋古今集・秋上

つきみれば ちぢにものこそ かなしけれ/わがみひとつの あきにはあらねど

意味いみ

月つきを見みると、あれこれと限かぎりなくもの悲がなしくなる。秋あきは、私わたしひとりのためにやって来きたわけではないのだけれど。

ポイント「ちぢ(千々ちぢ)」と「ひとつ」を対たいにしている。

24菅家かんけ
24番 菅家の絵札

このたびは幣も取りあへず手向山紅葉の錦神のまにまに

決きまり字じ この旅・別れ古今集・羇旅

このたびは ぬさもとりあへず たむけやま/もみぢのにしき かみのまにまに

意味いみ

今度こんどの旅たびは急きゅうなことで、神かみにささげる幣ぬさも用意よういできなかった。この手向山たむけやまの、錦にしきのような紅葉もみじを幣ぬさとして、神かみの御心みこころのままにお受うけ取とりください。

ポイント「このたび」は「この度たび(今回こんかい)」と「この旅たび」の掛詞かけことば。作者さくしゃは、学問がくもんの神様かみさまとして知しられる菅原すがわら道真みちざね。

25三条右大臣さんじょうのうだいじん
25番 三条右大臣の絵札

名にし負はば逢坂山のさねかづら人に知られでくるよしもがな

決きまり字じ なにし恋後撰集・恋三

なにしおはば あふさかやまの さねかづら/ひとにしられで くるよしもがな

意味いみ

「逢あう」「さ寝ね(いっしょに寝ねる)」という名前なまえを持もっているのなら、逢坂山おうさかやまのさねかずらよ、そのつるをたぐるように、人ひとに知しられずにあなたのもとへ来くる方法ほうほうがあればいいのに。

ポイント「くる」は「繰くる(たぐりよせる)」と「来くる」の掛詞かけことば。

26貞信公ていしんこう
26番 貞信公の絵札

小倉山峰のもみぢ葉心あらば今ひとたびのみゆき待たなむ

決きまり字じ をぐその他拾遺集・雑秋

をぐらやま みねのもみぢば こころあらば/いまひとたびの みゆきまたなむ

意味いみ

小倉山おぐらやまの峰みねの紅葉もみじよ、もしおまえに心こころがあるなら、もう一度いちど天皇てんのうがおいでになるまで、散ちらずに待まっていてほしい。

ポイント小倉山おぐらやまは京都きょうとの嵯峨さがにある山やま。百人一首ひゃくにんいっしゅは、藤原定家ふじわらのていかがこの山やまのふもとの山荘さんそうで選えらんだと伝つたえられている。

27中納言兼輔ちゅうなごんかねすけ
27番 中納言兼輔の絵札

みかの原わきて流るる泉川いつ見きとてか恋しかるらむ

決きまり字じ みかの恋新古今集・恋一

みかのはら わきてながるる いづみがは/いつみきとてか こひしかるらむ

意味いみ

みかの原はらを分わけて流ながれる泉川いずみがわの「いつみ」ではないが、いつ見みたというので、こんなにあの人ひとが恋こいしいのだろう(まだ一いち度ども会あったことはないのに)。

ポイント上かみの句くが、「いづみ(泉いずみ)」の音おとから「いつ見み」を引ひき出だす序詞じょしになっている。

28源宗于朝臣みなもとのむねゆきあそん
28番 源宗于朝臣の絵札

山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草もかれぬと思へば

決きまり字じ やまざ冬古今集・冬

やまざとは ふゆぞさびしさ まさりける/ひとめもくさも かれぬとおもへば

意味いみ

山里やまざとは、冬ふゆこそさびしさがいっそう増ますものだ。たずねてくる人ひともいなくなり、草くさも枯かれてしまうと思おもうと。

ポイント「かれ」は、人ひとの訪おとずれが「離はなれ(かれ)」と、草くさが「枯かれ」の掛詞かけことば。

29凡河内躬恒おおしこうちのみつね
29番 凡河内躬恒の絵札

心あてに折らばや折らむ初霜の置きまどはせる白菊の花

決きまり字じ こころあ秋古今集・秋下

こころあてに をらばやをらむ はつしもの/おきまどはせる しらぎくのはな

意味いみ

あて推量すいりょうで折おるなら折おってみようか。初はつ霜しもが一いち面めんにおりて、霜しもなのか花はななのか見分みわけがつかなくなっている白菊しらぎくの花はなを。

ポイント白しろい霜しもと白しろい菊きくが区別くべつできないほどの景色けしきを、少すこし大おおげさにえがいている。

30壬生忠岑みぶのただみね
30番 壬生忠岑の絵札

有明のつれなく見えし別れより暁ばかり憂きものはなし

決きまり字じ ありあ恋古今集・恋三

ありあけの つれなくみえし わかれより/あかつきばかり うきものはなし

意味いみ

有明ありあけの月つきがそっけなく見みえた、あの冷つめたい別わかれのとき以来いらい、夜明よあけ前まえほどつらいものはない。

ポイント「暁あかつき」は、夜明よあけ前まえのまだ暗くらいころ。恋人こいびとと別わかれる時間じかんとされた。

31坂上是則さかのうえのこれのり
31番 坂上是則の絵札

朝ぼらけ有明の月と見るまでに吉野の里に降れる白雪

決きまり字じ あさぼらけあ冬古今集・冬

あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに/よしののさとに ふれるしらゆき

意味いみ

夜よるがほのぼのと明あけるころ、有明ありあけの月つきの光ひかりかと思おもうほどに、吉野よしのの里さとに白しろく降おりつもっている雪ゆきよ。

ポイント吉野よしのは奈良なら県けんの山里やまざと。雪ゆきの白しろさを月つきの光ひかりにたとえている。決きまり字じは6字じの「あさぼらけあ」。

32春道列樹はるみちのつらき
32番 春道列樹の絵札

山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり

決きまり字じ やまが秋古今集・秋下

やまがはに かぜのかけたる しがらみは/ながれもあへぬ もみぢなりけり

意味いみ

山やまの中なかの川がわに、風かぜがかけたしがらみ(水みずをせきとめる柵しがらみ)とは、流ながれきれずにたまっている紅葉もみじだったのだなあ。

ポイント風かぜを人ひとのようにえがき、紅葉もみじがたまっている様子ようすを「しがらみ」にたとえている。

33紀友則きのとものり
33番 紀友則の絵札

ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ

決きまり字じ ひさ春古今集・春下

ひさかたの ひかりのどけき はるのひに/しづごころなく はなのちるらむ

意味いみ

日ひの光ひかりがのどかにさしている春はるの日ひに、どうして桜さくらの花はなだけは、落おち着ついた心こころもなく散ちっていくのだろう。

ポイント「ひさかたの」は「光ひかり」「天てん」などを引ひき出だす枕詞まくらことば。作者さくしゃは35番ばんの紀貫之きのつらゆきのいとこ。

34藤原興風ふじわらのおきかぜ
34番 藤原興風の絵札

誰をかも知る人にせむ高砂の松も昔の友ならなくに

決きまり字じ たれその他古今集・雑上

たれをかも しるひとにせむ たかさごの/まつもむかしの ともならなくに

意味いみ

年ねんをとった私わたしは、いったい誰だれを心こころの知しれた友ともにしたらよいのだろう。長生ながいきの高砂たかさごの松まつも、昔むかしからの友ともだちではないのに。

ポイント高砂たかさごは今いまの兵庫ひょうご県けんの地名ちめいで、松まつの名所めいしょ。友ともがみな亡なくなってしまった老人ろうじんのさびしさをよんでいる。

35紀貫之きのつらゆき
35番 紀貫之の絵札

人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける

決きまり字じ ひとは春古今集・春上

ひとはいさ こころもしらず ふるさとは/はなぞむかしの かににほひける

意味いみ

あなたの心こころはさあ、どうだかわからない。けれど、昔むかしなじみのこの土地とちでは、梅うめの花はなだけが昔むかしと同おなじ香かおりでにおっているよ。

ポイントこの「花はな」は梅うめ。作者さくしゃは『古今和歌集こきんわかしゅう』を選えらんだ一人ひとりで、『土佐とさ日記にっき』の作者さくしゃ。

36清原深養父きよはらのふかやぶ
36番 清原深養父の絵札

夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいづこに月宿るらむ

決きまり字じ なつ夏古今集・夏

なつのよは まだよひながら あけぬるを/くものいづこに つきやどるらむ

意味いみ

夏なつの夜よるは短みじかく、まだ宵よいのうちだと思おもっているうちに明あけてしまった。月つきは西にしの山やまにしずむひまもなく、雲くものどこに宿やどをとっているのだろう。

ポイント夏なつの夜よるの短みじかさを、月つきの身みになって大おおげさに表あらわしている。作者さくしゃは清少納言せいしょうなごんのひいおじいさん。

37文屋朝康ふんやのあさやす
37番 文屋朝康の絵札

白露に風の吹きしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞ散りける

決きまり字じ しら秋後撰集・秋中

しらつゆに かぜのふきしく あきののは/つらぬきとめぬ たまぞちりける

意味いみ

草くさの葉はの白露しらつゆに風かぜがしきりに吹ふきつける秋あきの野原のはらは、糸いとに通とおしていない真珠しんじゅの玉たまが、ばらばらと散ちりみだれているようだ。

ポイント露つゆを玉たま(真珠しんじゅ)にたとえている。作者さくしゃは22番ばんの文屋康秀ふんやのやすひでの子こ。

38右近うこん
38番 右近の絵札

忘らるる身をば思はず誓ひてし人の命の惜しくもあるかな

決きまり字じ わすら恋拾遺集・恋四

わすらるる みをばおもはず ちかひてし/ひとのいのちの をしくもあるかな

意味いみ

あなたに忘わすれられる私わたしのことは何なにとも思おもわない。ただ、いつまでも愛あいすると神かみに誓ちかったあなたの命いのちが、誓ちかいを破やぶった罰ばちで失うしなわれるのではないかと、惜おしまれてならない。

ポイント相手あいてを責せめるような、心配しんぱいするような、複雑ふくざつな気持きもちが読よみ取とれる。

39参議等さんぎひとし
39番 参議等の絵札

浅茅生の小野の篠原しのぶれどあまりてなどか人の恋しき

決きまり字じ あさぢ恋後撰集・恋一

あさぢふの をののしのはら しのぶれど/あまりてなどか ひとのこひしき

意味いみ

浅茅あさじの生はえている野原のはらの篠原しのはらの「しの」ではないが、じっとこらえて忍しのんでいるのに、どうしておさえきれないほど、あの人ひとが恋こいしいのだろう。

ポイント上かみの句くが、同おなじ音おとの「しのぶれど」を引ひき出だす序詞じょしになっている。

40平兼盛たいらのかねもり
40番 平兼盛の絵札

忍ぶれど色に出でにけりわが恋はものや思ふと人の問ふまで

決きまり字じ しの恋拾遺集・恋一

しのぶれど いろにいでにけり わがこひは/ものやおもふと ひとのとふまで

意味いみ

人ひとに知しられないようにかくしていたのに、顔色かおいろに出でてしまったようだ、私わたしの恋こいは。「もの思おもいをしているのですか」と人ひとにたずねられるほどに。

ポイント宮中きゅうちゅうの歌合うたあわせで、41番ばんの壬生みぶ忠見ただみの歌うたと勝負しょうぶして勝かったと伝つたえられる。

41〜60番ばん

41壬生忠見みぶのただみ
41番 壬生忠見の絵札

恋すてふわが名はまだき立ちにけり人知れずこそ思ひそめしか

決きまり字じ こひ恋拾遺集・恋一

こひすてふ わがなはまだき たちにけり/ひとしれずこそ おもひそめしか

意味いみ

恋こいをしているといううわさが、もう立たってしまった。だれにも知しられないように、ひそかに思おもいはじめたばかりなのに。

ポイント「てふ」は「という」の意味いみ。40番ばんと同おなじ歌合うたあわせでよまれた歌うた。作者さくしゃは30番ばんの壬生忠岑みぶのただみねの子こ。

42清原元輔きよはらのもとすけ
42番 清原元輔の絵札

契りきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山波越さじとは

決きまり字じ ちぎりき恋後拾遺集・恋四

ちぎりきな かたみにそでを しぼりつつ/すゑのまつやま なみこさじとは

意味いみ

約束やくそくしましたよね。おたがいに涙なみだでぬれた袖そでをしぼりながら、末すえの松山まつやまを波なみが越こすことがないように、二人ふたりの心こころも決けっして変かわらないと。

ポイント末すえの松山まつやま(今いまの宮城みやぎ県けん)は、波なみが越こえることのない場所ばしょとされた。作者さくしゃは清少納言せいしょうなごんの父ちち。

43権中納言敦忠ごんちゅうなごんあつただ
43番 権中納言敦忠の絵札

逢ひ見ての後の心にくらぶれば昔はものを思はざりけり

決きまり字じ あひ恋拾遺集・恋二

あひみての のちのこころに くらぶれば/むかしはものを おもはざりけり

意味いみ

あなたと結むすばれてからの、今いまのせつない心こころにくらべると、会あう前まえのもの思おもいなど、何なにも思おもっていなかったのと同おなじようなものだった。

ポイント会あったあとのほうが、かえって思おもいが深ふかまるという恋こいの心こころをよんでいる。

44中納言朝忠ちゅうなごんあさただ
44番 中納言朝忠の絵札

逢ふことの絶えてしなくばなかなかに人をも身をも恨みざらまし

決きまり字じ あふこ恋拾遺集・恋一

あふことの たえてしなくば なかなかに/ひとをもみをも うらみざらまし

意味いみ

もし会あうことがまったくなかったなら、かえって、あの人ひとの冷つめたさも、自分じぶんのつらい身みの上うえも、うらんだりしなかっただろうに。

ポイント「まし」は「もし〜ならば…だろうに」という意味いみ。決きまり字じは「あふこ」で、読よむときは「おうこ」と発音はつおんする。

45謙徳公けんとくこう
45番 謙徳公の絵札

あはれともいふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな

決きまり字じ あはれ恋拾遺集・恋五

あはれとも いふべきひとは おもほえで/みのいたづらに なりぬべきかな

意味いみ

私わたしをかわいそうだと言いってくれそうな人ひとは思おもいうかばず、私わたしはこのまま恋こいにこがれて、むなしく死しんでしまうにちがいない。

ポイント冷つめたくなった恋人こいびとに向むけて、あわれみを求もとめた歌うた。

46曾禰好忠そねのよしただ
46番 曾禰好忠の絵札

由良の門を渡る舟人かぢを絶え行方も知らぬ恋の道かな

決きまり字じ ゆら恋新古今集・恋一

ゆらのとを わたるふなびと かぢをたえ/ゆくへもしらぬ こひのみちかな

意味いみ

由良ゆらの海峡かいきょうをわたる船頭せんどうが、かいをなくして、行ゆき先さきもわからずただようように、これから先さきどうなるかわからない私わたしの恋こいの道みちよ。

ポイント上かみの句くが「行方ゆくえも知しらぬ」を引ひき出だす序詞じょしになっている。

47恵慶法師えぎょうほうし
47番 恵慶法師の絵札

八重むぐらしげれる宿のさびしきに人こそ見えね秋は来にけり

決きまり字じ やへ秋拾遺集・秋

やへむぐら しげれるやどの さびしきに/ひとこそみえね あきはきにけり

意味いみ

つる草くさが何重なんえにもしげっているさびしい家いえには、たずねてくる人ひとはいないが、秋あきだけはやって来きたのだなあ。

ポイント荒あれはてた家いえに、季節きせつだけが変かわらずめぐってくるさびしさをよんでいる。

48源重之みなもとのしげゆき
48番 源重之の絵札

風をいたみ岩打つ波のおのれのみくだけてものを思ふころかな

決きまり字じ かぜを恋詞花集・恋上

かぜをいたみ いはうつなみの おのれのみ/くだけてものを おもふころかな

意味いみ

風かぜがはげしいので、岩いわにうちつける波なみが自分じぶんだけくだけ散ちるように、あの人ひとは平気へいきなのに、私わたしだけが心こころもくだけるほど思おもいなやむこのごろだ。

ポイント「〜をいたみ」は「〜がはげしいので」という意味いみ。

49大中臣能宣朝臣おおなかとみのよしのぶあそん
49番 大中臣能宣朝臣の絵札

みかきもり衛士のたく火の夜は燃え昼は消えつつものをこそ思へ

決きまり字じ みかき恋詞花集・恋上

みかきもり ゑじのたくひの よるはもえ/ひるはきえつつ ものをこそおもへ

意味いみ

宮中きゅうちゅうの門もんを守まもる兵士へいしのたくかがり火びが、夜よるは燃もえて昼ひるは消きえているように、私わたしの恋心こいごころも、夜よるは燃もえ上あがり、昼ひるは消きえ入いるようになって、もの思おもいをしている。

ポイント作者さくしゃは61番ばんの伊勢大輔いせのたいふの祖父そふ。

50藤原義孝ふじわらのよしたか
50番 藤原義孝の絵札

君がため惜しからざりし命さへ長くもがなと思ひけるかな

決きまり字じ きみがためを恋後拾遺集・恋二

きみがため をしからざりし いのちさへ/ながくもがなと おもひけるかな

意味いみ

あなたに会あうためなら惜おしくないと思おもっていた命いのちでさえ、会あうことができた今いまは、いつまでも長ながくつづいてほしいと思おもうようになったよ。

ポイント決きまり字じは6字じの「きみがためを」。15番ばん「きみがためは」と区別くべつする。作者さくしゃは45番ばんの謙徳公けんとくこうの子こ。

51藤原実方朝臣ふじわらのさねかたあそん
51番 藤原実方朝臣の絵札

かくとだにえやはいぶきのさしも草さしも知らじな燃ゆる思ひを

決きまり字じ かく恋後拾遺集・恋一

かくとだに えやはいぶきの さしもぐさ/さしもしらじな もゆるおもひを

意味いみ

こんなにあなたを思おもっていると、口くちに出だして言いうことさえできない。伊吹山いぶきやまのさしも草くさが燃もえるように燃もえている私わたしの思おもいを、あなたはそれほどとは知しらないでしょうね。

ポイント「いぶき」は地名ちめいの「伊吹いぶき」と「言いふ」、「思おもひ」の「ひ」は「火ひ」の掛詞かけことば。さしも草くさは、お灸きゅうに使つかうもぐさ。

52藤原道信朝臣ふじわらのみちのぶあそん
52番 藤原道信朝臣の絵札

明けぬれば暮るるものとは知りながらなほ恨めしき朝ぼらけかな

決きまり字じ あけ恋後拾遺集・恋二

あけぬれば くるるものとは しりながら/なほうらめしき あさぼらけかな

意味いみ

夜よるが明あければ、また日ひが暮くれて、あなたに会あえるとわかってはいるけれど、それでもやはり、別わかれなければならない夜明よあけはうらめしいよ。

ポイント恋人こいびとと別わかれて帰かえった朝あさに送おくった歌うた。

53右大将道綱母うだいしょうみちつなのはは
53番 右大将道綱母の絵札

嘆きつつひとり寝る夜の明くる間はいかに久しきものとかは知る

決きまり字じ なげき恋拾遺集・恋四

なげきつつ ひとりぬるよの あくるまは/いかにひさしき ものとかはしる

意味いみ

あなたが来こないのを嘆なげきながら、ひとりで寝ねる夜よるが明あけるまでの時間じかんがどんなに長ながいものか、あなたは知しっているでしょうか(知しらないでしょう)。

ポイント作者さくしゃは『蜻蛉かげろう日記にっき』の作者さくしゃ。夫おっとの藤原兼家ふじわらのかねいえに向むけてよんだ歌うた。

54儀同三司母ぎどうさんしのはは
54番 儀同三司母の絵札

忘れじの行く末まではかたければ今日を限りの命ともがな

決きまり字じ わすれ恋新古今集・恋三

わすれじの ゆくすゑまでは かたければ/けふをかぎりの いのちともがな

意味いみ

「いつまでも忘わすれない」というあなたの言葉ことばが、遠とおい先さきまで変かわらないとは信しんじにくいので、幸しあわせな今日きょうを最後さいごに、命いのちが終おわってしまえばいいのに。

ポイント幸しあわせの絶頂ぜっちょうにいるときの、先さきを思おもう不安ふあんをよんでいる。

55大納言公任だいなごんきんとう
55番 大納言公任の絵札

滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ

決きまり字じ たきその他千載集・雑上

たきのおとは たえてひさしく なりぬれど/なこそながれて なほきこえけれ

意味いみ

滝たきの水音みずおとが聞きこえなくなってから長ながい年月としつきがたったが、その評判ひょうばんだけは世間せけんに伝つたわって、今いまも聞きこえてくる。

ポイント京都きょうとの大覚寺だいかくじにあった滝たきのあとをよんだ歌うた。「な」の音おとのくり返かえしがリズムを生うんでいる。

56和泉式部いずみしきぶ
56番 和泉式部の絵札

あらざらむこの世のほかの思ひ出に今ひとたびの逢ふこともがな

決きまり字じ あらざ恋後拾遺集・恋三

あらざらむ このよのほかの おもひでに/いまひとたびの あふこともがな

意味いみ

私わたしはもうすぐ死しんでしまうだろう。あの世よへの思おもい出でに、もう一度いちどだけあなたに会あいたい。

ポイント重おもい病気びょうきになったときによんだ歌うた。作者さくしゃは60番ばんの小式部内侍こしきぶのないしの母はは。

57紫式部むらさきしきぶ
57番 紫式部の絵札

めぐり逢ひて見しやそれとも分かぬ間に雲隠れにし夜半の月かな

決きまり字じ めその他新古今集・雑上

めぐりあひて みしやそれとも わかぬまに/くもがくれにし よはのつきかな

意味いみ

久ひさしぶりにめぐり会あったのに、あなたかどうかもはっきりわからないうちに帰かえってしまった。まるで雲くもにかくれた夜中よなかの月つきのように。

ポイント作者さくしゃは『源氏物語げんじものがたり』の作者さくしゃ。幼おさななじみとの短みじかい再会さいかいをよんだ歌うた。一いち字じ決きまり「め」。

58大弐三位だいにのさんみ
58番 大弐三位の絵札

有馬山猪名の笹原風吹けばいでそよ人を忘れやはする

決きまり字じ ありま恋後拾遺集・恋二

ありまやま ゐなのささはら かぜふけば/いでそよひとを わすれやはする

意味いみ

有馬山ありまやまの近ちかくの猪名いなの笹原ささはらに風かぜが吹ふくと、笹ささの葉はがそよそよと鳴なる。そうですよ、私わたしがあなたを忘わすれたりするものですか。

ポイント「そよ」は、笹ささが鳴なる音おとと「そうですよ」の掛詞かけことば。作者さくしゃは紫式部むらさきしきぶの娘むすめ。

59赤染衛門あかぞめえもん
59番 赤染衛門の絵札

やすらはで寝なましものを小夜更けてかたぶくまでの月を見しかな

決きまり字じ やす恋後拾遺集・恋二

やすらはで ねなましものを さよふけて/かたぶくまでの つきをみしかな

意味いみ

あなたが来こないとわかっていたら、ためらわずに寝ねてしまったのに。あなたを待まって夜よるがふけ、西にしの空そらにかたむくまで月つきを見みてしまったよ。

ポイント約束やくそくを破やぶった男性だんせいに、姉妹しまいにかわって作者さくしゃがよんだ歌うた。

60小式部内侍こしきぶのないし
60番 小式部内侍の絵札

大江山いく野の道の遠ければまだふみも見ず天の橋立

決きまり字じ おほえその他金葉集・雑上

おほえやま いくののみちの とほければ/まだふみもみず あまのはしだて

意味いみ

大江山おおえやまをこえ、生野いくのを通とおっていく道みちは遠とおいので、まだ天あまの橋立はしだての地ちをふんだこともないし、母ははからの手紙てがみも見みていません。

ポイント母ははの和泉式部いずみしきぶに歌うたを代かわりに作つくってもらうのだろう、とからかわれて、その場ばでよんだと伝つたえられる。「ふみ」は「踏ふみ」と「文ふみ(手紙てがみ)」の掛詞かけことば。

61〜80番ばん

61伊勢大輔いせのたいふ
61番 伊勢大輔の絵札

いにしへの奈良の都の八重桜今日九重ににほひぬるかな

決きまり字じ いに春詞花集・春

いにしへの ならのみやこの やへざくら/けふここのへに にほひぬるかな

意味いみ

昔むかし、都みやこだった奈良ならの八重桜やえざくらが、今日きょうはこの宮中きゅうちゅうで、ひときわ美うつくしく咲さきほこっている。

ポイント「九重ここのえ」は宮中きゅうちゅうのこと。「八重やえ」と「九重ここのえ」、「いにしへ」と「今日きょう」を対たいにしている。

62清少納言せいしょうなごん
62番 清少納言の絵札

夜をこめて鳥のそら音ははかるともよに逢坂の関は許さじ

決きまり字じ よをその他後拾遺集・雑二

よをこめて とりのそらねは はかるとも/よにあふさかの せきはゆるさじ

意味いみ

まだ夜よるが明あけないうちに、にわとりの鳴なきまねをしてだまそうとしても、この逢坂おうさかの関せきは決けっして通とおしませんよ(あなたには会あいません)。

ポイントにわとりの鳴なきまねで関所せきしょの門もんを開あけさせたという中国ちゅうごくの話はなしをふまえている。作者さくしゃは『枕草子まくらのそうし』の作者さくしゃ。

63左京大夫道雅さきょうのだいぶみちまさ
63番 左京大夫道雅の絵札

今はただ思ひ絶えなむとばかりを人づてならで言ふよしもがな

決きまり字じ いまは恋後拾遺集・恋三

いまはただ おもひたえなむ とばかりを/ひとづてならで いふよしもがな

意味いみ

今いまとなっては、「あなたのことはあきらめます」という一言ひとことだけでも、人ひとづてではなく、直接ちょくせつあなたに言いう方法ほうほうがあればいいのに。

ポイント会あうことを禁きんじられた恋こいの苦くるしさをよんでいる。

64権中納言定頼ごんちゅうなごんさだより
64番 権中納言定頼の絵札

朝ぼらけ宇治の川霧たえだえにあらはれわたる瀬々の網代木

決きまり字じ あさぼらけう冬千載集・冬

あさぼらけ うぢのかはぎり たえだえに/あらはれわたる せぜのあじろぎ

意味いみ

夜よるがほのぼのと明あけるころ、宇治川うじがわの川かわ霧きりがとぎれとぎれに晴はれていき、その間あいだから、浅瀬あさせに立たつ網代木あじろぎがつぎつぎに見みえてくる。

ポイント網代木あじろぎは、魚さかなをとる仕掛しかけを支ささえる杭くい。決きまり字じは6字じの「あさぼらけう」。

65相模さがみ
65番 相模の絵札

恨みわびほさぬ袖だにあるものを恋に朽ちなむ名こそ惜しけれ

決きまり字じ うら恋後拾遺集・恋四

うらみわび ほさぬそでだに あるものを/こひにくちなむ なこそをしけれ

意味いみ

冷つめたい人ひとをうらみ、涙なみだでかわくひまもない袖そでさえ朽くちてしまいそうなのに、恋こいのうわさで私わたしの評判ひょうばんまで落おちてしまうのが惜おしい。

ポイント袖そでが朽くちることと、評判ひょうばん(名な)が朽くちることを重かさねている。

66大僧正行尊だいそうじょうぎょうそん
66番 大僧正行尊の絵札

もろともにあはれと思へ山桜花よりほかに知る人もなし

決きまり字じ もろその他金葉集・雑上

もろともに あはれとおもへ やまざくら/はなよりほかに しるひともなし

意味いみ

私わたしがおまえをなつかしく思おもうように、おまえも私わたしをなつかしいと思おもっておくれ、山桜やまざくらよ。こんな山奥やまおくでは、花はなのほかに私わたしの心こころを知しる者ものはいないのだから。

ポイント山奥やまおくで修行しゅぎょうをしていた僧そうが、ひっそり咲さく桜さくらによびかけた歌うた。

67周防内侍すおうのないし
67番 周防内侍の絵札

春の夜の夢ばかりなる手枕にかひなく立たむ名こそ惜しけれ

決きまり字じ はるのその他千載集・雑上

はるのよの ゆめばかりなる たまくらに/かひなくたたむ なこそをしけれ

意味いみ

春はるの夜よるの夢ゆめのように短みじかい時間じかん、あなたの腕うでを枕まくらにしたとしても、それでつまらないうわさが立たってしまうのは惜おしいことです。

ポイント「枕まくらがほしい」とつぶやいた作者さくしゃに、男性だんせいが腕うでをさし出だしたのを、軽かるくかわした歌うた。「かひなく」に「かひな(腕うで)」がかくれている。

68三条院さんじょういん
68番 三条院の絵札

心にもあらで憂き世にながらへば恋しかるべき夜半の月かな

決きまり字じ こころにその他後拾遺集・雑一

こころにも あらでうきよに ながらへば/こひしかるべき よはのつきかな

意味いみ

心こころならずも、このつらい世よの中なかに生いきながらえたならば、きっと恋こいしく思おもい出だされるにちがいない、今夜こんやのこの月つきを。

ポイント目めの病気びょうきのために、天皇てんのうの位くらいをゆずろうとしていたころによんだ歌うた。

69能因法師のういんほうし
69番 能因法師の絵札

嵐吹く三室の山のもみぢ葉は竜田の川の錦なりけり

決きまり字じ あらし秋後拾遺集・秋下

あらしふく みむろのやまの もみぢばは/たつたのかはの にしきなりけり

意味いみ

強つよい風かぜが吹ふく三室山みむろやまの紅葉もみじは、ふもとの竜田川たつたがわに散ちって流ながれ、川かわをかざる錦にしきの織物おりものになっているよ。

ポイント三室山みむろやまも竜田川たつたがわも、奈良なら県けんの紅葉もみじの名所めいしょ。

70良暹法師りょうぜんほうし
70番 良暹法師の絵札

さびしさに宿を立ち出でてながむればいづこも同じ秋の夕暮れ

決きまり字じ さ秋後拾遺集・秋上

さびしさに やどをたちいでて ながむれば/いづこもおなじ あきのゆふぐれ

意味いみ

あまりのさびしさに家いえを出でて、あたりをながめてみると、どこも同おなじようにさびしい秋あきの夕暮ゆうぐれだった。

ポイント一いち字じ決きまり「さ」。

71大納言経信だいなごんつねのぶ
71番 大納言経信の絵札

夕されば門田の稲葉おとづれて蘆のまろやに秋風ぞ吹く

決きまり字じ ゆふ秋金葉集・秋

ゆふされば かどたのいなば おとづれて/あしのまろやに あきかぜぞふく

意味いみ

夕方ゆうがたになると、家いえの前まえの田たんぼの稲いねの葉はをそよそよと鳴ならして、蘆あしでふいた粗末そまつな小屋こやに、秋風あきかぜが吹ふいてくる。

ポイント「おとづれて」は、音おとを立たてて訪おとずれてくるという意味いみ。

72祐子内親王家紀伊ゆうしないしんのうけのきい
72番 祐子内親王家紀伊の絵札

音に聞く高師の浜のあだ波はかけじや袖のぬれもこそすれ

決きまり字じ おと恋金葉集・恋下

おとにきく たかしのはまの あだなみは/かけじやそでの ぬれもこそすれ

意味いみ

うわさに高たかい高師たかしの浜はまのむやみに立たつ波なみはかぶらないようにしよう。袖そでがぬれてしまうといけないから(浮気者うわきものと評判ひょうばんのあなたの言葉ことばは、心こころにかけません。あとで泣なくことになるから)。

ポイント恋こいの歌うたを送おくってきた男性だんせいへの返事へんじの歌うた。「高師たかし」に「高たかし(評判ひょうばんが高たかい)」をかけている。

73権中納言匡房ごんちゅうなごんまさふさ
73番 権中納言匡房の絵札

高砂の尾の上の桜咲きにけり外山の霞立たずもあらなむ

決きまり字じ たか春後拾遺集・春上

たかさごの をのへのさくら さきにけり/とやまのかすみ たたずもあらなむ

意味いみ

遠とおくの高たかい山やまの峰みねに桜さくらが咲さいたなあ。手前てまえの山やまの霞かすみよ、どうか立たたないでおくれ(桜さくらが見みえなくなるから)。

ポイントここでの「高砂たかさご」は、地名ちめいではなく高たかい山やまという意味いみ。

74源俊頼朝臣みなもとのとしよりあそん
74番 源俊頼朝臣の絵札

憂かりける人を初瀬の山おろしはげしかれとは祈らぬものを

決きまり字じ うか恋千載集・恋二

うかりける ひとをはつせの やまおろし/はげしかれとは いのらぬものを

意味いみ

私わたしに冷つめたいあの人ひとの心こころが変かわるようにと、初瀬はつせの観音かんのん様さまにお祈いのりしたのに。初瀬はつせの山やまおろしの風かぜよ、おまえのようにあの人ひとがいっそうはげしく冷つめたくなれとは、祈いのらなかったのに。

ポイント初瀬はつせは奈良なら県けんの長谷寺はせでらのあたり。山やまおろしは、山やまから吹ふきおろす強つよい風かぜ。

75藤原基俊ふじわらのもととし
75番 藤原基俊の絵札

契りおきしさせもが露を命にてあはれ今年の秋もいぬめり

決きまり字じ ちぎりおその他千載集・雑上

ちぎりおきし させもがつゆを いのちにて/あはれことしの あきもいぬめり

意味いみ

お約束やくそくくださった、させも草くさの露つゆのようなありがたいお言葉ことばを命いのちのようにたよりにしてきたのに、ああ、今年ことしの秋あきもむなしく過すぎていくようだ。

ポイント息子むすこをある法会ほうえの役やくにつけてほしいとたのんだが、かなわなかった思おもいをよんでいる。

76法性寺入道前関白太政大臣ほっしょうじにゅうどうさきのかんぱくだいじょうだいじん
76番 法性寺入道前関白太政大臣の絵札

わたの原漕ぎ出でて見ればひさかたの雲居にまがふ沖つ白波

決きまり字じ わたのはらこその他詞花集・雑下

わたのはら こぎいでてみれば ひさかたの/くもゐにまがふ おきつしらなみ

意味いみ

大海原おおうなばらに舟ふねをこぎ出だしてながめると、はるか沖おきのほうでは、空そらの雲くもと見分みわけがつかないほど白波しらなみが立たっている。

ポイント決きまり字じは6字じの「わたのはらこ」。11番ばん「わたのはらや」と区別くべつする。

77崇徳院すとくいん
77番 崇徳院の絵札

瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ

決きまり字じ せ恋詞花集・恋上

せをはやみ いはにせかるる たきがはの/われてもすゑに あはむとぞおもふ

意味いみ

川かわの流ながれが速はやいので、岩いわにせきとめられて二ふたつに分わかれた急流きゅうりゅうが、やがてまた一ひとつになるように、今いまは別わかれても、いつかきっとあなたに会あおうと思おもう。

ポイント一いち字じ決きまり「せ」。落語らくご「崇徳院すとくいん」の題材だいざいにもなっている。

78源兼昌みなもとのかねまさ
78番 源兼昌の絵札

淡路島かよふ千鳥の鳴く声に幾夜寝覚めぬ須磨の関守

決きまり字じ あはぢ冬金葉集・冬

あはぢしま かよふちどりの なくこゑに/いくよねざめぬ すまのせきもり

意味いみ

淡路島あわじしまから通かよってくる千鳥ちどりの鳴なく声こえに、須磨すまの関所せきしょの番人ばんにんは、いく晩ばん目めをさましたことだろう。

ポイント須磨すまは今いまの神戸こうべ市しの海岸かいがん。冬ふゆの夜よるのさびしさをよんでいる。

79左京大夫顕輔さきょうのだいぶあきすけ
79番 左京大夫顕輔の絵札

秋風にたなびく雲の絶え間よりもれ出づる月の影のさやけさ

決きまり字じ あきか秋新古今集・秋上

あきかぜに たなびくくもの たえまより/もれいづるつきの かげのさやけさ

意味いみ

秋風あきかぜに吹ふかれて長ながく横よこにたなびいている雲くもの切きれ間まから、もれ出でてくる月つきの光ひかりの、なんと澄すみきって明あかるいことよ。

ポイント「影かげ」はここでは光ひかりのこと。

80待賢門院堀河たいけんもんいんのほりかわ
80番 待賢門院堀河の絵札

長からむ心も知らず黒髪の乱れて今朝はものをこそ思へ

決きまり字じ ながか恋千載集・恋三

ながからむ こころもしらず くろかみの/みだれてけさは ものをこそおもへ

意味いみ

いつまでも変かわらないというあなたの心こころも信しんじきれず、別わかれた今朝けさは、私わたしの黒髪くろかみが乱みだれているように、心こころも乱みだれて、もの思おもいにしずんでいる。

ポイント黒髪くろかみの乱みだれと、心こころの乱みだれを重かさねている。

81〜100番ばん

81後徳大寺左大臣ごとくだいじのさだいじん
81番 後徳大寺左大臣の絵札

ほととぎす鳴きつる方をながむればただ有明の月ぞ残れる

決きまり字じ ほ夏千載集・夏

ほととぎす なきつるかたを ながむれば/ただありあけの つきぞのこれる

意味いみ

ほととぎすが鳴ないた方ほうをながめると、その姿すがたはなく、ただ夜明よあけの空そらに月つきが残のこっているだけだった。

ポイントほととぎすは夏なつをつげる鳥とり。一いち字じ決きまり「ほ」。

82道因法師どういんほうし
82番 道因法師の絵札

思ひわびさても命はあるものを憂きにたへぬは涙なりけり

決きまり字じ おも恋千載集・恋三

おもひわび さてもいのちは あるものを/うきにたへぬは なみだなりけり

意味いみ

冷つめたい人ひとを思おもいなやんでも、それでも命いのちはこうしてあるのに、つらさにたえきれずにこぼれ落おちるのは涙なみだだったよ。

ポイント命いのちと涙なみだを対たいにしている。

83皇太后宮大夫俊成こうたいごうぐうのだいぶとしなり
83番 皇太后宮大夫俊成の絵札

世の中よ道こそなけれ思ひ入る山の奥にも鹿ぞ鳴くなる

決きまり字じ よのなかよその他千載集・雑中

よのなかよ みちこそなけれ おもひいる/やまのおくにも しかぞなくなる

意味いみ

世よの中なかというものは、つらさからのがれる道みちはないのだなあ。思おもいつめて入はいったこの山やまの奥おくでも、鹿しかが悲かなしそうに鳴ないている。

ポイント決きまり字じは5字じの「よのなかよ」。作者さくしゃは97番ばんの藤原定家ふじわらのていかの父ちち。

84藤原清輔朝臣ふじわらのきよすけあそん
84番 藤原清輔朝臣の絵札

ながらへばまたこのごろやしのばれむ憂しと見し世ぞ今は恋しき

決きまり字じ ながらその他新古今集・雑下

ながらへば またこのごろや しのばれむ/うしとみしよぞ いまはこひしき

意味いみ

生いきながらえたなら、つらいこのごろも、なつかしく思おもい出だされるのだろうか。つらいと思おもっていた昔むかしが、今いまでは恋こいしいのだから。

ポイント作者さくしゃは79番ばんの左京大夫顕輔さきょうのだいぶあきすけの子こ。

85俊恵法師しゅんえほうし
85番 俊恵法師の絵札

夜もすがらもの思ふころは明けやらで閨のひまさへつれなかりけり

決きまり字じ よも恋千載集・恋二

よもすがら ものおもふころは あけやらで/ねやのひまさへ つれなかりけり

意味いみ

一晩ひとばんじゅう冷つめたい人ひとを思おもいなやんでいるこのごろは、なかなか夜よるが明あけず、寝室しんしつの戸とのすきままでが、朝あさの光ひかりをさしこませてくれずに冷つめたく思おもえる。

ポイント作者さくしゃは74番ばんの源俊頼みなもとのとしよりの子こ。

86西行法師さいぎょうほうし
86番 西行法師の絵札

嘆けとて月やはものを思はするかこち顔なるわが涙かな

決きまり字じ なげけ恋千載集・恋五

なげけとて つきやはものを おもはする/かこちがほなる わがなみだかな

意味いみ

嘆なげけといって、月つきが私わたしにもの思おもいをさせるのだろうか。いや、そうではないのに、月つきのせいにするような顔かおでこぼれる私わたしの涙なみだよ。

ポイント作者さくしゃは武士ぶしの身分みぶんをすてて、旅たびに生いきた歌人かじん。

87寂蓮法師じゃくれんほうし
87番 寂蓮法師の絵札

村雨の露もまだひぬまきの葉に霧立ちのぼる秋の夕暮れ

決きまり字じ む秋新古今集・秋下

むらさめの つゆもまだひぬ まきのはに/きりたちのぼる あきのゆふぐれ

意味いみ

にわか雨あめが通とおりすぎ、その露つゆもまだかわいていない杉すぎや檜ひのきの葉はのあたりに、霧きりが白しろくわき上あがってくる秋あきの夕暮ゆうぐれよ。

ポイント「まき」は杉すぎや檜ひのきなどの木き。一いち字じ決きまり「む」。

88皇嘉門院別当こうかもんいんのべっとう
88番 皇嘉門院別当の絵札

難波江の蘆のかりねのひとよゆゑみをつくしてや恋ひわたるべき

決きまり字じ なにはえ恋千載集・恋三

なにはえの あしのかりねの ひとよゆゑ/みをつくしてや こひわたるべき

意味いみ

難波なにわの入いり江えの蘆あしの刈かり根ねの一節ひとよほどの、たった一夜ひとよの旅たびの仮寝かりねのために、この身みをつくして、ずっとあなたを恋こいしつづけなければならないのだろうか。

ポイント「かりね」は「刈かり根ね」と「仮寝かりね」、「ひとよ」は「一節ひとよ」と「一夜ひとよ」、「みをつくし」は「澪標みおつくし」と「身みを尽つくし」の掛詞かけことば。

89式子内親王しょくしないしんのう
89番 式子内親王の絵札

玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする

決きまり字じ たま恋新古今集・恋一

たまのをよ たえなばたえね ながらへば/しのぶることの よはりもぞする

意味いみ

私わたしの命いのちよ、絶たえるなら、いっそ絶たえてしまえ。このまま生いきながらえていると、恋心こいごころをかくしておく力ちからが弱よわって、人ひとに知しられてしまうかもしれないから。

ポイント「玉たまの緒お」は命いのちのこと。作者さくしゃ名めいは「しきしないしんのう」とも読よむ。

90殷富門院大輔いんぷもんいんのたいふ
90番 殷富門院大輔の絵札

見せばやな雄島のあまの袖だにもぬれにぞぬれし色は変はらず

決きまり字じ みせ恋千載集・恋四

みせばやな をじまのあまの そでだにも/ぬれにぞぬれし いろはかはらず

意味いみ

あなたに見みせたいものだ。雄島おじまの漁師りょうしの袖そででさえ、ぬれにぬれても色いろは変かわらないのに、私わたしの袖そでは涙なみだで色いろまで変かわってしまったのを。

ポイント雄島おじまは今いまの宮城みやぎ県けん松島まつしまにある島しま。悲かなしみの涙なみだで袖そでの色いろが変かわるという表現ひょうげんをふまえている。

91後京極摂政前太政大臣ごきょうごくせっしょうさきのだいじょうだいじん
91番 後京極摂政前太政大臣の絵札

きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに衣かたしきひとりかも寝む

決きまり字じ きり秋新古今集・秋下

きりぎりす なくやしもよの さむしろに/ころもかたしき ひとりかもねむ

意味いみ

こおろぎが鳴なく、霜しものおりる寒さむい夜よるに、むしろの上うえに自分じぶんの衣ころもだけをしいて、私わたしはひとりさびしく寝ねるのだろうか。

ポイント昔むかしの「きりぎりす」は、今いまのこおろぎのこと。3番ばんの柿本人麻呂かきのもとのひとまろの歌うたをふまえている。

92二条院讃岐にじょういんのさぬき
92番 二条院讃岐の絵札

わが袖は潮干に見えぬ沖の石の人こそ知らねかわく間もなし

決きまり字じ わがそ恋千載集・恋二

わがそでは しほひにみえぬ おきのいしの/ひとこそしらね かわくまもなし

意味いみ

私わたしの袖そでは、潮しおが引ひいても見みえない沖おきの石いしのように、人ひとは知しらないけれど、涙なみだでかわくひまもない。

ポイント人ひと知しれない恋こいの涙なみだを、海うみの底そこの石いしにたとえている。

93鎌倉右大臣かまくらのうだいじん
93番 鎌倉右大臣の絵札

世の中は常にもがもな渚漕ぐあまの小舟の綱手かなしも

決きまり字じ よのなかは旅・別れ新勅撰集・羇旅

よのなかは つねにもがもな なぎさこぐ/あまのをぶねの つなでかなしも

意味いみ

世よの中なかは、いつまでも変かわらないでほしいものだ。なぎさをこいでいく漁師りょうしの小舟こぶねが、綱つなで引ひかれていく様子ようすは、しみじみと心こころにしみる。

ポイント決きまり字じは5字じの「よのなかは」。作者さくしゃは鎌倉かまくら幕府ばくふの三さん代だい将軍しょうぐん、源実朝みなもとのさねとも。

94参議雅経さんぎまさつね
94番 参議雅経の絵札

み吉野の山の秋風小夜更けてふるさと寒く衣打つなり

決きまり字じ みよ秋新古今集・秋下

みよしのの やまのあきかぜ さよふけて/ふるさとさむく ころもうつなり

意味いみ

吉野よしのの山やまから秋風あきかぜが吹ふきおろし、夜よるもふけて、昔むかし都みやこがあったこの里さとは寒々さむざむとして、衣ころもを打うつ音おとが聞きこえてくる。

ポイント衣ころもを打うつのは、布ぬのを木きづちでたたいてやわらかくし、つやを出だすため。

95前大僧正慈円さきのだいそうじょうじえん
95番 前大僧正慈円の絵札

おほけなく憂き世の民におほふかなわが立つ杣に墨染の袖

決きまり字じ おほけその他千載集・雑中

おほけなく うきよのたみに おほふかな/わがたつそまに すみぞめのそで

意味いみ

身みのほど知しらずだが、つらい世よの中なかの人々ひとびとを、僧そうとしての墨染すみぞめの衣ころもの袖そででおおって守まもってやりたい。比叡山ひえいざんに住すみはじめた私わたしは。

ポイント「わが立たつ杣そま」は比叡山ひえいざんのこと。作者さくしゃは歴史れきし書しょ『愚管抄ぐかんしょう』の作者さくしゃ。

96入道前太政大臣にゅうどうさきのだいじょうだいじん
96番 入道前太政大臣の絵札

花さそふ嵐の庭の雪ならでふりゆくものはわが身なりけり

決きまり字じ はなさその他新勅撰集・雑一

はなさそふ あらしのにはの ゆきならで/ふりゆくものは わがみなりけり

意味いみ

桜さくらの花はなをさそって散ちらす嵐あらしの庭にわに、雪ゆきのように降ふっていくのは花はなびらだが、本当ほんとうに古ふりゆく(年としをとっていく)ものは、私わたし自身じしんなのだなあ。

ポイント「ふりゆく」は「降おりゆく」と「古ふりゆく」の掛詞かけことば。

97権中納言定家ごんちゅうなごんさだいえ
97番 権中納言定家の絵札

来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の身もこがれつつ

決きまり字じ こぬ恋新勅撰集・恋三

こぬひとを まつほのうらの ゆふなぎに/やくやもしほの みもこがれつつ

意味いみ

いくら待まっても来こない人ひとを待まつ私わたしは、松帆まつほの浦うらの夕ゆうなぎのころに焼やかれる藻塩もしおのように、身みもこがれるほど恋こいしく思おもっている。

ポイント作者さくしゃは、百人一首ひゃくにんいっしゅを選えらんだとされる藤原定家ふじわらのていか。「まつほ」に「待まつ」をかけている。

98従二位家隆じゅにいいえたか
98番 従二位家隆の絵札

風そよぐならの小川の夕暮れはみそぎぞ夏のしるしなりける

決きまり字じ かぜそ夏新勅撰集・夏

かぜそよぐ ならのをがはの ゆふぐれは/みそぎぞなつの しるしなりける

意味いみ

風かぜが楢ならの葉はをそよがせる、ならの小川おがわの夕暮ゆうぐれは、もう秋あきのようにすずしいが、みそぎの行事ぎょうじが行おこなわれているのが、まだ夏なつであるしるしなのだなあ。

ポイント「ならの小川おがわ」は京都きょうとの上賀茂かみがも神社じんじゃを流ながれる川かわ。「なら」に木きの「楢なら」をかけている。

99後鳥羽院ごとばいん
99番 後鳥羽院の絵札

人もをし人も恨めしあぢきなく世を思ふゆゑにもの思ふ身は

決きまり字じ ひともその他続後撰集・雑中

ひともをし ひともうらめし あぢきなく/よをおもふゆゑに ものおもふみは

意味いみ

人ひとをいとしく思おもうことも、うらめしく思おもうこともある。この世よの中なかをつまらないものと思おもうために、もの思おもいをしてしまう私わたしにとっては。

ポイント作者さくしゃはのちに承久じょうきゅうの乱らんをおこし、隠岐おきに流ながされた。

100順徳院じゅんとくいん
100番 順徳院の絵札

ももしきや古き軒端のしのぶにもなほあまりある昔なりけり

決きまり字じ ももその他続後撰集・雑下

ももしきや ふるきのきばの しのぶにも/なほあまりある むかしなりけり

意味いみ

宮中きゅうちゅうの古ふるくなった軒下のきしたに生はえているしのぶ草くさを見みるにつけても、いくらしのんでもしのびきれないのは、天皇てんのうの力ちからがさかんだった昔むかしのことだ。

ポイント「ももしき」は宮中きゅうちゅうのこと。作者さくしゃは99番ばんの後鳥羽ごとば院いんの子こで、承久じょうきゅうの乱らんのあと佐渡さどに流ながされた。

歌うたの本文ほんぶん・読よみ・出典しゅってんは、著作権ちょさくけんの切きれた古典こてんの本文ほんぶん(Wikisource「小倉おぐら百人一首ひゃくにんいっしゅ」)をもとに表記ひょうきを今いまの字じにそろえ、伝つたわる本ほんによって字じがちがう歌うたはかるたで一般的いっぱんてきな形かたちにしました。絵札えふだは江戸時代えどじだいの歌うたがるた(Wikimedia Commons・パブリックドメイン)です。現代語訳げんだいごやくとポイントは Studia が書かいたものです。 画像がぞうの出典しゅってん一覧いちらん